野良箱

同人漫画サークル

朱川湊人「花まんま」

花まんま花まんま
(2005/04/23)
朱川 湊人

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上の表紙画像は、私が買ったものと装丁が違います。

【あらすじ】
短編6本。第133回直木賞受賞作。

「トカビの夜」…文化住宅には、朝鮮人の兄弟が住んでおり、弟は体が弱かった。
外国籍の人は、今日以上に差別されていた。
主人公の日本人少年ユキオは、ある夜トカビに会う。

「妖精生物」…少女は、謎の男からクラゲのような目玉焼きのような、妖精生物を買った。
妖精生物は、瓶の中で砂糖を食べ、家に幸せを運ぶ生き物なのだという。

「摩訶不思議」…ツトムおっちゃんが死んで、葬式することになった。
棺を霊柩車で運んでいる最中、車が動かなくなった。さらに不思議なことが起こり…。

「花まんま」…主人公に妹が生まれ、彼は兄になった。
ある日を境に妹の様子が変わった。ノートに、学校ではまだ習っていない漢字を使って、聞き覚えのない名前を書いたり、急に「彦根」について知りたがったりした。

「送りん婆」…社長さんの母親は恐れられている。それは単純に、その母親が怖くて、嫁をいびっているとかそういうことではなかった。

「凍蝶」…鉄橋の裏側には、鉄道事故で死んだ人間の肉片が集まって出来た、鉄橋人間が住んでいるという。
被差別少年の主人公は、鉄橋人間と自分が似ていると思った。

【途中までネタバレなし感想】
全て、大人になった主人公が、子供時代を回想するという形の物語でした。
現実感のない箇所も多いのですが、昔の話ということで、記憶が色あせたり、脚色されているとも取れます。
舞台は、昭和40年代の大阪周辺です。
各話の主人公はそれぞれ別人です。

ホラーやファンタジー、オカルトの要素がありました。

人間の生死に関わる話が多めだったと思います。

昔を懐かしんでいるとはいえ、「あの頃はよかった」というだけのものではありませんでした。
蔑みや差別が生活に入り込んでいた様子が書かれています。

【以下、ネタバレあり感想】

【トカビの夜】
朝鮮のお化け、いたずらばかりする子鬼トカビ。
チェンホは死んでトカビになったらしいです。
お化けではありますが、人を憎んだり呪ったりしていません。
自由になった体を楽しんでいます。
もしかしたら、トカビなど存在せず、主人公が、生前のチェンホに皆と一緒になって差別的行為をしてしまったことを悔い改めたいと思っていたために見た幻、後々改ざんされた記憶、なのかもしれません。

【妖精生物】
少女の性の目覚めを描いた物語であるように思えました。
となると、「妖精生物」は何を表しているのでしょうか。
色々深読みできそうです。
私の予想では、主人公が「手に負えなくなった妖精生物をコインロッカーに捨てる」選択をするのかと思っていましたが、違いました。
妖精生物を殺そうとするシーンはグロかったです。
第二の顔怖っ!

【摩訶不思議】
おっちゃんには、三人の女がいたのです。
おっちゃんの恋人三人が仲良くしてラストを迎えたのがほのぼのしてました。
おっちゃんが何故そんなにモテたのか謎です。

【花まんま】
妹に前世の記憶が蘇った話です。
兄は、妹が生まれた時に父に言われたことを守り通していて頼もしいです。
前世における父親が、その後食事をとるようになったのか気になります。

【送りん婆】
人を安楽死させるお婆さんと、その助手になった少女の話でした。
最後、デスノートっぽかったです。

【凍蝶】
鉄橋の裏には、寂しい鉄橋人間ではなく、新しい季節を待つ蝶がいるのかもしれない。そんな、暖かくて前向きなラストでした。
主人公の家がなぜ差別されているのかはよく分りませんでしたが、とにかくそういう立場であるということさえ分ればよい話でした。
喫茶店で働いていると言っていたミワは、本当は、イカガワシイ職業の人らしいです。
冬を越す蝶の存在はファンタジーではないようですが、ミワの弟が死んで蝶になって現れ消えたという所は、幻想的でした。
  1. 2008/05/11(日) 21:06:37|
  2. 読書感想文(小説)

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