野良箱

同人漫画サークル

三島由紀夫「花ざかりの森・憂国」

花ざかりの森・憂国―自選短編集花ざかりの森・憂国―自選短編集
(1968/09)
三島 由紀夫

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13編の小説からなる短編集です。
解説は三島由紀夫本人です。

【以下、ネタバレあり感想】
【中世における一殺人常習者の遺せる哲学的日記の抜粋】
「殺人ということが私の成長なのである。殺すことが私の発見なのである。忘れられていた生に近づく手だて。私は夢みる、大きな混沌のなかで殺人はどんなに美しいか。殺人者は造物者の裏。その偉大は共通、その歓喜と憂鬱は共通である。」
という一文があります。
「三島を読んで殺人者になりました!」「三島を読んで放火犯になりました!」という人が出たとしても、三島作品は発禁にならないのでしょうね。前に、江戸川乱歩(だったかな)を読んで窒息殺人犯になった人がいましたもの。
そいういう事件の原因がアニメやゲームだった場合、「規制しろ」という声が高まるんですよね。

【遠乗会】
息子を堕落させた女を見に、乗馬会に参加する母親の話です。
母親は、息子の惚れた相手を憎むでもなく、また、以前見合いを断った由利将軍が今でも自分を愛し続けていると思っている所などが、やけにポジティブで幸せな頭の持ち主です。

【卵】
妄介、殺雄など、ネーミングセンスがすごいです。
妄介は嘘つきと言う設定なのに、まともなことしか言いません。
むしろ地の文の方がでたらめで電波です。
嘘と本当が逆転した世界なのでしょう。
ボート部は、腕力と若さの象徴なんでしょうね。
卵が一杯出てきて、裁判を行います。

【海と夕焼】
子供達の十字軍。
海が割れないばかりか奴隷にされるなんて悲惨過ぎます。
キリストのお告げを聞いたことより、海が割れないことの方が不思議という感覚が面白いです。

【牡丹】
牡丹の木の数を、自分が殺した人間の数と同じにすることで、密かに悪を顕彰する男。
「顕彰」という言葉は、「隠れた善行や功績などを広く知らせること。」だそうです。
善行ではなく、悪行を誇示したいという気持ちは人間どこかにあるのかもしれません。
現代でも、mixiやブログで犯罪告白をして炎上する人が後を絶ちませんもの。

【橋づくし】
芸者と女中が橋を渡る話。
七つの橋を渡り切るまで口をきかず、知り合いに声を掛けられなければ願い事が叶うと言われているそうです。
途中で知り合いに声を掛けられたり、警察に職質されたりして願いが駄目になりますが、女中は橋を渡り切りました。
そして、どんな願いごとなのかは秘密のままなのです。気になる。
最初は、切実な願いで頭が一杯だったのに、腹痛で現実に引き戻されていて、しまいには望み捨てれば腹痛が治るのでは?と思うところなどアルアル!と思いました。

【女方】
野郎だらけの三角関係。ですが、その一角を担っている新劇演出家は、全く女方に恋愛感情を抱いておらず、むしろ嫌っています。
女方に食事に誘われたことを、芝居の話で対決するためだと思っています。
演出家との食事に向かう女方を見て、増山は幻滅したのです。
舞台の外でも幻影が崩れることがなかったのにあっさりと。

【憂国】
エロスと切腹の話。二二六事件の外伝だそうです。
切腹の描写が凄まじく、グロ耐性のない私はビビって飛ばし読みしていまいましたが、「いや、ここが重要なシーンだろう」と思いちゃんと読み直しました。

【月】
ニックネームの由来が睡眠薬の名前というのが、なんだかカッコイイと思いました。
当時の若者言葉をふんだんに使った作品です。
三島さんはこういうのも書くんだーと思いました。(上記の「卵」の時も思いました。)
コカ・コーラで酔っ払うって…。気分次第でトべるんでしょうか。
印象に残ったのは、若者三人の以下のやりとりです。

「わしは死んだ。わしは死んだ。」とピータアが体を慄(ふる)わせて、ぐったり坐ったまま、老人の声色で言った。「わしの遺産は二十億あるが、みんなツウィスト・パーティーにつかうがいいよ。この教会も買ってしまいなさい。わしの遺骸の口からは百合が咲き、百合からはヘリコプターが飛び出したのだ。ヘリコプターは広告を撒き…」
「私はその広告を拾ったわ。泥だらけで、ろくすっぽ字も読めない」
闇の中からハイミナーラが言った。
「その広告にはこう書いてあったんだ。人間洗濯機、月賦販売、完全な絞り器つき、ってね」

このような、意味不明でナンセンスな会話って好きです。

【その他の感想】
この本のどこかに、腋と腋毛に関する描写があったと思います。
確か三島作品「仮面の告白」でも腋毛描写がありました。
腋毛になにかこだわりが…?

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/11/18(日) 07:40:26|
  2. 読書感想文(小説)

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