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同人漫画サークル

太宰治「女生徒」

女生徒女生徒
(1997/06)
太宰 治

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女性の一人称で語られる短編14本。
巻末に、磯田光一による太宰治小伝あり。

【以下、ネタバレあり感想】
【燈篭】
最初読んだ時は「読点が多くて途切れ途切れ、かつ、せわしない感じが女性っぽいなぁ」と思っていたのですが、今読み返したら、読点の多さは気になりませんでした。
出会いは目医者。
眼帯×眼帯。
眼帯の魔法。
昔は、「眼帯」って萌え要素でもなんでもなかっただろうに、時代を先取りしてますな。
一体何を盗んだんだろうと思っていたら、男物の海水着でしたか。
盗みの件が夕刊に載るとは。しかも「変質の左翼少女滔々と美辞麗句」というインパクト溢れる見出し。

【女生徒】
主人公は、眼鏡っ娘でロココ好き。
目覚めてから眠るまでの、考え事、心の動きを事細かに書いたものです。
下着で隠れたお洒落をしているところが可愛いです。
同性への嫌悪と憧れを両方持っています。
伊藤先生の絵のモデルになりつつ、伊藤先生をばかだと思っています。
延々モノローグが続きます。
ロマンチックだったり哲学的だったり俗っぽかったりすることを一日中考えています。
叫びたくなったり、泣きたくなったり大忙しです。

【葉桜と魔笛】
姉が妹の為に手紙を捏造したら、そもそも妹が貰っていた手紙全てが、妹の自作でした。というお話。

【皮膚と心】
器量が悪くて、夫に甘えられない妻と、自分を卑下し、妻をリードできない夫。
皮膚病で病院に行くという話になった時に、ようやく二人とも素直になれたようです。
「結婚の前の夜、または、なつかしくてならぬ人と五年ぶりに逢う直前などに、思わぬ醜怪の吹出物に見舞われたら、私ならば死ぬる。」という一文は、世界名言事典に載ってましたよ。確か。
この小説が元ネタだったとは知りませんでした。

【きりぎりす】
てっきり、どこかで夫が失敗するだろうと思っていたら、最後まで成功者でした。
そんな夫に対して妻が抱いている考えは「おわかれ致します」。
普通の妻ならば、夫が成功して金持ちになったら、一緒になって喜び、調子に乗りそうなものですが、この妻は、夫が、人の悪口を言ったり、金のことばかり言ったり、どんどん、孤高でもなんでもなく俗っぽくなっていく様が嫌でしかたないのです。
確かに貧しい時代の夫の方が魅力的です。
「世の中成功するのは、夫のような性格の奴だよ」という話なのか、「成功すると、夫のような性格になってしまうよ」という話なのか…。どっちとも取れる気がします。

【千代女】
自分に才能がないことを分っているのに持ち上げられる苦痛。
でも、心のどこかでは、小説を書きたいと思っていたようです。
ですが、実際書いてみるとやはり才能がないようです。しかも、同年代の女の子が立派な作家になっている。
主人公を作家にしようとしつこく、疎ましい存在だった伯父さんですが、最後には主人公の才能を見放してしまいました。
才能は、持ち上げられているうちに、伸ばせるだけ伸ばしておいた方が良かったのでしょうか。

【恥】
「他の女の子には分らないだろうけど、私だけはあなたのよさを分ってるのよ。あなたの小説はここを改善するといいわ。」的な上から目線で思い上がった手紙を作家に送つけた女の話。
主人公の女は、小説の登場人物をすっかり作家本人と同一視しており、作家をだめ人間だと思っていましたが、実際会ったら、まったく違うちゃんとした人でした。
「まんが極道」にこれと近い話が載っています。第9話「貧富論」です。単行本1巻収録。
まんが極道 1 (1) (BEAM COMIX)まんが極道 1 (1) (BEAM COMIX)
(2007/05/25)
唐沢 なをき

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【雪の夜の話】
「眼球に風景を蓄える」というのは、美しいようなグロいような考え方です。
綺麗なものをたくさん見たけど、きたないものもたくさん見て、プラマイで考えるとマイナスの方が大きい。
なるほど、なんだか面白く洒落た会話でした。

【貨幣】
お札目線の物語は初めて読んだかもしれません。

【おさん】
夫が不倫して、相手を妊娠させ、その愛人と心中する話を妻目線で描いたもの。
夫は、心中をジャーナリストによる革命だというような事を言っています。
それに対して妻は冷ややかです。
「妊娠とか何とか、たったそれくらいの事で、革命だの何だのと大騒ぎして、そうして、死ぬなんて、私は夫をつくづくだめな人だと思います。」
「自分の妻に対する気持ち一つ変える事が出来ず、革命の十字架もすさまじいと~呆れかえった馬鹿馬鹿しさに身悶えしました。」
こういう視点で物語が書けたら、書いた本人が自殺するということはなさそうなのに、太宰は、この作品を書いた翌年、愛人と入水自殺したそうです。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2008/02/09(土) 12:56:28|
  2. 読書感想文(小説)

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