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オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)
(2006/12/07)
ワイルド

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【あらすじ】
画家のバジル・ホールワードは、美青年ドリアン・グレイに魅了され、彼をモデルに肖像画を描いた。
バジルの友人、ヘンリー卿は、ドリアンに美と若さの素晴らしさと儚さを説いた。
影響を受けたドリアンは、年を取らない自分の肖像画を妬んだ。そして、絵が変わっていき、自分はこのままの姿でいられたらと願った。

【途中まで、ネタバレなし感想】
解説によると、この作品は、ワイルド唯一の長編だそうです。

第一章開始20ページ以内からして、名言っぽいものがわんさかでした。
物語が動き出す前から、作者の思想そのものが面白かったです。
序盤で、特に印象に残ったのは、以下の部分です。

「笑いで友情が始まるのは、なかなか悪くないね。そして笑いで友情が終わるのはもっといい」
「人間はみな自分と同じ欠点を持つものに耐えられない」
「良心と臆病は同じものさ」

過去に読んだいくつかの小説で、良心と臆病の類似性が示されていました。
しかし、ここまではっきりと書いてあるのは初めて見ました。

画家バジルの、ドリアン・グレイへの思い入れや崇拝ぶりが凄いです。
ドリアン・グレイを自分の芸術の全てだと言い切ったりしていました。
あらすじを読んだ限り、バジルが主人公の物語になるのだと思っていましたが、実際には彼の登場場面は少なく、ドリアンがメインでした。

日本・ジパング・和紙・東京など、日本に関する言葉がちょくちょく出てきました。
作者のワイルドは、日本に関心があったのでしょうか。

ドリアン・グレイというキャラクターが単体で、映画に登場したようです。私は、未見です。
【以下、ネタバレあり感想】

堕落し、ついには殺人を犯してしまったドリアン。

彼は、40歳になっても、20歳前後の美貌を保ち続けました。
一方、彼の肖像画は、どんどん醜く変化していきました。

肖像画は、彼の心・魂・良心を表しているようです。
ドリアンが肖像画を突き刺すことは、それらを殺してしまうことだったのです。

魂が死ねば、肉体も死ぬということでしょうか。
肖像画は、描かれた時の美しいものに戻り、ドリアン自身は、本来あるべき醜い姿になって死んでいました。
罪を小まめに清算しなかった分、つもりに積もった罪の分の罰を一編に食らったという印象を受けました。

改心しようとしたドリアンが、過去を消そうと思って肖像画を刺したのです。
それで死んだのですから、人間、過去の罪をなかったことにして生きていくのは無理、心を入れ替えるにしても、罪は背負い続けろ、ということなのでしょうか。
ドリアンは、よっぽど、自分の醜い魂を他人に知られたくなかったのですね。
知られてしまったら生かしておけないわけです。それで、画家バジルを殺してしまったのではないでしょうか。

ドリアンは、絵の変化に気づいた当初は、決してバジルに絵を見せようとはしませんでした。
ドリアンが、後年、バジルに変化した肖像画を見せる気になったのは、何故でしょうか。
バジルが、「魂を見ることは、神様にしかできない」と言ったことに対して、反射的に思い立ったのでしょうか。

バジルの死体を消すのに強制的に協力させられ、自殺したアラン・キャンベルですが、一体どんな脅しを受けたのでしょうか。
ドリアンが、紙に何かを書いてアランに見せたのですが。アランの秘密を握っていたんですかね。
アランが、本当に自殺だったのか怪しい所です。

ドリアンは、自分の心が堕落する度に、肖像画が醜くなっていくことに気づいていました。
それならば、肖像画により、自分の行動の駄目だった点を確認、反省し、以後、改善していく事もできそうなものですが、ドリアンはそれをしませんでした。
むしろ、肖像画の変化を楽しんですらいました。

ドリアンが、ここまで美しくなかったら、また、年や魂の変化と共に肉体が醜くなっていたら、最期とそれに至るまでの数々の悲劇は起きなかったのではないでしょうか。

そもそも、ドリアンが自分の若さと美を自覚したきっかけは、ヘンリー卿(ハリー)の言葉でした。
登場人物が、ドリアンとバジル二人だけだったら、絵は変化せず、このような物語にはならなかったと思います。
ドリアンを自分色に染めようとしたヘンリー卿も責任重大です。
が、その割にヘンリー卿だけ生き残りました。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2008/11/08(土) 18:44:02|
  2. 読書感想文(小説)

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