野良箱

同人漫画サークル

乙一「夏と花火と私の死体」

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)夏と花火と私の死体 (集英社文庫)
(2000/05)
乙一

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乙一が16歳の時に書いたデビュー作。
ジャンルとしては、ホラーもしくはミステリーらしい。
表題作他、1篇収録。

【あらすじ】
「夏と花火と私の死体」
九歳の夏休み、少女五月は死体になった。
五月の友達で同級生の橘弥生と兄の健は、五月の死体を隠す。
何度も大人達に見つかりそうになる死体。
一方、近辺では、児童が行方不明になる事件が多発しており、連続誘拐事件なのではないかと噂されていた。
物語は、死んだ五月の一人称で語られる。

「優子」
鳥越家で住み込みとして働く清音は、主人の政義の妻である優子を一度も見たことがなかった。

【途中まで、ネタバレなし感想】
読みやすかったし、おもしろかったと思います。

「夏と花火と私の死体」
タイトルの「私の死体」というのが気になって、あらすじも読まずに買いました。

なるほど、確かに、「わたし」こと五月が「わたしの死体」について語っています。
しかし、完全に死体視点というわけではありません。
死体から離れた場所での橘兄妹や、橘家の親戚緑さん等について、五月の言葉で書かれており、視点は拡散しています。
あとがきの解説では、五月が死んで神の視座を上ったとされていました。

舞台の状況説明やキャラクター付けの為だけに出てきたと思われた幾つかの事柄が、後ほど登場する伏線になっていました。

最後の箇所を読むまで全く結末を予想できませんでした。

「優子」
これは、余裕で先がよめるぜーと思って読んでたら、まったく読みきれていませんでした。
思いっきりミスリードしました。

【以下、ネタバレあり感想】






「夏と花火と私の死体」
緑さんは、橘兄妹の死体隠しを邪魔し罪を暴く探偵役だと思っていたので、死体隠しに協力し、さらには、児童誘拐事件の犯人だったことに驚きました。

冒頭で書かれていた、「村の男子は女子を遊びにまぜてくれない。」という説明や、「かごめかごめがしたい」と五月が言ったことが、物語のラストに反映されていました。

緑さんに誘拐され殺されたらしい男の子達の死体と五月の死体が、アイスクリーム工場の冷凍設備つきの倉庫の中で、かごめかごめをして遊んでいるのです。
死んでいるから、実際には遊んでないのですが。

緑さんが、「児童失踪事件のその後を追ってみるか」というようなことを考えているシーンがありましたが、周囲の大人と同じで、単に事件に興味があるだけだと思っていました。
実際には、自分の引き起こしている事件が、どう扱われているか、捜査はどれほど進んでいるのか、犯人の立場で気になっていたようですね。

緑さんが誘拐した子供達は、みな健君にどこかしら似ていると書かれています。
緑さんは、健君になにか倒錯した感情を抱いているのでしょうか。
ネットで、「緑が誘拐殺害した男の子達は、健の身代わりのようなものなのではないか」という説を見かけました。

田干しの季節であることが、後に田んぼを死体の隠し場所につかうことに繋がっていました。橘兄妹は、田んぼに隠すつもりがあったわけではありませんでしたが、カミナリじいさんに見つかりそうになった為、やむを得ず隠すことになったのです。
田干しが終わり水が流れ込んできたことで、死体隠しのリミットが迫り、物語のスリルを増幅させていました。

緑さんがアイスクリーム工場に勤めていることも、ラストに生きていました。

いつか、アイスクリーム工場の倉庫が解体される日が来ると思うのですが、その時死体達は見つかってしまうのでしょうか。

「優子」
はいはい、優子は人形で、政義は、妻が死んだ事実を受け入れられずに人形を妻と信じ込んでるのねー、これは、先が読みやすいわー、と思って読んでいたらどんでん返しが。

実は、狂っていたのは政義ではなく、お手伝いの清音だったのです。

ナツグミと間違って一口たべ吐き出したものは、本当はベラドンナで、清音は譫妄状態に陥り、人間と人形を区別できなくなっていたのです。

生身の人間である優子を燃やしてしまったわけです。

清音は殺人罪に問われるのでしょうか。重度の精神疾患ということで、無罪になりそうです。
清音は、入院したようです。

優子が人形であると、読者に思わせるような描写が多かったです。
例えば、優子のセリフにはカギかっこがついてなかったり。

夫婦が小食であることや、夫婦そろって同じ食べ物が嫌いなことは、本当だったのですね。

あー、騙されたー。
  1. 2008/07/19(土) 00:48:13|
  2. 読書感想文(小説)

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