野良箱

同人漫画サークル

川崎草志「長い腕」

長い腕 (角川文庫)長い腕 (角川文庫)
(2004/05)
川崎 草志

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【あらすじ】
電車内での殺人、会社からの飛び降り無理心中、女子中学生による同級生射殺、空港でのパニック事件…
全国各地で人の死ぬ事件が起きた。
主人公の島汐路(しおじ)は、ゲーム製作会社で働く女性だ。もうすぐ退社予定である。
汐路は、飛び降りと同級生射殺にある共通点を見出し、事件の調査を始める。
第二十一回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

【途中までネタバレなし感想】
ゲーム制作現場やネット、メールという新しい世界と、村社会、因習、怪談などの古くておどろおどろしい世界が交じり合った作品でした。

祥一郎君、知らない人の車に乗っちゃだめだよ…と思いつつ、祥一郎君なしでは進まない話でした。
【以下、ネタバレあり感想】

住んでいると、人がおかしくなってしまうような、絶妙に歪んだ屋敷。
西屋敷が悪質なコピーじゃなくて、敬次郎作だったとは。

ゲームの3D酔いの話と、建築の話が結びついていました。

ケイジロウが、中学生二人の仲を引き裂くようなメールを送ってき出した所で、「悪口を言う人よりも、『あの人があなたのことこんな風に悪く言ってたよ』と本人に伝える人の方が真の悪人だ」と学校の先生か誰かが言っていたのを思い出しました。

人のサイトを荒らしておいて、別名で優しい言葉をかけ油断させるという手口は実際にありそうです。

中学猟銃殺人の加害者が被害者を真似ている事と、西屋敷が島屋敷に似せて作られている事が、イメージとして重なりました。

物語を解決に導いた頼れる石丸さんですが、私、石丸さんがケイジロウなんじゃないかと疑ってました。石丸さんごめんなさい。

ケイジロウの正体は、西兄妹でした。どうやら姉の西英子が主犯として事件を提案し、兄の西優司がネット上で工作を行っていたようです。(優司が単独でやった事件もありそうですが)
強い動機らしい動機はないのでしょうが、歪んだ家に住んでいるせいで、歪んだ欲望を持つようになってしまったということらしいです。違うかも。

汐路の両親を殺したのは、西優司でした。
汐路の父は狂っていなかったし、父が母を殺したのでもなかったのです。
ホースを家に巻いていたのも、ビー玉を転がしていたのも、家の傾きを調べるための、至って正常な行為だったのです。

優司の両足と左腕を切断して幽閉するなど、西家の父親も相当歪んでいるようです。

作中で、空港パニック死亡事件と中学校銃殺事件は、ケイジロウの炊きつけたものであることが判明しました。
電車内携帯殺人事件も関係あるのでしょう。
優司は、電波系掲示板で「毒電波を送ってくる奴の正体は、電車内で携帯を使っている奴だ」と書いていたようですし、そういった優司の書き込みを読んだ人が犯行に及んだのでしょう。

では、ゲーム会社飛び降り事件はどうなのでしょう。
仕事上のトラブルから無理心中に及んだようですが、加害者がアニメのケイジロウ人形を集めていたことから、優司が何らかの影響を与えた可能性が高いと思います。

一気に読めて、最後の方まで真相が見えず、面白かったです。
優司は死に、ケイジロウの正体は西英子一人であると思わせておいて、実は優司が生きていて…というのが良かったです。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/04/28(月) 12:39:22|
  2. 読書感想文(小説)

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