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フランツ・カフカ「城」

城 (新潮文庫)城 (新潮文庫)
(1971/04)
フランツ カフカ

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上の表紙画像は、私が買ったものとは装丁が違います。

【あらすじ】
城から測量士として招かれた(?)Kは、雪の中の村に到着する。
城からは連絡がなく、仕事をさせてもらえない。
昔からの助手が後から追ってくると言っていたKだが、見知らぬ助手がつけられる。
酒場で働いていた女と許婚になり、小使として学校に寝泊りし同棲する。
その間、たった数日の出来事である。
城へは、入れないままだ。

【途中までネタバレなし感想】
巻末の解説を読んで、この作品が未完であることを知りました。
600P超読んでオチが分らないとは…。

この作品は、とにかく登場人物の台詞が長いんです。
なので、小説以外のメディアには向かないだろうと思いました。
が、ネットで検索したら、映画化や舞台化をしていることが判明しました。
ええー。

他の感想サイトさんでは、この「城」という物語を、作者カフカの人生や実存主義・哲学と重ねて論じていました。
私には、そのような知識がないため、あくまでもこの小説を読んでの、表層的な感想を書かせていただきます。

【以下、ネタバレあり感想】





最初読んだ時は、Kは測量士でないのに「自分は測量士だ」と嘘を言ったのだと思っていましたが、裏表紙のあらすじでは、はっきり「測量士のK」と書かれています。
真偽は分りませんが、Kは測量士という役割として描かれています。
途中から、確かに測量士として招かれていたらしいことも書いてあったと思います。
しかし、この村や城には、測量士のする仕事はありません。
測量士なのに最後まで測量をしないのです。一度も。
これは、アイデンティティーの喪失とかそんなようなことを表しているのでしょうか。

Kが婚約した酒場の女フリーダの思惑を、フリーダの後釜女性ペーピーが語るシーンがあります。
フリーダは、クラムという権力者の愛人だという嘘を、Kを利用してより一層本当のことだと周囲に思わせようとしたのだと言います。
これについては、Kが否定しています。
また、お内儀(おかみ)の言い分では、Kはフリーダを本当には愛しておらず、クラムの愛人であるフリーダを所有し暴利を貪るために許婚になったのではないか、ということでした。
これも、Kは否定しています。

Kとフリーダが恋に落ちて愛し合うまでが、えらくスピーディーで唐突だったので、これは真実の愛なのかと疑いました。
(現実に、出会って3日で結婚決めるカップルとかいますが。)
もし、これが偽りや計略・打算による婚約でなかったら、権力や身分を無視した愛のすばらしさを描いていることになりそうなものなのですが、怪しい所です。
Kは、自分の仕事や、その他足場みたいなものが全く固まっていないのに、いきなり家庭を持とうとしてました。
正体不明の助手を受け入れるあたりも含め、Kは不思議な人物です。

実体の見えない「城」は何を表しているのでしょうか。
官僚機構の不透明さ、お役所仕事の不条理さ、権力、それらの象徴のように思えます。

権力にたてついて(役人から下品な誘いをかけられ、それを娘が断っただけの話)、結果村八分にされてしまった家族も出てきました。
許しを請いたいのだが、社会的罰を与えた形になった「城」側は、「そもそも許すようなことなどなにもされていない」というようなことを言うのです。
なんともモヤモヤした対応です。

お内儀(おかみ)の着ている服は普通のものではなく、お内儀の本当の姿は別の所にあるのではないか?という疑惑が湧いたあたりで物語は終わります。
お内儀は、実は城の関係者とか、城のお嬢様・姫だったりするんでしょうか。
色々謎です。

Kはこの後、この村で生きていくんでしょうか。
もしそうだとしても、ずっとよそ者・異邦人であり続ける気がします。

テーマ:読んだ本。 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2008/09/04(木) 00:15:30|
  2. 読書感想文(小説)

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