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同人漫画サークル

小川洋子「ブラフマンの埋葬」

ブラフマンの埋葬 (講談社文庫 お 80-2)ブラフマンの埋葬 (講談社文庫 お 80-2)
(2007/04/13)
小川 洋子

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【あらすじ】
音楽家、絵画、カメラマン、舞踏家など、様々な創作活動に打ち込む芸術家に仕事部屋を提供している<創作者の家>管理人の「僕」は、怪我をした野生動物の子供と出会う。
「僕」は、<創作者の家>に出入りしている碑文彫刻師により、サンスクリット語で「謎」を意味する言葉を教えてもらい、それを動物の名とした。「ブラフマン」。

【途中まで、ネタバレなし感想】
ブラフマン以外、固有名詞が出てきません。
主人公の「僕」も碑文彫刻師も雑貨屋の娘もホルン奏者も、名前が一切書かれないのです。
また、町の名前も分りません。

最初、日本の話だと思っていたのですが、棺を川に流し、それを引き上げ石棺に入れる「埋葬人」という仕事が出てきたので、舞台は外国なのだと思われます。
「古代墓地」の様子も、日本のそれとは様子が違いますし。
どこの国かは分りません。

<創作者の家>管理人の仕事は、大変そうですが、魅力的です。
自分が管理人になりたいわけではありませんが、<創作者の家>の描写を見ているのが楽しかったです。
各芸術家にとっても、「僕」にとっても、互いに刹那的な関係であるように思われました。
22ページの「バイオリンの音は風と一緒に流れ去り~風と林と光だけだ。」の所がまさにそれを象徴しているようでした。
その部分の文章がとても綺麗です。

ブラフマンが何の動物なのかは、最後まで明かされませんでした。
犬かと思って読み始めましたが、水かきがついてるとのことで違いました。
泳ぎが得意なので、カワウソかなんかでしょうか。
もしかしたら、架空の動物なのかもしれません。

【以下、ネタバレあり感想】

タイトルから言って、ブラフマンは最後には死んでしまって、彫刻家が名を刻むんだろうと予想してました。
なので、ブラフマンがどんなに愛くるしくても感情移入しないようにしました。
そうじゃないと、ブラフマンが死んだ時悲しいからです。
死ぬのが分ってて愛するのがペットだとは思うのですが。

ブラフマンは車にはねられて死にました。
ブラフマンの死の責任の一端は、「僕」にあります。
娘に車の運転を教えたことや、車に同乗したこと、ブラフマンを放っておいたこと。

これは、物語上何を意味しているのでしょうか。
<創作者の家>と雑貨屋の間の狭い範囲での、代わり映えしない毎日だったのに、「僕」が娘に近づくという変化をしたから、ブラフマンは死んだのでしょうか。
元々、ブラフマンの存在自体が日常に飛び込んできた異物なんですが。
ブラフマンがいなくなったことで、世界は元に戻ったのでしょうか。
死んでしまったらしい人達の家族写真を見た「僕」は、「まるでそういう家族など、最初からどこにもいなかったのだというように、あとにはただ無言の写真が残る。…その静けさが僕に安らかさを与えてくれる。」と考えました。
ブラフマン亡き後の世界も、「僕」にとって、静かで安らぐものなのでしょうか。

レース編み作家は、ブラフマンを嫌悪していたわりに、遺体用に一晩でおくるみを作ってくれたり、埋葬に出席したりしていました。
意外といい人です。
  1. 2008/11/04(火) 06:30:06|
  2. 読書感想文(小説)

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