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リチャード・バック「かもめのジョナサン」五木寛之・訳

かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)
(1977/05)
リチャード・バック五木 寛之

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私が持っているものと装丁が違います。
上の画像のカモメ部分が真っ白で、その周りが紺というデザインです。

【あらすじ】
いかに速く飛ぶか、日々練習を重ねるかもめのジョナサン・リヴィングストンは、朝食の為に集っていたカモメの群れを<限界突破>のスピードで突き抜けた。
「思慮を欠いた無責任な行動である」として、ジョナサンは群れを追放され、<遥かなる崖>で一人暮らしすることになった。
年月が流れ、ジョナサンのもとに2羽の光るカモメが現れ、ジョナサンは空の彼方に消えていった。
ラッセル・マンソンによる、カモメの写真入り。

【途中まで、ネタバレなし感想】
様々な飛行形態を上手く文章化できているのは、さすが、飛行家だけあると思いました。

「食べる為に飛ぶのがカモメの生き方だ」とする一般的なカモメに対して、ジョナサンは「飛ぶために飛ぶ」カモメです。
他のカモメは、腹の足しにならない空中滑走ばかりしているジョナサンに対して冷ややかです。

やる気溢れるジョナサンでしたが、失敗して落ち込みました。このまま死にたいと思ったくらいです。
カモメとして生まれついてしまった、自分の能力に限界を感じ打ちひしがれたのです。
が、すぐに内なる声を聞いて立ち直ります。そして<限界突破>をするのです。

この辺の流れは、更なる高みを目指す者と、生活に埋没するものの差を描いていると思います。

ジョナサンは、自己実現理論で言うところの、「生理的欲求」「安全の欲求」「親和の欲求」の階層をすっとばして「自己実現の欲求(自分の能力を発揮し成長したい)」という高次の段階にいるようです。
食うもの食わずで飛ぶという。
3部構成の第1部ラスト付近で、ジョナサンが美味い昆虫を食べているという描写があり、一応腹を満たすことはしているようですが。

途中から、すごい宗教っぽかったです。
天国って何?
時間でも場所でもなく、完全なる境地のことって書いてますけど。
瞬間移動とか時間移動とか優しさと愛との真の意味とか出てきて、なんかすごい事に。

張(チャン)という長老カモメが出てきます。
他のカモメは皆アメリカやヨーロッパっぽい名前なのに、彼だけ中国風です。
精神的な秘伝と言えば東洋・中国なんでしょうか。

<最も高く飛ぶカモメは、最も遠くまで見通せる>という諺が登場しました。
地上にいるカモメに、そこに立たせたまま天国を見せたいというのが、ジョナサンの考えです。
修行し悟りを開き、真理を知った者が、それを広めるって感じです。

ジョナサンは言います。
「きみたちの全身は、翼の端から端まで―それは目に見える形をとった、きみたちの思考そのものにすぎない。思考の鎖を断つのだ。そうすれば肉体の鎖をも絶つことになる…」
かもめのジョナサン、すごいこと言い出したー!
純粋に、ひたすら速く飛ぼうと練習していただけのジョナサンが、年月を経て何かの境地に達してしまいました。

ずいぶん高尚な思考実験に入ってしまいましたが、これって何かの役に立つのでしょうか。
この物語は、「食べるためだけに生きる」ことより、「より良く飛ぶこと」の方が素晴らしいという感じの話です。
ここで言う「飛ぶ」という事は、人間に置き換えると「夢を実現する」「芸術活動をする」ってことなのかもしれません。それか「宗教的修行」。

後書きで訳者の五木寛之さんが言ってることがしっくりきます。
<食べることは決して軽侮すべきことではない。そのために働くこともである。>
ですよねー。
まぁ、そこらへんに言及すると物語の焦点がボケるので、カットして、思いっきりストイックに走ったのが「かもめのジョナサン」なのかもしれません。

自由を讃える要素も度々出てきました。

【以下、ネタバレあり感想】

岩に激突して死んだと思われた(ジョナサンの)弟子、フレッチャーは生きていました。
ジョナサン曰く「きみ(フレッチャー)がなんとかやってのけたのは、自分の意識の水準を、かなり急激に変化させる方法だったのさ。」とのことですが、周りのカモメ達には、ジョナサンが死んだフレッチャーを生き返らせたように見えました。
ジョナサンは、神か悪魔か。
悪魔だ。
ということになり、暴徒はジョナサンを殺そうとします。

ジョナサンは、フレッチャーに後継を託し虚空に消えていったとさ。

おわり。

どこかの聖書・経典にこんな展開ありそうですね。

鳥が光ったり、透明になったりするメカニズムが謎です。
現実の話じゃないのでしょうか。
ひょっとして、物語序盤でジョナサンが墜落して意識を失った場面以降は、あの世の話だったりして。

これだけ否定的な訳者あとがきも珍しいのでは。かなり的確な意見だと思いました。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/10/27(月) 01:59:22|
  2. 読書感想文(小説)

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