野良箱

同人漫画サークル

中井英夫「虚無への供物」

虚無への供物〈上〉 (講談社文庫)虚無への供物〈上〉 (講談社文庫)
(2004/04)
中井 英夫

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虚無への供物〈下〉 (講談社文庫)虚無への供物〈下〉 (講談社文庫)
(2004/04)
中井 英夫

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【あらすじ】
氷沼家の蒼司と紅司は、洞爺丸沈没事故で両親を亡くした。
彼らには、藍司という従弟がいる。
氷沼家を新たな悲劇が襲う。死者は、増えて行く。
新人歌手の奈々村久生ら4人は、ゲイバア「アラビク」で推理合戦を繰り広げる。

【途中まで、ネタバレなし感想】
物語はゲイバーの場面から始まります。
久生が女で、連れの光田亜利夫(通称アリョーシャ)が男です。
最初久生を男性だと思ってました。それにしては女言葉だけど、ここはゲイバーだからお姉系なのかと勘違いしてました。

病死に見える密室死体。それを巡り各人が推理を展開します。
どれも凝っていて、全部当たっているようにも、全部外れているようにも思えます。
正解は後ほど分るのですが。
トリックなどの考察部分は、かなり本格的な推理小説といった感じですが、巻末解説によれば、この作品はアンチ・ミステリー(反推理小説)なのだそうです。
確かに結末まで読むと、この部分はミステリとは言えないという箇所がでてきます。
結論も、ミステリにおける殺人の犯人という概念とは異なります。

作中100人くらい死にます。

宗教、精神病、植物遺伝学、色彩学、音楽、一族の因縁、アイヌの蛇神、五色不動といった要素の組み合わさったストーリーです。

登場人物にミステリ愛好家が多いため、既存の推理小説が多数引用されています。
この作品は、「ドグラ・マグラ」「黒死館殺人事件」と並び、日本三大奇書と呼ばれているそうですが、本文中に他2作のタイトルが出てきていました。

「ドグラ・マグラ」感想
「黒死館殺人事件」感想

「不思議の国のアリス」のイメージが随所で用いられていました。
本書に限らず、アリスをモチーフにした作品の多いこと多いこと。
よっぽど、想像力をかきたてられる話なんですね。大昔に絵本を読んだはずなのですが、すっかり忘れてしまったので、改めて小説版を読んでみたいと思います。

上巻の著者近影は、人のよさそうなおじいちゃんといった感じですが、下巻では、前髪をかき上げる写真が使われていて、やけにイケメンに見えます。

【以下、ネタバレあり感想】

釣り上げた人間滑車で死体エレベーターの部分は、牟礼田俊夫の創作小説であって、実際に起こったことではないんですね。
いつのまにか、作中作を読まされていました。移行していたのに気づきませんでした。

ゲイバーでの推理合戦で、広島の原爆で死んだはずの黄司が生きている可能性を指摘したものの、やっぱりいないだろうと思って読んでいました。
しかし、黄司がゲイバーのおキミちゃんと同一人物だという話になって、なんと本当に生きていたのか、しかも意外性がある、などと感心していました。
が、やっぱりおキミきゃんは、黄司ではなかったようです。そして、恐らく黄司は原爆で死んだというのが本当の所なのでしょう。

ゲイバーでの推理合戦は、皆の意見を総合すれば、結構当たっていたという感じですね。

実際に殺人をしたのは、蒼司でしたが、物語全体としては、犯人は、亜利夫や久生のように部外者で殺人を肴に面白がっている人達、つまりこれを読んでいるあなたです(?)、というようなオチでした。
そうは言われましても、流石にガスで橙二郎殺した件については責任取れませんよ。
  1. 2009/05/09(土) 02:45:14|
  2. 読書感想文(小説)

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