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長野まゆみ「ユーモレスク」

ユーモレスク (ちくま文庫)ユーモレスク (ちくま文庫)
(2007/07)
長野 まゆみ

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【あらすじ】
お隣比和家の長女すみれが亡くなった。
主人公周子の弟真哉は、隣家から聴こえてくるピアノ曲ユーモレスクが好きだった。
真哉は6年前行方不明になった。
すみれがいないのに、隣家からユーモレスクが聞こえてくるのはなぜか。

【途中まで、ネタバレなし感想】
序盤、長野作品にしては、少年に焦点を当てない話なのかな、と思っていましたが、読み進めると、少年要素満載でした。

キャラクターの名前が、ふりがなないと読めないタイプでした。

主人公の周子が、男性や少年に魅力を感じる描写は、作者の趣味やフェティシズムが感じられました。
周子は、異性にほのかな好意を抱くものの、本作で描かれた恋愛模様の蚊帳の外でした。

【以下、ネタバレあり感想】

最初は、登場する男性キャラが皆異性愛者(ストレート・ノンケ)であるように描写されています。
周子の目を通すと、皆そのように見えるからです。
しかし、それだと物語上違和感が生じてきます。
それを解消していくミステリーのような作りでした。

ゲイ率高っ!
直接的な性行為は描かれていませんが、これは、BL小説の一種と見ていんでしょうか。

服装倒錯、女装少年、同性愛(ホモ・セクシャル)の要素が含まれていました。
今まで読んだ長野作品でも、少年愛や同性愛の要素が薄っすら感じられましたが、本作品では、思いっきり描かれてました。

死んだすみれの弟、比和文彦は、周子の弟真哉に女物の服を着せて愛でていました。
真哉は、文彦の弾くユーモレスクが好きだったのです。
文彦は、真哉が行方不明になった後、教え子の和(タカシ)と良い仲だったようです。
真哉の代わりだったとのこと。
和は、女装し、雑誌で女児モデルとして活躍していました。
和が、女として文彦が好きなのか、男として好きなのか、はっきりしないようです。
服装倒錯者なだけなのか、本当に同性愛者なのか、両性愛者(バイ・セクシャル)なのか、本人にもわかっていなそうです。
形から入って心が女性になったのか、心が女性だから女物の服を着たのか。

文彦には、年上の恋人(男性)がおり、その人は向坂というそうです。
一回しか読んでないので記憶が曖昧なのですが、向坂のネクタイを切ったのが文彦ということでしょうか。
一旦別れて、それぞれ女性と見合いしたものの、結局は寄りを戻し同棲を始めたようです。

文彦は、ショタコンというわけではないのでしょうか。
女装した少年から同性愛の道に進み、今では年長男性の方が好みということでしょうか。

目の前で弟を含む男性4人の恋模様が展開されたわけですが、主人公の周子は腐女子ではなかったので、別に萌えたりしてませんでした。
文彦や和に異性として魅力を感じていたように取れましたが、彼らにそれぞれ好きな人(男)がいたことが判明しても、失恋したと落ち込む様子もありませんでした。
また、向坂に対しても、恋心ではないものの、服の着こなしが素敵なハイレベルな男性だと評価してました。
男性に恋愛対象にされない状態で、かつ、良い男達に囲まれている状態というのは、案外居心地がよく、女性が理想とする形の一つなのかもしれません。

真哉の死因(死体は発見されてないけど)は、やはり事故だったのでしょうか。自殺の可能性もあるんでしょうか。
引率教師のすみれに、女っぽい服装をすることを咎められた直後の行方不明でした。
真哉は最期にどんな想いを抱いていたのでしょうか。
彼は、姉の中では、半ズボンの似合う永遠の少年なのです。
周子も文彦と同様、和を真哉の代わりにしている面がありました。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/13(土) 05:00:31|
  2. 読書感想文(小説)