野良箱

同人漫画サークル

ミヒャエル・エンデ「モモ」 大島かおり・訳

モモ (岩波少年文庫(127))モモ (岩波少年文庫(127))
(2005/06/16)
ミヒャエル・エンデ

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主人公モモを描きました。髪の毛の長い方がモモらしい気もしますが、表紙絵だと短髪に見えるので、それに倣いました。
モモのイラスト 二次創作? 灰色の男 時間貯蓄組合会員 時間銀行外交員 

【あらすじ】
町の円形劇場跡に、身寄りのない浮浪児童モモが住み着いた。
モモは、相手の話を聞くことに特別な才能を持つ女の子で、町の皆は何かある度に彼女の元を訪れた。
一方、時間貯蓄銀行の外交員を名乗る灰色の紳士達の人知れぬ活動により、人々は時間の節約をするようになった。
灰色の男達は、「時間を貯蓄することで利子がつき、やがて大資本を使えるようになる。」と言うが、持ち主に時間が戻ってくることはなかった。
彼らは、人間の時間を奪う「時間どろぼう」だったのだ。
灰色の男達にとって、モモは脅威の存在であるため、彼らはモモをつかまえようとする。

【途中まで、ネタバレなし感想】
廃墟に住む少女って所が心惹かれます。

モモは聞き上手と言っても、特別うまい質問をするとかそういったことはありません。ただ、注意深く聞くだけです。
この、誰でも出来そうだけど、実際に出来る人はほとんどいないという特技の設定が絶妙ですね。

灰色の男が言う無駄な時間の例は、合唱する、映画を見る、本を読む、友達と会う、酒を呑む等です。
どう無駄かと言うと、それらの行為は役に立たず、また、成功に近づいたり、お金儲けをしたり、偉くなったりすることには繋がらないからです。

そこを削ったら楽しくないじゃないか。人間味がなくなるじゃないか。と思いましたが、案の定、時間を節約することで、人々の生活はやせ細っていきます。
潤いのなく、冷たいものになるのです。
大人は、せかせかケチケチして怒りっぽくなり、忙しくて子供に構わなくなります。
子供達は、将来役に立つという、面白くもない遊びを強制されます。

この本は、大人が子供に与える出来すぎたおもちゃに否定的です。
子供は、想像力と創意工夫で、段ボール一つでさえ遊びに変えられるのに、最初から用途の決められたおもちゃなんてすぐ飽きてしまうというのです。
確かに、私が子供の頃は、葉っぱを石ですりつぶして薬ごっこ、とか、水を溜めた穴にBB弾を入れて砂金探しごっこ、とかどうでもいいことでずっと遊んでいられました。

作中で、時間とは生きることそのものであり、いのちは心を住処にしているとありました。

果たして、有名人やお金持ちになれば幸せなのか、より良く生きた時間を過ごすにはどうしたら良いのか、そういったことが描かれた作品です。

【以下、ネタバレあり感想】

うおーん、道路掃除夫ベッポも観光ガイドのジジ(ジロラモ)も元に戻って良かったよー。
ベッポが、モモの身代金十万時間を貯蓄しようと働き続ける姿は悲しかったです。

マイスター・ゼクンドゥス・ミヌティウス・ホラは、モモに重過ぎる任務を課しました。
小さな女の子一人(と亀カシオペイア)にとっては、あまりに過酷!
モモ、世界の命運を握りまくり!
マイスター・ホラはじめての睡眠。彼が目覚めなかったら世界の終わりですよ。怖すぎ!

時間の花貯蔵庫に鍵やダイヤルが付いてなくてよかったです。
ロックされていたら、モモには開け閉めできなかったでしょうから。

灰色の男達は、生きるために人間の時間を奪わねばなりませんし、そもそも、人間が灰色男の発生条件を作ったのですから、灰色男消えまくりはちょっとかわいそうな気もしました。
でも、人間との共存はできなそうなので、ハッピーエンドにはこれ以外の道はなかったと思います。
灰色の男達は、隙あらば再び出現しそうです。

致死的退屈症に近い精神病って実際にある気がします。

「みどりが丘」というのは、原文ではどうなっているんでしょうか。「グリーンヒル」とかそんな感じでしょうかね。

ジジの「人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことなんだよ。」というセリフが印象的でした。
夢が残っていない。たとえ、名声を捨てて貧乏に戻っても、夢がないまま生きるのは地獄、だから今のままでいるしかない。
後にも先にも進めない状況です。
灰色の男恐るべし!
モモには、ジジが死の病にむしばまれていることが分りました。
物語のラストシーンで、この病気は治ったのでしょうか。
治ったと信じます。
モモが、ジジの病気は灰色の男達が糸を引いているらしいと悟るシーンがありましたから、灰色男の消えた世界では、ジジも元気になったのだと考えられます。

人とコミュニケーションをとったり、愛情を持って仕事をしたり、小鳥や花に目をとめたり、そういった事に好きなだけ時間を使えることの素晴らしさ。
現実を省みると、半ば灰色男に時間を奪われたような生活をしている人も多いかと思います。
せっかく時間どろぼうのいないことですし、ゆったりとした時間を過ごせたらと思います。

ふと、「この物語って、ゆとり教育導入に影響を与えたりしたんだろうか」と思いググってみましたが、因果関係は全くないようです。

テーマ:ブックレビュー - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/04/20(月) 03:32:54|
  2. 読書感想文(小説)

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