野良箱

同人漫画サークル

ジョージ・オーウェル「1984年」

1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)
(1972/02)
ジョージ・オーウェル新庄 哲夫

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【あらすじ】
1984年、世界は、オセアニア、ユーラシア、イースタシアの3つの超大国から成り立っていた。
オセアニアは、<偉大なる兄弟>(ビッグブラザー)の支配する全体主義体制をとり、全ての人々を監視していた。
真理省に勤務するウィンストン・スミスは、思想警察に隠れて日記をつけはじめる。
ウィンストンの周囲に度々姿を見せる黒髪の女がいた。
彼女は、思想警察なのだろうか。

【ネタバレなし?感想】
徹底した管理社会を描く作品を「ディストピア」ものと呼ぶそうです。
ユートピアの反対語です。

政治思想の話題が多く、また字が小さいので、難しく感じました。

「二分間憎悪」や「憎悪週間」、「勝利マンション」に「勝利コーヒー」など、妙な造語が出てきます。
憎悪の対象は、エマニュエル・ゴールドスタインという男で、彼がテレスクリーン(双方向テレビジョン)に映ると、国民は憎しみを爆発させるのです。
<偉大なる兄弟>とゴールドスタインは、両方とも実在しているか定かではありません。
が、国民は、<偉大なる兄弟>を愛し、ゴールドスタインを憎むのです。

町中に貼られた「偉大な兄弟があなたを見守っている」ポスターって、「ドラえもんのび太の小宇宙戦争(リトルスターウォーズ)」のピリカ星・ギルモア将軍みたいだなぁと思っていたのですが、「小宇宙戦争」の連載開始って1984年のコロコロコミックだったのですね。(映画公開は、翌1985年)
藤子・F・不二雄先生はSFお好きそうだから、狙ってこの年に独裁政権ものを描かれたんじゃないか、と想像してしまいます。
ギルモア将軍の肖像ポスターは、目が動いて、市民を監視してるんですよね。そういう所も、1984年のテレスクリーンを思わせます。

新語法(ニュースピーク)というものが出てきます。
これは、現行の英語を単純化し、単語を削ったものです。
「良い」の反対の「悪い」という語を廃止し、「良くない」と表現すればいいではないか、というのが代表的な例です。
他にも「bought」や「thought」といった過去形を廃止し、「buyed」「thinked」と、全ての動詞に-edをつけることで、過去を表すというのもありました。
形容詞は動詞に-flをつける、副詞は-wideをつける、というのは、日本語に近いと思いました。
英語では、「速さ」と「速く」と「速い」は、全く別の単語なのです。

ニュースピークは、人民の思想をコントロール・拘束することで退化させ、党に絶対服従させることを目的として作られた人工言語ですが、それそのものは習得しやすく便利そうです。

党が「2+2=5」と言えば、「5」なのです。「4」ではないのです。
そういったことに反発を覚えた主人公のウィンストンですが、他の人々は疑問に思わなかったのでしょうか。
歴史は、次々書き換えられ、例え自分の記憶と異なっていても、党の示す見解が正しいのです。

オセアニアの敵は、ユーラシアだったはずですが、途中で、敵がイースタシアになりました。
そして、国民は、元々イースタシアと戦っていたのだと、あたり前のように信じます。
そもそも、本当に戦争しているのかどうかも怪しいです。
オセアニアの町に、ミサイルが飛んできたりはしているのですが、オセアニア政府の自作自演説も出てました。
誰と戦ってるのか良く分らないという点で、アニメ映画「大砲の街」を思い出しました。
wikipediaを見ると、戦争はリアルにやってるらしいです。
三国とも独裁国家で、それぞれ利点があるため、どこも敗戦しません。
永久戦争ならしいです。
平和の為に戦争し続けます。
戦争は、平和省が担当しています。

過去は、物質としてそこに存在しているのではないのだから、文書を書き換えれば、簡単に変わるという主義のようです。
ウィンストンは、歴史の改竄を仕事にしています。

管理社会の行き着く先は、全く楽しくなさそうです。
恐怖で国民を管理するのです。
管理の為の管理。支配の為の支配。

愛情省は、党に反発する人を拷問し、党を愛するようにした後射殺します。
なぜ、洗脳が完了すると殺してしまうんでしょうか。
全力で党に尽くしてくれるだろうに、もったいないです。
殺されたくないから、党へ反発をかかえていても表に出さない、という人もいそうです。

二重思考(ダブルシンク)という概念が出てきます。
これは、矛盾した信念を二つ同時に持つということです。
本当に、心から実践することは可能なのでしょうか。
オセアニア国民に求められる思考法です。

党のスローガンとして、以下の文章が何度も出てきます。

戦争は平和だ
自由は屈従だ
無知は力だ

党のイデオロギーは、イングソックと言い、イングランド社会主義を表しています。

読むのに異常に時間が掛かった本ですが、造語や設定が面白かったですし、この作品が発表後、世界の音楽や思想に影響を与えたとのことですから、元ネタを押さえたということになり、読んで良かったです。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/12/04(木) 23:07:59|
  2. 読書感想文(小説)

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