野良箱

同人漫画サークル

谷崎潤一郎「痴人の愛」

痴人の愛 (新潮文庫)痴人の愛 (新潮文庫)
(1947/11)
谷崎 潤一郎

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【あらすじ】
堅物会社員の河合譲治は、カフェ(今で言うキャバクラみたいなものらしい)で出会った15歳の美少女ナオミを、自分好みのハイカラで西洋風な女性に育て上げるため、同居することにした。
ナオミをいずれ自分の妻にするつもりで教育し、ついに結婚したのだが…。

【途中まで、ネタバレなし感想】
巻末の脚注解説には、物語のネタバレがあるので初見の方は注意して下さい。

脚注解説に、「谷崎潤一郎は足へのフェティシズム傾向が強かった」と何度もでてきて笑いました。
谷崎の別の小説では、「女の足型を取って墓石に刻み(仏足石に見せかけ)死後も女に踏まれ続けたい。」という意の文章があるそうです。
どんだけ足フェチでドMなんだよ!
 
「痴人の愛」の主人公譲治も、女性の足への強い執着があります。

大正時代に、水着跡萌えや剃毛萌え、チラリズムを描いています。これまた、フェチっぽいです。

15歳のナオミを洗ってあげたり、お馬さんしてあげたりしていました。
別にロリコンではないようです。より成熟した大人の美しい女性に仕立て上げたいのです。

ナオミという名前は、聖書か何かに出てくる女性の名前で、世界的なクリスチャンネームなのだそうです。

譲治は、西洋文化や、西洋人の女性に対する異常なまでの憧れを抱いています。
これは、作者の本心なのか、あくまでも譲治という人物のキャラ立てなのか分りません。

【以下、ネタバレあり感想】





ナオミ性格悪すぎますよ。ピンクのドレスの女性を猿だと揶揄したり、乱暴な言葉遣いをしたり。
同性に嫌われそうなナオミですが、大正の世の女性達にはウケたっぽいですね。

はじめてのダンスパーティーで、ナオミが主役ではなかったことなど、こんなのが己の夢見た光景か…、こんなことの為に今まであれこれしてきたのか…と落ち込む譲治は、まだ正常だったと思います。
そこで、ナオミに幻滅して別れておけばよかったのです。
この頃の譲治には、まだ、ナオミという美しく現代的な妻を持つ己ってすごいでしょ?と自慢したいような、虚栄心があったのでしょう。

やがて、ナオミの浮気が判明し、また、屈辱的なあだ名をつけられていることを知ります。
解説では、そのあだ名は「共同便所」ではないかと推察されています。私は、「公衆便所」かなと想像しましたが、どっちでも同じ意味ですね。

ナオミと別れて自由な気持ちになった譲治ですが、すぐにナオミが恋しくなります。
ナオミが醜い感情をむき出しに、憎悪に満ちた顔をしたその姿が、この上なく美しいと感じたのです。
その部分を読んで、ああもう、この男はほんと駄目だわ…と感じました。
やがてナオミが友達として譲治宅に出入りするようになり、焦らしに焦らしたあげく、譲治が我慢できなくなって、結局夫婦に戻りました。
譲治は、ナオミが他の男と遊ぶのを容認しつつ、莫大な金をつぎ込んで、ナオミに贅沢させるのでした。

譲治は、ナオミの愚かで恐ろしく奔放な、そして堕落した悪の魅力の前に完全に屈服し、しかもそれを愉しんでいるようでした。

ナオミもナオミだけど、譲治も譲治です。お似合いカップルと言えるでしょう。

譲治が恋敵であるはずの浜田くんと親密になっていたのが面白かったです。ナオミ被害者の会といった感じです。

「パパさん」「ベビちゃん」というやりとりは、大正時代にはそうとう珍しかったでしょうね。
現代でもなかなかなさそうです。

ナオミと一旦別れた後、一人でお馬さんをする譲治などは、マゾヒスト方面の狂人のようでした。

ナオミは小悪魔系を通り越して、普通に悪魔ですよ。
一人の男の堅実な人生を破滅させたのですから。
しかし、ナオミをそんな悪魔にしてしまったのは、譲治本人なのです。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/06/25(木) 02:32:50|
  2. 読書感想文(小説)

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