野良箱

同人漫画サークル

乙一「きみにしか聞こえない」

きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫) きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫)
乙一 (2001/05)
角川書店

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3本立ての短篇集。

あらすじ

【きみにしか聞こえない】
友達がおらず、ケイタイをもっていない少女は、頭の中で理想の携帯電話を思い描く。
ある日、頭の中の携帯電話が、鳴った…!?

【傷-KIZ/KIDS-】
暴力沙汰を起こした「オレ」は特殊学級に入れられた。
そこで特殊な能力を持つ「アサト」と出会う。

【華歌】
列車事故で心に傷を負った「私」は、病院で「少女」と出会う。

【途中までネタバレなし感想】
「きみにしか聞こえない」は、映画化されたそうです。
短編なので、映画の尺が余るんじゃあ…。きっとなんらかの工夫やアレンジがしてあるんでしょうね。
よく出来た話でした。
人と上手く話せない。社交辞令や嘘・冗談を真に受けてしまう。
真面目な性格ゆえの不器用さがリアルに表現されていたと思います。

「傷」は映像化すると、画的に痛々しそうです。
絶望の中に希望の見えるお話でした。
もの凄く深い友情だと思いました。

「華歌」は、映像化できたとしても、文章で読むのとは印象が変わりまくるでしょうね。
母親への憎しみと愛情がせめぎあっていますね。
良家の子供も大変です。

【以下、ネタバレあり感想】


【きみにしか聞こえない】
頭の中のケータイは、時間差で伝わるというのが面白かったです。
さらにその時間差の設定をうまく使ったストーリーでした。

ユミの正体に全く気付きませんでした。
数日間どころじゃなく数年単位でリョウとユミ(大学生になったリョウ)の脳内ケータイはズレていたんですね。

ユミが数年前に好きになった相手というのは、シンヤのことだったのですね。(?)

野崎シンヤは、フランクで話し上手なように読めましたが、頭の電話を使っていない時のシンヤもまた、リョウと同じように人間関係が上手く築けないタイプなのかもしれません。

ユミが「シンヤに会おうとしたらシンヤ死ぬよ」って教えなかったのは、起こってしまったことを受け止めた上で生きていこうという気持ちからなんでしょうか。ラジカセと一緒に。

【傷】
全身の傷を分け合うとはなんという友情。
いくら友達でも、傷を半分引き受けようなんて思わないですよ。

マスクのお姉さん、シホ逃げちゃいましたね。
一旦焼けどが治ったのに、また戻すのは嫌なんですね。やっぱり。
どんなに心から打ち解けたようでも、裏切られてしまう少年。

アサトの背負った心と体の痛みは相当なもののようですね。打たれ強すぎ。
「オレ」の父親に傷を移転させてると思いきや、父親の傷すら自分に移転させてたんですね。
アサトは全然いらない子じゃないです。

【華歌】
ああー騙されたー。

一人称が「私」で、「~だ」「~である」口調なので、最初主人公は中年の男だと思っていたんです。
そしたら挿絵が出て、若い美形の男が描いてあったので、それを主人公だと思い込んでしまいました。
中川をおっさん、ハルキを少年だと思ってました。
車後部座席の男女の挿絵を見て、女の方を「里美」男の方を「私」だと思いました。

最後まで読むと、「私」、中川、ハルキが入院しているのは産科病院で、3人とも子供が産めない体なのだと分りました。
君達女だったのかー。
叙述トリックですね。「男と思わせておいて女」というパターン。
(別にトリックじゃなくて、勝手に勘違いしただけかもしれませんが。)

ということは、「里美」が挿絵の彼なんですね。
確かに封筒を手にしているし、文章に沿っています。

それと、少女の顔を持つ花の正体も「自殺したミサキの生まれ変わりで決まり」と思っていました。
そしたら、ミサキと三上の子供だったんですね。
そうだとは、全く想像してませんでした。

この話は、母と娘の悲しい、でも愛情溢れる物語だったのですね。
  1. 2007/07/24(火) 07:14:05|
  2. 読書感想文(小説)

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