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同人漫画サークル

矢口敦子「償い」

償い (幻冬舎文庫)償い (幻冬舎文庫)
(2003/06)
矢口 敦子

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【あらすじ】
元医師のホームレス日高英介(36歳)は、火事の第一発見者となった。
火事の一件以来警察と繋がりが出来、探偵役となった日高は、続発している殺人事件について調査していく。
ある日、日高が図書館で出会った中学生草薙真人(15歳)は、かつて日高が命を救った少年だった。
真人には、人の心の泣き声が聞こえるのだという。

【途中までネタバレなし感想】
帯には、「人の肉体を殺したら罰せられるのに、人の心を殺しても罰せられないのですか? 心に沁みる、ミステリの隠れた傑作。暖かい感動の輪が広がり、50万部突破!!」と書かれています。

裏表紙のあらすじは、結構後半の内容までネタバレしているので、読まない方がより楽しめるかと思います。

真人の、「女の子と見紛うような容姿」という設定が生きています。

ほんの脇役まで、ストーリーに密接に関わっていたりするので、気が抜けません。

【以下、ネタバレあり感想】

日高は、妻の心を殺してしまったと自覚したわけですが、日高の心もまた殺されていたのですね。
妻が自殺する際、日高の心を道連れにしたのです。

真人は、実際には連続殺人犯ではありませんでした。
(福島倫也が病院で自殺(?)した件と堀田有子が自殺した件については、真人の関与があったらしいですが。)

読んでいて、手口は分らないけど真人が連続殺意人事件の犯人?と思い始めたわけですが、主人公日高がその仮説にたどり着くまでが早かったので、別に真犯人がいるのだと考えました。(まだ、残りページ数が沢山あったから。)

救った誰かが殺人犯になったとして、救った人に責任や罪があることになるのでしょうか。
微妙な問題ですね。
それなら、殺人犯が殺人を犯すまで、犯人を生かしてきた全ての人が同罪ってことになってしまいそうです。
本作で言うと、2歳の真人を救ったのは日高だけではありません。ナースや医者も真人を救ったのです。
ですから、もし真人が本当に殺人犯だったとしても、日高が責任を感じる必要はないのではないかと思います。

真人は、自分のせいで人々が死んでいくのだ、自分は殺人鬼なのだと思っているようです。
母同様、どこかで心を殺されてしまったのかもしれません。
誘拐時の心停止の後遺症もあるかもしれませんが。

最後は、日高と真人の心の傷が癒えたと言いますか、死んだ心が生き返りつつあると言った感じでした。

真人を殺すも、真人の心を救済するも、日高にしかできないことだと思います。

ラスト付近で、薄っすらボーイズラブ要素がありました。
真人はソノ気はありませんでしたが、福島倫也はガチで真人が好きだった模様です。
真人は、女の子のような見た目ですからね。

日高は、失ってしまった子供の、もし生きていたら成長していただろう姿と15歳の真人を重ね合わせたようです。

この物語全体が、日高が妻と子を死なせてしまったことへの償いになっているのでしょうか。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/06/18(水) 05:51:01|
  2. 読書感想文(小説)

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