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同人漫画サークル

阿刀田高「黒い自画像」

黒い自画像 (角川文庫)黒い自画像 (角川文庫)
(2006/08)
阿刀田 高

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【概要】
中年男女(もう少し若い人もいるかも)が主人公の短編15作。

【途中までネタバレなし感想】
夢と現実の狭間のようなストーリーでした。
現実寄りの幻想と言うより、幻想寄りの現実といった感じです。

少しダークな展開をします。

人々の頭の中のイメージや、昔を思い出している様子が多く描かれていました。

【以下、ネタバレあり感想】

【鳥】
最後「えいっ!」とか言うから飛んだのかと思ってビビリました。
踵を返したということは、飛ばずに引き返したのですね。

【歌】
女性の生き方について考えさせられるお話でした。
この作曲法じゃ、作曲家にはなれませんね。

【香水】
少し色っぽいお話。
娘は、今でもお父さん大好きっ子なのでしょうか。
それとも、香水紙を送ってきたのは娘ではなく、本当に綾子だったのでしょうか。
香水紙を好きな男に送るのは、中学校だけじゃなく、大人の女性にも流行っているとか。

【彫像】
考える人は、本当は、地獄の門の一部なんですよね。
主人公女性の頭の中は、金のことを考える旦那でいっぱいのようです。

【青い靴】
玄関の絵って変わってるような気がします。
ほろ苦いお話でした。
生まれられなかった子供の分の靴を買って、物語は終わりました。

【水の底】
生と死の間にある川といえば、三途の川ですが、あれは渡るものであって、流れていくものではないと思います。
川底に沈んだ人の目が開いていたらすごく怖いですね。しかも、それが数年後の自分だなんて。
川を見る子供の視点だけでなく、流れていく人間側の視点も描かれていたのが良かったです。

【夜の衣装】
全身を覆う黒い宗教的衣装と「幽霊には足がない」という俗説が結びついて、足だけのお化けになるという発想が面白かったです。

【赤道奇談】
主人公のマダムは、赤道だけじゃなく、別の一線も越えてしまったのかもしれない。というお話でした。
子供は、旦那のではなく、アンジェロの子供である可能性が高いですね。この書き方だと。

【石見銀山】
願うと呪いで人が殺せる毒薬。
その様なものは現実にはありえないわけですが、無意識の内に毒薬殺人をしてしまうということは、なくもないと思います。
夢じゃなくて、実際に薬を盛ってしまったんじゃないか…?と不安になってくるお話でした。
今度は、息子をいじめている子供が犠牲に?

【無表情】
世の中には、道化恐怖症なるものがあるいらしいですね。
この物語の主人公女性は、別に恐怖症ではないのだと思います。
複雑な環境の子供が、薄暗闇の中で無表情だったら、普通に怖いです。

【目撃者】
モテりゃいいってものでもないですよね。
竹井は、女性に求めるレベルがあまり高くないから、数人の女性を手にしたと満足していられるのでしょう。

【水葬】
上記の【水の底】に通じる死生観です。
【水の底】と繋げると、死んで川を流れた末海に出て、その海は羊水で、そこからまた生まれるというイメージでしょうか。
棺桶の中で、釘の音を聞くのは、確かに最悪です。
そういうイメージをすると、恐怖状態に陥りそうなので、あまり考えないようにしたいです。

【車輪】
会社をサボって、いつもと反対方向の電車に乗る。
多くのサラリーマンが一度は考えたことがありそうな状況です。
逃避して、気楽な感じになる物語と思いきや、最後えらいことに。

【蟹】
人が埋まっているんですか?

【缶】
一人称ではなく、三人称の物語のようです。
母の声と思い出、当時の匂いが詰まっているなんて、何て高性能な缶。
本当に缶に声や匂いが入っていたわけではありませんが、しみじみするラストでした。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/05/02(金) 19:58:12|
  2. 読書感想文(小説)

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