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鬼頭莫宏「彼の殺人計画」(ジャンプSQ.読み切り)

ジャンプ SQ. (スクエア) 2008年 05月号 [雑誌]ジャンプ SQ. (スクエア) 2008年 05月号 [雑誌]
(2008/04/04)
不明

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ジャンプSQ.5月号に鬼頭先生の「彼の殺人計画」という読み切り漫画が載っていました。
SUPREME読み切りシリーズというものの一環らしいです。
センターカラー33Pです。

いやぁー。酷い。酷面白い。

鬼頭先生が、「なるたる」の連載が終わったらどこかに投稿しようと、溜めておいた短編の構想のうちの1本が「彼の殺人計画」なのだそうです。

オムニバス形式以外では、長編・連載になりようのない作品でした。
こういった、短編・読み切りという形でしか表現できない話というのは好きです。

物語は、ごく普通の少年高木ヤスヒロ17歳が、殺意を抱くところから始まります。
別に誰かに恨みを抱いているわけでも、社会に不満があるわけでもありません。
単純に殺人を経験してみたいだけなのです。

話の目的が1P目最初のモノローグから一貫してハッキリしているので、シンプルで読みやすかったです。

【以下、ネタバレあり感想】
目標を持つことは、充実した日々に繋がるのですね。
例えその目標が「殺人」であったとしても。

マスコミに、「犯人は社会不適合だから、性的におかしいから、家庭に問題があるから、不幸だから…」そんな風に殺人の理由を片付けられてしまうのは嫌だということで、主人公高木ヤスヒロは、自分を高め、めぐまれた環境に自分を置こうとしました。

夫婦仲の良い両親、空手とピアノを習っている、成績がよい、ボランティア・地域活動に参加しおばちゃん達から好感度が高い、容姿は人並みで、かわいい彼女がいる。
こういった、順風満帆な少年が、その幸福な人生を棒に振って行うからこそ意味のある殺人。

ターゲットは、周りから愛されている幸福の象徴のような人間がいいということで、子供、それも女の子に決めました。

殺人決行の瞬間、主人公の高木ヤスヒロは、全く知らない男(ヨータ)に刺されてしまいます。

ヨータもまた、ヤスヒロと同じ計画を持って殺人を行ったらしいのです。

ヤスヒロは、「周りから愛されている幸福の象徴のような人間」。まさに、理想的な殺人ターゲットだったのです。

ヨータは、ヤスヒロよりイケメンなので、より完璧に計画を遂行したことになりそうです。
ヤスヒロは、意識を失いながら、充足感を味わっています。
多分、ヨータが、自分と同じ志を持った殺人者だと分ったのではないでしょうか。

ただ、どうやらヨータは、物語の最初の方で、ヤスヒロが殺しのターゲットとしてふさわしくないとしたオタク少年と同一人物ならしいのです。(リュック背負ってアニメ絵の紙袋を持っている。2コマ登場)
顔や、ホクロの位置が同じです。
そうなると、マスコミは、ヨータが元オタク少年だったことをことさら強調しそうな気がします。
あ、でもヨータは本当はオタクじゃないのに、オタクを装って、ターゲットを物色してたとか…?それはないか。
単純に、ヤスヒロより殺人に目覚めるのが遅かっただけかもしれません。
殺人しようと思ってから垢抜けた=ヤスヒロの彼女の友達の彼氏。でしょうか。

最初、ヤスヒロの死後、「ヤスヒロくんは、勉強が出来、活発で、ボランティア活動をしていていて、交友関係にも問題のない、本当に優しい子でした」などと報道されるのかと思ってましたが、ヤスヒロが「オレの殺人計画」ノートを残しているとすると、家族や友人、マスコミ、警察の反応はどうなってしまうのでしょうか。
ヤスヒロは、死亡時包丁を持っていました。
被害者に強い殺人願望があったというセンセーショナルな事件として話題になりそうです。
その場合、ヤスヒロの気持ちを、ヨータが代弁してくれそうです。

SQ.は少年誌なんでしょうか。多感な時期の少年少女がこの漫画を読んで触発されたらどうすんだろう、と一瞬思いましたが、万が一この漫画を模倣して殺人なんてしても、「マンガの影響で人を殺した」という、まさにマスコミ好みな動機になってしまい、この漫画の殺人美学(?)には反しますね。

「彼の殺人計画」の「彼」というのは、ヤスヒロのことでもあり、ヨータのことでもあるのでしょう。
そうなると、扉絵の見え方が変わってきます。
フードを被り包丁を手にした後ろ姿。これは、ヤスヒロなのかヨータなのか、はたまた、別の誰かなのか。
  1. 2008/04/07(月) 19:02:47|
  2. 読書感想文(漫画)

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