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エドガー・アラン・ポー「黒猫/モルグ街の殺人」 訳・小川高義

黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)黒猫/モルグ街の殺人 (光文社古典新訳文庫)
(2006/10/12)
ポー

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ポーの短編集。
8篇収録。

【途中までネタバレなし感想】
推理小説は、最後の「モルグ街の殺人」だけなようです。
「モルグ街の殺人」は、探偵と読者の間に語り手を入れるという手法で書かれています。
要するにワトソン君、関口巽、有栖川有栖ポジションのキャラクターがいるのです。
この作品は、探偵推理小説の元祖だそうです。

残りの7篇は怪奇幻想小説といった感じです。
殺人者の独白などがありますが、「それって殺人の動機になってないだろう」という、異常な精神状態が描かれています。
しかも、殺人者は自分が正常で健全で冷静だと思っています。

【以下、ネタバレあり感想】
【黒猫】
ぎゃあああああああああ、いきなりグロいよーーーーー。
目はーー、目はやめてぇえええーーー。
まるで猫のせいで人殺しをしたように書かれているので、てっきり黒猫は「悪意」とか「人をそそのかす悪魔」とかそういったものを表しているのかと思ってしまいました。
が、解説を読むと「良心」を表しているそうな。
人を殺して隠している場面で黒猫がいなくなっていることがポイントだそうです。
黙っていれば犯罪が露呈しないものを、壁に塗りこめた良心のせいで絞首刑に…。
といった解釈らしく、確かにそう読むと意味が通ります。

【本能vs.理性―黒い猫について】
最初の2ページは、黒猫が出てきません。
本能と理性というものについて考察されています。

【告げ口心臓】
老人と主人公の関係が謎です。
老人の眼が禿鷹のようで憎らしい、というよく分らない理由で老人を殺そうとします。
解説によると、昔から「邪悪な眼」という迷信があるそうです。
「視線を向けただけで相手に凶事が起きる」というものだそうな。
「老人の心臓の音が近隣に聞こえるのではないか!もう生かしておけない!」と電波なことを考えます。
死体はバラバラにして床下に隠したものの、老人の心臓音が聞こえてきて「いいかげんにしろ!」と叫んだ後、警察のいる前で罪を告白します。
この心臓の音も黒猫と同じく「良心」を表しているのでしょうか。

【邪鬼】
「ひねくれた邪鬼のような精神」「してはいけないという理由で、してしまう」ということについて描かれています。
「黒猫」でも似たような文章が出てきました。
それは以下のようなものです。
「私を転落させる最後の一押しだったろうか。ひねくれた天の邪鬼の精神だ。(中略)けしからん行為、おろかしい行為は百遍でも繰り返してしまう。(中略)してはいけないと思うからそうしているだけなので、ほかに理由はない。法として定められたことを、法として承知しているくせに、だからこそ破りたくなる性向があって直らないのではないか。」
「×~ペケ~」という4コマ漫画で、お母さんが洗濯機に「手を入れないで下さい」と書いてあるのを見て、「そう言われると入れたくなっちゃうのよねー」と言い、娘に止められるシーンがあったのを思い出しました。

【ウィリアム・ウィルソン】
「映像化したら画的にああなりそうだなぁ」と思った映画が3つほどありますが、そのタイトルを書くと各映画のネタバレになるので省略。
名前も誕生日も主人公と同じ男ウィルソンは、主人公が悪事を働こうとする度に現れて邪魔をします。
ウィルソンも「良心」を表しているっぽいです。

【早すぎた埋葬】
本題に入る前に、死と生の境界線について述べ、また、生き埋めの事例があげられています。
そしてその後、主人公に「強硬症」という持病があることが明かされます。
この「強硬症」という病気は実在するらしいですが、この小説のとはちょっと違うようです。
小説の中では、発作を起こすと気絶し、長い間昏睡状態に陥ってしまう病気として描かれています。
主人公は気絶中に埋葬されることを酷く恐れています。
確かに生き埋めは怖いですね。大変恐怖心を煽られる話題です。
主人公は、万が一発作中に死亡扱いされ埋葬されても良いように棺桶を改造します。
しかしある日発作を起こして目覚めた場所は、自分が用意したのと違う棺桶の中だったようです。
主人公は大変焦りますが、実は棺桶ではなく船室の狭い寝床だったのです。
訳者あとがきにに「ぐっと盛り上げたところで、すとんと落とす。ここまで落とさなくてもよかろうに、と私は思うのだが、落とさずにはいられないほどの恐怖をポー自身が抱えていたのかもしれない」とあります。
この話のラストは、死にまつわる心配と縁を切り、持病も消えた、というものです。
解説によると、ポーが暗闇を恐れていた事は記録に残っているそうですから、ポーは自分的にめい一杯怖い話を作り、その主人公を救う事で、安心したかったのかもしれません。…違うかも。

ちなみに、この主人公と同じ発想で非常ボタン付き棺桶を発明してしまった人が、実際にいるそうです。
発明者は、ロシア人のヴィタリー・マリュコフさんです。
http://abcdane.net/archives/001053.html
http://rate.livedoor.biz/archives/26741604.html

【モルグ街の殺人】
モルグ街で殺人事件発生。
証言者が沢山出てきます。
どの国籍の人々も、事件当日聞こえた声は外国語だと言いました。
ある人はロシア語だと言い、ある人はイギリス英語だと言い…。
凄惨な殺人現場は密室。
犯人はどこから入り、どこから出て行ったのか…。
犯行の動機は?
探偵デュパンが推理します。
いやー、とても推理小説っぽいですねぇ。
って、犯人オラウータンかよッ!!!!
脱力感と共に笑えてきました。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/12/16(日) 00:12:09|
  2. 読書感想文(小説)

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