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同人漫画サークル

オリバー・サックス「妻と帽子をまちがえた男」

妻を帽子とまちがえた男 (サックス・コレクション)妻を帽子とまちがえた男 (サックス・コレクション)
(1992/02)
オリバー サックス

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脳神経科の医者が、患者の様子を描いた医療エッセイです。

第一部は、「喪失」がテーマです。
視覚に関する意味を失ってしまった男や、自分の体を目で確認しないと動かせない女性などが登場します。
また、記憶を短時間で失い続ける患者の話も。これは、よくフィクションで題材にされてますね。

第二部は、「過剰」がテーマです。
チック症や多動、性格の豹変、多弁など。

第三部は、「移行」がテーマです。
過去の記憶が蘇り続けたり、嗅覚に異常をきたすものなどがあります。

第四部は、「純真」がテーマです。
知的障害者の特殊能力(サヴァン)について書かれていました。

全体の感想としては、生きることに希望を見出せる内容でした。
人格や知覚に大きな問題を引き起こす病気の話なので、もっと暗い気持ちになるかと思ってました。
記憶がなくなっても魂的なものはあるかもしれないって感じのことが書いてありました。
脳神経学の医者がそんな事言うなんて意外です。

薬を飲んでいる間とそうでない時で、性格が変わってしまう患者がいました。
そうなると、人間の性格って、心って一体何なんだろうと思ってしまいます。

簡単な計算も出来ないのに素数だけは大きな桁まで分るという自閉症の双子がいました。
ひょっとして、素数って宇宙に自然にあって、それが、人間の頭に下りてくるのか!?と思いました。

それと、音楽というのが、これまた超自然的なものなのではないかと思えてきました。
彫刻や詩、絵画、演劇なども、普段の言語とは全くことなるものとして存在しているようです。
芸術ってすごいです。
人間が創り出すというよりは、はじめからそこに有ったものを発見するといった感じがします。

完全に嗅覚を失っているのに、匂いがすると訴える患者や、周囲は無音なのに音楽が聞こえ続けるという患者がいました。
彼らにとっては、それが現実なのです。
私が見ている世界ですら、本当に現実なのか分らなくなってきます。

筆者は、脳神経医学だけでなく文学や宗教、心理学にも詳しいので、深みのある文章になっていました。

テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

  1. 2009/01/02(金) 22:55:24|
  2. 読書感想文(小説)

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