野良箱

同人漫画サークル

スティーヴン・キング「ミザリー(MISERY)」

映画版の感想はこちらです。

週間少年ジャンプ(WJ)2009年32号の「ピューと吹くジャカー」第382笛のオチは、この作品が元ネタかと思われます。

ミザリー (文春文庫)ミザリー (文春文庫)
(1991/02)
スティーヴン キングStephen King

商品詳細を見る

私が買ったものとは、表紙の装丁が違います。

【あらすじ】
自動車事故で下半身不随になった人気作家ポール・シェルダンは、元看護婦のアニーに助けられる。
アニーは、ポールの小説「ミザリー」シリーズの熱狂的な愛読者なのだが、異常な性格をしておりポールを薬漬けにし監禁する。
ポールが「ミザリーもの」シリーズの最新作でヒロインミザリーを殺してしまったことを知ったアニーは、ポールに「ミザリーもの」シリーズの続編を書くよう要求する。自分一人が読むためだけに。

【途中までネタバレなし感想】
FANが作家に、自分の書いて欲しいストーリーを押し付ける話なのかと思ってましたが違いました。
アニーは、ポールの小説に対して、あくまでも愛読者の立場なのです。
編集者的視点、原作者視点でポールの小説を批判するのではありません。
FAN視点で、前回までと整合性がとれていない、読者に対してフェアではないといった点を指摘するだけで、このような話を書け!と言った無理な要求はしないのです。

「ミザリー」という小説では、精神的・肉体的両方の恐怖が扱われています。
猟奇的な虐待描写が多数あります。
元看護婦アニーが極度の精神異常者なのです。

全体的にホラーではありますが、超常現象は起こりません。
また、コミカルな要素も入っています。
ポールの脚の痛みや空腹感を、競馬やスポーツの実況中継になぞらえてあるのです。

アニーは、抑鬱状態になるとポールを殺して自分も死のうとします。
ポールは早い段階で、アニーを殺そうと思います。
ポールの考え付いた、アニーへの復讐方法とはいかに?

作中作として、「ミザリーの生還」が出てきます。
nの字が欠けたタイプライターで書かれているという設定なので、な行のひらがなと「ん」のみ手書き風の文字になっています。
きっと原著では、nの字だけが手書き風表記だったのでしょう。

作中のアニーは、まったく興味を示しませんでしたが、小説の書き方講座みたいなものが挟まっていて面白かったです。
また、作家はなんのために小説を書くのかといったこと等、小説家の本音にも触れていたと思います。

【以下、ネタバレあり感想】






ポールが脚一本と手の親指を切断されたこと、ノヴリルという薬に依存していること、アニーと女神や月のイメージを重ねていること、逃げられない密室、雪、nとtとeのかけたタイプライター、地下室のねずみ、ミザリーという名の豚、それら全てが、小説を書くということ、作家というもの、熱狂的な愛読者というものの何かを象徴しているように思います。

常軌を逸する過酷な状況の中で書いた作品が、過去最高傑作になってしまったということが、残酷でありながら面白いです。
作品を生み出すには、極限状態や制限された世界というのが、意外と向いているのかもしれません。

序盤のどこかで、小説を通した作家と読者の関係を性行為に例えていた部分があったと思います。
ポールがアニーに対して行った報復、殺人方法は、小説による強姦でした。
アニーが完成を心待ちにしていた小説「ミザリーの生還」をラストまで書きながら目の前で燃やし、燃やした紙を口に押し込み、タイプライターをぶつけてやったのです。(実際燃やしたのは、書き損じや白紙のダミーで、アニーは、タイプライターにつまずいて暖炉にぶつかり死んだ)

スティーヴン・キングのような人気作家だからこそ書けた物語だったと思います。
熱狂的なFANを持ってみて初めて分る、FAN心理の怖さというのがあるのだと思います。

ポールは生還を果たしますが、その後も、チェーンソーを持ったアニーの幻影を見てしまいます。

ポールは、たまたま目にした場面から話を膨らませ、アニーの影に脅えながらも新作を書き始めました。
「ポールが、感謝と恐れの入り混じった気持ちでワープロのキーを打った」とあります。
感謝と恐れの対象というのは、アニーをはじめとした愛読者達のことなのでしょうか。
愛読者あっての小説家なのだ、小説家は愛読者がいなければ作品を生み出せない、ということを言っているように感じました。

新しい物語を書き始めたということで、今後に希望の持てるラストでした。
ポールは何故涙を流していたのでしょうか。
創作の喜びから感動してのことだといいのですが。

ミザリーは、映画化しているそうですが、残酷なシーンが多そうなので、グロ・スプラッターに耐性のない私には直視できないと思います。
  1. 2008/08/26(火) 00:25:37|
  2. 読書感想文(小説)

FC2Ad