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アイザック・アシモフ「われはロボット」(I,ROBOT)訳・小尾芙佐

われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
(2004/08/06)
アイザック・アシモフ

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【あらすじ】
USロボット&機械人間株式会社の歴史そのものである、ロボ心理学者スーザン・キャルヴィン博士(75歳)が、過去を振り返る。
連作短編集。

【途中までネタバレなし感想】
今日でも様々な分野、SF作品等で引用されている「ロボット三原則(ロボット工学三原則)」の発祥は、これらの作品群だそうです。

以下、引用です。

ロボット工学の三原則

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
     また、その危険を見過すことによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、
     あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。

第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、
     自己をまもらなければならない。

               ――『ロボット工学ハンドブック』、 
                   第五十六版、西暦二〇五八年

引用終わり。

話の軸になる、ロボ心理学第一人者の博士が女性というのが意外でした。
女性ロボット博士というのは、最近の作品だと割と普通ですが、「われはロボット」収録の作品が書かれたのが1940年代であったことを考えると、革新的だと思います。

この作品群は、主に、ロボットがなんらかの誤作動を起してしまい、その原因をスーザン女史や技術士コンビのドノヴァン&パウエルが推理・解決するというものです。
ロボットトラブルは、ロボット三原則が無効になったためではなく、むしろ、三原則に縛られているが故に起こっている場合が多く、それが面白かったです。

原題の「I,ROBOT」は、カタコトっぽいイメージなんですかね。「ワタシ ロボット」的な。

【以下、ネタバレあり感想】

【ロビイ】
言葉を話せない子守ロボットロビィの話です。
母親によって追放されたロビィは、少女グローリアの命を救い、家に戻ってくることになりました。
一見ハッピーエンドなんですが、このまま少女グローリアが人間の友達を作らず、社会の一員になれないのでは、という不安が残ります。
スーザン博士の後日談に寄れば、グローリアが十五歳のころ、ロボットの使用が全面的に禁止され、グローリアはロビィを諦めたのではないか、ということですが、その後グローリアは、人間の中に溶け込めたのでしょうか。
この作品で、グローリアは、ロビィを人間扱いしていました。これは、今後の作品にも繋がるテーマだと思います。

【堂々めぐり】
水星鉱山が舞台です。
スピーディというロボットがセレンプールの周囲を回り続けます。
ロボット三原則の原則間に生じる葛藤で、その様な行動をとっていたのです。
第一条を働かせる為、人間がわざと命の危険に晒されます。
そこで、スピーディではない別のロボットが駆けつけたのが、命がけの状態ながら、ちょっとギャグっぽく感じました。お前じゃねーよ!って感じで。

【われ思う、ゆえに…】
自分より下等な人間がロボットの創造主だと信じられないロボットキューティが、宗教の伝道者みたいになってしまう話です。
また、哲学者みたいなことも言います。
キューティは、宇宙ステーションのエネルギー転換器を「主」と呼びます。
仕事ができるか心配だったキューティですが「主」の御心に従った結果、素晴らしく安定した作業ができたのでした。
地球という惑星の上に人間がいる、という事実を信じていないキューティにとって、人間が地球に帰るということは、天国なんてないのに天国に行こうとしている哀れなヒト、という風に見えるのかもしれません。
今回は、ロボットの話でしたが、人間の宗教も似たようなものかもしれません。

【野うさぎを追って】
メインロボットデイブが、「指」にあたる6台のサブロボットと奇妙な行進を繰り返す話です。
サブロボット全てを操る時のみデイブがおかしくなることから、サブロボットを破壊し、6台全部に指示を出せなくすることで、事態を解決させました。
5とおりしか指示を出さなくてよくなるわけです。発想の転換といいますか、この事態を切り抜けられる人はなかなかいないと思います。
ドノヴァン&パウエルは、しょっちゅう死に掛けてますが、機転がきくようです。

【うそつき】
人の心を読むロボットハービィの話です。
想い人アッシュがスーザンを愛しているとハービィは言いました。それを聞いたスーザン女史が、色気づいて化粧バッチリになった所がかわいいです。が、結果としてはぬか喜びでかわいそうなことに。
ハービィは、確かに人間の心を読んでいたようです。
しかし、その結果を伝えることで人間の心を傷つけることは、ロボット三原則の第一条に違反するため、ハービィは、その人が言って欲しいことを言っていたのです。
結果、事実に反することを繰り返し言うことになったのです。
人間を守るための優しさゆえに嘘をつき、結果人間関係に亀裂が。

【迷子のロボット】
六十三台のロボットの内、一台だけが三原則の第一条を改変したロボだった、他のロボットにまぎれたその一台を探せ、という内容です。
ロボットにとって有害なガンマ線と無害な赤外線を区別できたのは、人間から教育を受けた、改変ロボットだけでした。他のロボも自分と同じ行動をするだろうと判断したのは、痛恨のミスでした。
ロボットが優越感を持ってしまったが故のできごとでした。
ロボ心理学と言いますが、確かにロボットには心があるようです。

【逃避】
ドノヴァン&パウエルの乗った宇宙船がいつの間にか、宇宙に。
この二人、また死に掛けてました。
と言うか、星間ジャンプの間、二人は死んでいました。生き返りましたが。
人間の死を含む計算は、本来ロボットには出来ないはずですが、その死が一時的なものであることに気づく余裕を与えたことで、星間ジャンプの可能な船を製造することができたようです。

【証拠】
スティーブン・バイアリイという選挙候補者が、実はロボットなのではないかという疑惑について。
X線を照射すれば一発で、人間かロボットか分るのですが、彼は、かたくなに拒否しました。
スティーブンは、公衆の面前で、「自分を殴れ」と挑発する男を殴りました。人間に危害を加えることは、ロボットには不可能なため、スティーブンは、人間であることが証明されました。
しかし、ロボットが人間を殴れる可能性はあるのです。それは、殴られた側もまた、ロボットであった場合です。
スティーブンが人間なのかロボットなのか今となっては確かめられない、という締めでした。
ロボット三原則に全て当てはまっているからと言ってロボットとは限らない、むしろ、法令順守し、人を守り、模範的道徳的に生きている人間は、三原則を全て満たしていることになるのです。
ロボットを通して人間を描いているようで面白かったです。

【厄災のとき】
ロボットは、どこまで人類の安全と未来を守るのか、その為にどのように行動するのかということについて。
三原則の「人間」という部分が「人類」に置き換わっていて、マシンがある限り、今まで避けられなかった紛争が避けられるかもしれないのです。
ロボットによると統治というと、人間を支配下においているような危険を感じますが、ロボットが三原則に従っている限り、人類を幸せに導いていくれるるのかもしれません。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/02/06(金) 05:00:27|
  2. 読書感想文(小説)

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