野良箱

同人漫画サークル

ジャン・コクトー「恐るべき子供たち」東郷青児 訳

恐るべき子供たち (岩波文庫)恐るべき子供たち (岩波文庫)
(1957/01)
コクトー

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【あらすじ】
少年ポールは、好きな少年ダンジュロに雪球をぶつけられ倒れた。
ポールは、それを期に病気になった。
少年ジェラールは、ポールの弱々しげな様子に惹きつけられた。
ポールには、エリザベートという姉と病気の母親がいる。
ポールとエリザベートの姉弟は、様々な遊戯をする。
それには、犯罪的行為も含まれていた。

【途中まで、ネタバレなし感想】
私が買ったのは、上に張ったAmazonリンクのものとは異なります。
表紙が松山ケンイチバージョンで、角川文庫のものです。

裏表紙のあらすじには、結末が書かれています。

善悪の未分化な世界で、侵すべからず「巫女」「聖女」のような姉と、放心して夢遊に「出かけ」やすい弟の作り出す「舞台」、「部屋」における「芝居」、それを取巻く少年少女、そして大人達の関係が独特の雰囲気を漂わせていました。

作者には、何か信念があって、このような象徴的な筋の物語にしたのではないかと感じました。

解説によると、作者が阿片中毒による何度目かの入院の際、3週間足らずで書き上げた作品だそうです。
作者の、麻薬的な浮遊感や生死を超越したような体験、夢想を作品に込めたのでしょうか。
阿片などをやらずにこういう話を素面で書けると、よりパンクだと思います。

【以下、ネタバレあり感想】






解説によると、ダンジュロ=死神で、ポールが永遠に「出かける」ことを可能にしてくれるから、ポールはダンジュロを愛したのだと言います。
ポールが、アガートの中にダンジェロの姿を見たのは誤解であるから、「聖女」エリザベートは許す事ができない。
それで、エリザベートは、ポールとアガートの恋路を邪魔したらしいです。
例え、ポールがダンジュロのことを死神であるから愛していたとしても、ポールのダンジェロ以外への愛を「聖女」エリザベートが認めないというのはどういうことでしょうか。
死神と聖女を巡る古典にそういうモチーフがあるのですかね。
つまり、死に焦がれる少年と死神の間を聖女がとりもつという。

ダンジュロが雪球をぶつけ、ポールを半死にする前から、ポールはダンジュロが好きでした。
少年期に、強い者に憧れを抱いてしまうということは、そんなに珍しくなくあり得そうな気がします。

アガートは、実際ダンジュロに似ています。
少年が少女を好きになるのは、例えダンジュロの面影がなくても普通のことです。
もしも、ポールの恋文をアガートが読み、互いの想いを知ったならどうなったでしょう。

エリザベートと結婚したミカエルは残酷な死を迎えました。
「聖女」は、誰の物にもならないのです。
では、ポールは?
ポールも、誰かに所有されてはいけない存在なのでしょうか。
ポールは死神の手(黒い丸薬)によりあの世に旅立ちました。しかし、死神のものになったわけではありません。
仮に、ポールとアガートが結婚していたとして、アガートもミカエルのように退場するはめになったのでしょうか。
それは完全にifの世界なので、この小説からは窺い知る事ができません。

エリザベートからポールへの姉弟愛があったように読めます。
エリザベートはポールを独占したく、アガートに嫉妬していました。
具体的に行った行動は、ポールからアガートを引き離し、アガートとジェラールを結婚させるという工作です。
それでも、弟に対して、恋愛的、性的に関係を持とうとはしていませんでした。
彼女はどうしたかったのでしょう。
エリザベートは、いつまでも子供のまま、ポールと二人っきりで芝居をし続けることだけを願っていたのではないでしょうか。
それは、銃と毒薬によって終わりを迎えました。
心中のようにも見えます。
彼等の始めた舞台は、これ以外の終わり方がなかったと、運命的なものを感じました。

…ブラコンヤンデレ?

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/07/09(木) 00:03:28|
  2. 読書感想文(小説)

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