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豊島ミホ「日傘のお兄さん」

日傘のお兄さん (新潮文庫)日傘のお兄さん (新潮文庫)
(2007/10)
豊島 ミホ

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【あらすじ】
短編4作入り。
「あわになる」…人が死んでから生まれ変わるまで十五ヶ月かかると言う。二十四歳で死んだ女性の幽霊は、とある家に居座っている。

「日傘のお兄さん」…夏美が保育園児の時、一緒に遊んでくれたお兄さんがいた。彼はいつも日傘を差している。中学三年になった夏美は日傘のお兄さんと再会した。しかし、お兄さんはネット上で、幼女と一緒に遊ぶロリコン「日傘おとこ」として話題になり、危険視されていた。

「すこやかだから」…小学校高学年の根岸涼子は、発育の良い体をしており、本人はそれを誇っていた。しかし、学校の皆は育つということが恥ずかしいことであるかのように振舞っているようだ。ある日根岸は、年下で病弱、ナイフを持った転校生少年ナツと出会い、膝枕をしてあげた。

「ハローラジオスター」…すべり止めで田舎の私立大学に入学した知世(ちせ)は、遊びまくろうと一番派手そうなサークルに入る。そこには、地味な男の先輩ノブオ(安藤信雄)がいた。彼は、とても綺麗な声をしている。ノブオは、知世の名前を呼んでくれない。

【途中まで、ネタバレなし感想】
タイトルに惹かれて手に取りました。裏表紙のあらすじには「ロリコン」の文字が。気になる。ということで購入いたしました。

広い意味では、男女の恋愛を描いています。
私は、女性の描く恋愛小説を好んで読まない方ですが、この本は内容が独特で、苦手意識を感じなくて済みました。

太陽、特に夕日のイメージが繰り返し登場していました。それは、終わりや下り坂など暗い事柄を示すのではなく、大きくて温かく、包み込んでくれるようなものとして描かれていました。

【以下、ネタバレあり感想】

「あわになる」
輪廻転生ものです。主人公嶋野みずえは、好きだった人タマオの子供に生まれ変わります。
自分が今生きていないということに絶望するという描写がいくつか出てきます。生きてるだけで丸儲け。
みずえは、24歳で死んだのに、中学生の姿をした幽霊になっていました。中学というのは、タマオと過ごした、一番一生懸命だった時代です。
幽霊となったみずえが、自分の姿を把握できていなかったという点がプチ叙述トリック的で面白かったです。

「日傘のお兄さん」
普通、ロリコン疑惑があるキャラクターが出てきたら、実は子供と遊ぶのにはこんな理由があってロリコンではない…という展開になると思うのですが、お兄さんは本当にロリコンでした。
逆にストレートに来たので驚きました。
お兄さんにとっても、なっちゃんにとっても、二人で竹やぶで遊んでいた時間が人生で一番幸せだったのです。
お兄さんは、その最高の瞬間の中で命を断とうとしていました。自殺方法は、睡眠薬でみっちゃんと一緒に眠り、太陽にその身を晒すことでした。
お兄さんは、太陽アレルギーで、日光に当たると焼けどしてしまうのです。
なんだかんだで助かりハッピーエンド的な感じになりましたが、お兄さんは、人の首をしめるような輩ですし、なっちゃんが無事にやっていけるか心配です。最終的には、お兄さんが受身な態度なので、なっちゃんの方がリードしているみたいになってました。
ロリコン=ニートというステレオタイプな世間の意見を最初の方で挙げていたので、そこは外してくるだろうと予想していたら、お兄さんは本当にニートでした。裏の裏をかかれた感じがします。ギャグっぽくすらありました。
みっちゃんは、母子家庭だけどグレてないキャラ、自虐貧乏ネタで笑いを取るキャラを演じていました。本心を誤魔化し皆を騙していると自覚しています。そういったことが親友みっちゃんから見て「壁がある」と感じられたようです。
しかし、このキャラ作りは別に悪くないし、むしろ成功している気がします。何も、常に自分を晒し、本気でぶつかり合う必要はありません。腹を割りすぎてもギスギスしますから、皆がちょうどいい役割を演じている社会生活もなかなか良いものなのではないかと思います。
なっちゃん的には、唯一素でいられるお兄さんの前がお気に入りのようですが。
学校の皆がすごく良い人達で恵まれた環境にいるので、飛びぬけてかわいそうな子には見えません。しかし、本人にしか分らない苦しみを抱えているのでしょう。

「すこやかだから」
スキンシップの多い話でした。
恋愛もののフィクションは、プラトニックな方が萌える派です。
なので、セイテキフノウとかむしろ歓迎です。

「ハローラジオスター」
後半は、就職活動と社会に出ることについての不安等が描かれていました。
「なににもなれないあたし」というのは、アイデンティティ喪失の危機って感じでしょうか。割と多くの人が陥ったことあるんじゃないでしょうか。
大変な努力をしないと、軽蔑する「つまらない大人」にすらなれません。厳しいー。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/05/20(水) 04:09:53|
  2. 読書感想文(小説)

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