野良箱

同人漫画サークル

シャーリイ・ジャクスン「ずっとお城で暮らしてる」訳=市田泉

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫 F シ 5-2)
(2007/08)
シャーリイ・ジャクスン

商品詳細を見る

帯には、「皆が殺されたこの屋敷で、あたしたち幸せ」と書かれていたと思います。(帯紛失した)

【あらすじ】
メアリ・キャサリン・ブラックウッド(メリキャット)は、姉のコンスタント(コニー)と伯父のジュリアン、猫のジョナスと共に、家族が皆殺しにされた屋敷に住んでいる。
姉のコニーは、毒殺の容疑をかけられたが無罪になり、それ以来屋敷から出ていない。
叔父のジュリアンには、毒の後遺症が残っており、記憶が混乱、重い認知症のようになっている。また、体調が著しく悪い。
メリキャットが買い物に行くと、村人の容赦ない悪意に晒される。
月の上に住みたいという空想と共に平穏に生きるメリキャットとコニーだったが、従兄のチャールズがやってきたことで、生活が変わっていく。

【途中までネタバレなし感想】
ジャンルとしては、ホラーだそうです。
が、超常現象は起こりません。全て、現実にありうるレベルの話です。

毒殺事件があった屋敷ということで、ブラックウッド家は、村人から忌み嫌われています。
中には、友達として接してくれる人達がいますが、メリキャットは、彼女達すら拒絶します。
自分と姉のコニー以外は、「知らない人」なのです。

物語の語り手は、メリキャットです。
作中何度も「皆死んじゃえばいいのに」という言葉が出てきました。
皆が苦しんで死んだら、その上を踏んで歩きたいそうです。
不気味なのに、何度も言うものだから笑えてきました。

ジュリアン伯父さんは、過去に生きており、何度も事件のことを話し、原稿に書きとめています。
目の前にいるメリキャットを死んだと認識していたり、甥を弟と勘違いして話し続けたりと、かなり精神を病んでいます。

村の子供達が、メリキャットを囃し立てます。

メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん
とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット
メリキャット おやすみなさいと コニー姉さん
深さ十フィートの お墓の中で!

砒素は、砂糖のボウルに入っていました。
事件当時、コニーが料理を担当し、食器はそのままなのに、砂糖のボウルだけ水洗いしていました。
メリキャットは食事に出席せず、自室にいました。お仕置きで、ベットにやられていたのです。

友達と称してお茶会にやってくるヘレン・クラークや従兄のチャールズは、コニーを外に出そうとします。
メリキャットは、それが我慢できません。
幼い頃より、金髪碧眼の姉コニーを妖精のお姫様のように思い、大好きでいたのです。

メリキャットは、魔女的な呪術的なことを繰り返します。
自分の中に独自のルールがあり、おまじないや呪文を重んじているのです。また、大切なものを埋める癖があります。
メリキャットの行為は、傍から見て理解に苦しむものが多いです。

従兄のチャールズは、「ここは精神病院だ」と言いました。
確かに、屋敷の人間はまともじゃありません。
しかし、村の人間も、チャールズさえもどこか狂っているように感じられました。

毒殺を扱った話でありながら、美しく幻想的でもありました。
家庭菜園や自家製保存食、料理の描写が丁寧で綺麗でした。

【以下、ネタバレあり感想】

伯父さんやメリキャットはよく毒殺犯の作った料理を食べれるなぁと思って読んでいましたが、真犯人は、妹のメリキャットでした。

家族毒殺の動機はなんなのでしょうか。
読んだ限り、両親を憎んでいる描写はありませんでした。
メリキャットは、純粋に、姉のコニーと自分二人だけの世界を欲していたのでしょうか。
だから、コニーが絶対に使わない砂糖に砒素を混ぜた。のか?

家が火事になったのは、メリキャットがチャールズの煙草を屑箱に落とし、新聞に燃え移ったからです。半ば、メリキャットによる自宅放火です。
家が焼け落ちていても、外部と遮断されていても、コニーと一緒ならメリキャットは幸せなのです。

静かに閉じた、美しくて狂った世界です。

メリキャットが本当にコニーのことを好きならば、自分の罪をコニーが着せられた件について気に病みそうなものですが、全くそんなそぶりがありません。
価値観がズレています。

コニーは、「みんなわたしがいけないの」と言います。
そして、メリキャトが毒殺犯だと知りながら「大好きよ、メリキャット」と言います。
作中一番まともそうなコニーですが、上記のような感覚で生きているあたりが危険です。

コニーが魅力的すぎて、メリキャットが事件を起してしまった。だから、コニーのせい、ってことでしょうか。

従兄のチャールズは、お金大好きな俗物って感じでした。
コニーがチャールズにそそのかされて外に出てしまったら、それこそチャールズは幽霊で悪霊だって感じていたかもしれません。
美しいものが汚される感があります。
本来なら、コニーに罪はないのですし、外に出るのが幸せだと思うのですが、読んでいるうちのメリキャットの思想の毒されてしまったようです。

村人の悪意は、火事場でMAXに。
一応仕事として消火には来てくれましたが、皆で屋敷を荒らしました。
後で、食べ物を差し入れてくれたのは、さすがにやりすぎたと反省したのでしょうか。
それとも、ブラックウッド家に呪われそうな気でもしたのでしょうか。

火事の後、姉妹が子供を食べてしまうという噂まで流れ出しました。
自分達に近づいて欲しくないメリキャット的には、むしろ都合のよい現象だと思います。

ラストで、「わたしがこわいのはクモだわ」「姉さんにクモが近づかないようにして気をつけていてあげる」という言葉が出てきます。
これはコニーが事件当時、毒入りシュガーボウルを洗った理由としてが証言した「ボウルにクモが入っていたから」を受けてのやりとりでしょうか。
クモというのは何を指しているのでしょう。
チャールズやヘレン・クラーク、村人など、二人を邪魔する全てでしょうか。
単純に、虫のクモのことかもしれませんが。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2008/10/22(水) 21:36:54|
  2. 読書感想文(小説)

FC2Ad