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同人漫画サークル

筒井康隆「出世の首」

出世の首―ヴァーチャル短篇集 (角川文庫 つ 2-22)出世の首―ヴァーチャル短篇集 (角川文庫 つ 2-22)
(2007/03)
筒井 康隆

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【概要】
現実と虚構を行き来する短編12本。

【ネタバレなし感想】
これはひどいという素敵ストーリーの数々でした。
流麗さや情緒などはそっちのけで、脚本的なテンポで書かれていました。
なので、大変読みやすかったです。

作者が作中に度々登場し、しかも自画自賛していたりして、筒井さんは面白い性格してるなぁと思いました。

収録作品中「ジャップ鳥」だけは既読でした。
いつどこで読んだのか全く思い出せない…!

【以下、ネタバレあり感想】


【空想の起源と進化】
「若い作家というのは、未完成のほんものである。そして老大家というのは、完成されたにせものである。」
一行目から名言っぽいです。
筒井さんは、どちらかと言えば大家で大御所なわけですが、常に(?)若い作家側に立った物語を書いているように思います。
現代と原始時代の行き来がスムーズ過ぎて面白いです。
前世か先祖か知りませんが、今も昔も似たようなことをやってます。

【出世の首】
どこまでが収録でどこまでが現実なのか。

【テレビ譫妄症】
テレビの見すぎで下半身麻痺状態になり、やがて、目の前で起こっていること全てをテレビと思い込んでしまうお話。
この本に出てくる女は浮気をしすぎだと思います。
テレビや漫画で浮気を扱うことが多いくらいですから、実際多いのかもしれません。
もしくは、視聴者(読者)が浮気話を求めているのかもしれません。

【雨乞い小町】
平安時代の六歌仙がメインキャラです。
タイムマシーンでやってきた星右京の手で科学的で人工的な雨乞いをします。
てっきり、星右京が歌詠みになって、七歌仙になってしまうとかいうオチだと思っていましたが、違いました。

【夜の政治と経済】
ああーー、最初の方読み返してたら出てたわー、グレイの作業服着た電気屋。

【ジャップ鳥】
日本人的特徴を持つ「ジャップ鳥」の話を聞き、日本人のいやらしさやなんやらをイタリア娘に思い知らされた主人公。
でも、そもそもジャップ鳥なんていなかったんです。
その鳥は、普通によくいる黄色い鳥だったのです。
主人公は、イタ公鳥と呼ぶにふさわしい鳥を探し始めます。
自分がやられたことをやりかえすわけです。
イタリア娘はウソに引っかかってくれるでしょうか。
引っかからなくても、自分がやったイタズラと同じことをやろうとしているということにすぐ気づくでしょう。

【となり組文芸】
実際の商業文芸雑誌でも、この物語の同人と同じようなことが起こっているのかなぁと邪推してしまいます。
賞の選考方法、最後ひでぇえー。
賞ってそれぐらいどうでもいいもんなんだぜ!って感じでしょうか。
有名な賞を沢山取っている作者が書くからこそかっこいいですな。
取ってない人がこういう話書くと、負け犬の遠吠えや僻みのように見えかねませんからね。

【桃太郎輪廻】
桃じゃなくて、尻が流れてきます。
「こうなりゃブラック・ユーモア精神を発揮して、いっそのこと食っちまえ」
って…ブラックすぎます。
作者曰く高級で観念的な物語なのだそうなので、時代考証とかあんまり考えないほうが良さそうです。
色々な童話や昔話をごった煮にして、下ネタで味付けしたアレなストーリーです。
ラストで、尻が未来の人工子宮であることが分り、尻から生まれた桃太郎が妊娠させた人工子宮が川を流れます。
つまり、自分の父が自分であり、自分の息子もまた自分であり、話が永遠にループするのです。

【馬は土曜に蒼ざめる】
人間の脳を馬に移植したので、馬視点で物語が進行します。
なんだかんだで、馬から人間に戻るわけですが、その人間というのが、筒井康隆その人という話。
自分で自分を「若くて好男子」と書ける筒井さんってすげー。

【傍観者】
なんだって、登場人物たちは、語り手をいないかのように扱うのだろう、姿が見えてるのに。
と思ったら、語り手は赤ちゃんでした。
すごく頭いい赤ちゃんだなー。
確かに、浮気をするお母さんなどは、赤ちゃんに見られていても気にしないでしょう。

【廃塾令】
劇かドラマの台本のような形式。
塾帰りの子供が撲殺された原因が塾であるという論調。
その他色々あって、塾が禁止されました。
禁止するとモグリが出現し、闇で横行するわけです。
禁酒法時代とか、そんな感じだったのでしょうか。

【団欒の危機】
テレビがなく間が持たないので、家族リレー形式でお話をするも、だんだん登場人物が実際の家族の状況と重なってきて大喧嘩。収集をつけるには、カラーテレビが来るしかない、そんな状況になります。
ですが、カラーテレビが来たとしても、家族はギクシャクしっぱなしだと思います。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/02/25(月) 21:12:08|
  2. 読書感想文(小説)

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