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同人漫画サークル

五木寛之「人間の覚悟」

人間の覚悟 (新潮新書)人間の覚悟 (新潮新書)
(2008/11)
五木 寛之

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【概要】
五木寛之のエッセイ。

【感想】
父から貰った本です。
五木氏は、3度鬱状態になったそうです。
70歳過ぎての鬱は、かなりつらそうです。

五木氏は、休筆中に大学の聴講生となり、仏教学を学んだそうです。
本当に仏教徒なのかどうかは、読んでいて分りませんでした。
本エッセイ中にも、仏教の概念が多数出てきました。
筆者は、スピリチュアル系はお好みではないようです。
そういった対談は断っているとのこと。

下山すること、諦めること、人生が憂鬱であること、悪人であること。
一見後ろ向きなワードが並びますが、読んでみると印象が変わると思います。

秋葉原無差別殺傷事件やサブプライムローン問題の話題等が出てくるので、ずいぶん最近出た本なのかなと奥付みたら今年の11月20日発行でした。
本当に最近です。
i podや携帯、ブログという単語も登場します。

蟹工船ブームの話も。
貧困層が読むと言うより、下流社会へ落ちる不安を抱えている層が読んでいるのではないかと書いてあります。
「蟹工船」、私は母に貰って読んだのですが、共感はできませんでした。
超下流の人間なんですが。
資本家に対する怒りもないですし。
冒頭の「おい、地獄さ行ぐんだで!」っていうのは、なんだか名文っぽく感じられます。

以前書いた「蟹工船」簡易感想は、こちら

「性的プロレタリアート」というのは、要するに非モテですね。
寺山修司氏が恋人を作りたくても結婚したくても出来ない人のことをそう呼んだそうです。
声優・小野大輔氏の曲「だいすき(DAISUKI)」における歌詞「恋の社会では僕はそうNEET(ニート)」を連想しました。

五木氏が翻訳した「かもめのジョナサン」ですが、五木氏は、いまだにジョナサンへの違和感を拭えないそうです。
ジョナサンの訳者あとがきでも書かれていましたが、食べることとその為に働くことを軽く見てはいけないという考えは変わっていないようです。
ジョナサンは、自己啓発セミナーのテキストとして用いられているそうです。
宗教っぽい話だと思ってましたが、そっち方面でしたか、ジョナサン。

以前書いた「かもめのジョナサン」感想は、こちら

世界各国に、憂鬱を表す語があり、それらが人間のどこかに潜んでいて、人生の中でそれに出会うことになると言われているそうです。
憂鬱になった時の対処法は、国によって異なります。

アメリカは、私が思っていたよりキリスト教国であるようです。
日本の、シンクレティズム(神仏混こう)とアミニズム(精霊信仰)は、面白いですね。

金沢のお寺で聞いたという話が紹介されていました。
馬鹿で無能で顔が良いだけの自分に嫌気がさして死にたがっている女性がいて、お坊さんがアドバイスをしたというものです。
その内容は、あなたが綺麗に着飾って道行く人ににっこり微笑みかければ、相手は、美人を見たと心が晴れやかになる、美しくしていなさい、というものです。
その美人さんは、安心して帰っていったそうです。
笑顔で笑いかけることは、仏教で「和顔施」と言い、金の掛からないお布施の一つだとされているそうです。

このエピソードを含め、生きているそれだけでいいんだ、というメッセージが込められた本だったと思います。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/28(日) 16:03:16|
  2. 読書感想文(小説)

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