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映画「KINGSMAN‐キングスマン‐」感想

【あらすじ】
洋服の仕立て屋「キングスマン」の裏の顔は、国際独立諜報機関だった。
所属するハリー(コリン・ファース)は、スーツに眼鏡、傘、指輪、ライター、ペンに模したさまざまな秘密兵器で戦うエージェントだ。
ある日、街のチンピラで無職の若者エグジー(タロン・エガートン)は、ハリーによって見出され、「キングスマン」の一員となるべく教育を受けることとなる。
IT長者ヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)が企てる世界規模の陰謀を、「キングスマン」は、止めることはできるのか。

【途中までネタバレなし感想】
大変面白かったです。最後の方は、ずっとニコニコ顔で見てました。こんなので笑ってしまうのだから、人間の心にはあらかじめ残酷なものを楽しみエキサイトする回路がセットされているのかもしれません。

スーツの男性が紳士的に派手な戦闘アクションをするのが見たい人にはぜひおすすめです。

映像、美術、演技、音楽に申し分なく、そういった点に関するマイナス事項がないためストレスを感じないまま多くのアクションを楽しむことができました。

R指定で痛そうな場面はありますが、感覚が麻痺したので、もっとやれ、という気持ちになりました。

マイ・フェア・ジェントルマン。服装の重要性を改めて認識。
スーツをフルオーダーしてみたくなります。

ハリーは、エグジーの亡き父親と旧友なので、二人は擬似親子に見えます。
本編の途中で気付いたのですが、予告に映っているエグジーを、完全にハリーと見間違えていたことが判明しました。
記号性の強さもありますが、立ち居振る舞いが(カメラに映った角度もあいまって)、そっくりだったのです。

デバイスの表現は、タッチパネル式の操作が主流でした。
国内外問わず、映像作品に登場する科学捜査班やスパイのつかうガジェットは、操作のたびにやたら効果音がします。
もし本当にこのような諜報部が存在したら、わざわざ事あるごとに電子音など出さず、余計なエフェクトもつけないと思いますが、この映画は、既存の、特に昔のワクワクするようなスパイ作品を引き合いに出したオマージュになっていましたから、ちょっとバカなくらい突き抜けた方が、楽しいかっこよさが出てくるのでしょう。
子供が憧れ真似したくなるような面白さです。R指定なので見ることを推奨されていはいませんが。

コンピュータやサイバー空間、ITの表現といえば、緑色のちらついた半透明の映像、一文字ずつ高速でタイプライターのように表示されていく文章、と、どこかで相場が決まっていたようです。

マーリンやアーサー、ランスロット、ガラハッドというネーミングから、「アーサー王と円卓の騎士」をモチーフにしていることは分かるのですが、元ネタに詳しくないため、各配役との関係性は読み取れませんでした。
昔見たディズニーの「王様の剣」というアニメ映画では、マーリンは魔法使いでした。
今作でのマーリンは、「キングスマン」の頭脳、ハッキング、操縦、通信、戦闘、人事、新人教育担当のスキンヘッドでした。
007のQに服装と立場が似ています。

やたら金属質な足音の両足義足美女ガゼルは、その義足自体が鋭利な刃物でありエゲツない戦いをしますが、常に上品で冷静です。
ストレートの黒髪や、メイド服を極限までシンプルにし喪服も兼ねたようなパンツルックもあいまって存在感がありました。
誰もその容姿につっこまず、奇抜さに言及しなかったので、偏見の少ない寛容な世界なのかもしれません。
彼女の場合、生活の上では何不自由なく、機能としては生身よりパワーアップしていますし。

英国的な紳士服、アクセサリーの正反対として配置されているのが、アディダスのジャージ、野球帽、スタジャン、スニーカー、その他ヒップホップ系・B系ファッションなのだと思います。
エグジーとヴァレンタインは、服だけ見ると同じ勢力です。

リミッター解除の色気と爆発の浪漫は、適切に抑制が効いているからこそなのかもしれません。

 kingsman


【以下、ネタバレあり感想】

教会で一般人を大量殺害していくハリーは、殺人マシーンのようにコンパクトな動きで素早く人々の息の根を止めていきました。
もしあの場にハリーがいなかったら、攻撃衝動と抑制の神経に作用する信号の効果は少し分かりにくかったかもしれません。
殺しのプロが制御不能のバーサーカーと化した結果、おそらく罪がなく、ちょっと偏った狂信者であるだけの人々が死んでしまいましたが、ハリーの乱れる前髪、返り血、躍動するズボンの皺、腹シャツチラ、そして、一心不乱な様子が眼福だったので、暴走してくれて良かったです。
過去に世界で起きた、謎の暴徒化、全滅も似たような実験の結果だったのでしょうか。

ヴァレンタインが小規模近距離実験を行う際、教会を出て行こうとしたハリーを信徒が見つめるのは、神に背を向けた男、神父(牧師?)と対極の、もう一人のカリスマ、悪魔、のような構図でした。
その後、皆殺しが起こったわけですが、人間の持つ魔性が全開になる暗い魅力がありました。

ハリーが、「悪魔を崇めよ」(「讃えよ」や、「敬え」だったかも)と言ったのは、指導者の扇動文句や賛同する信者達を見て、真反対のことを言いたくなったんですかね。
ハリーはもともと怒りの沸点が低めなようで、エグジーと飲食店にいる時、援助交際がどうの言われたらカチンときて皆やっつけてしまいました。
煽り耐性が低く、売られた喧嘩は買ってきっちり勝つ紳士。

ハリーは、我に返り、教会から出たところであっさりヴァレンタインに銃殺されてしまいました。
彼がこのような所で死んでしまうのはとても意外性があったので、事前に知らなくて良かったです。
頭に弾が当たっただけなので死んでいない可能性も十分にありますが。続編で途中から出てきそうな予感。

あの惨劇について、劇場で見ていた私より正しいリアクションをしたのが、ハリー視点の生中継を見ているエグジーです。
彼は、冒頭から、狐を避けて自損事故を起こすなど、性根の優しい青年です。酷い、見てられない、というつらい思いをしたでしょう。
マーリンも焦っていました。
実験開始時は、ハリー以外全員がヴァレンタインサイドの私服戦闘員なのか、だから殲滅するのも計画の内なのか、と考えましたが、マーリンの様子を見て、これは想定外の事態なのだ、と気付きました。そしてヴァレンタインの装置が持つ効果に思い当たりました。

エグジーは、王を守る騎士ではなく、王そのものになったように見えます。
アーサーの持っていたスマホをパスとしてパーティに参加しましたし、偽名はキングでした。
これは、コードネームがアーサーであるあの男性の本名だったのでしょうか。
だとしたら、「私はリアルに名前がキングなのだから、アーサー王から取ってつけたらかっこいいんじゃないかな」と名乗った可能性もなくはないのでしょうか。歴史ある組織で、先代のランスロットもいるようなので、違う気がしますが。

ハリー亡き後オーダーメイドのスーツで身を固めたエグジー。
最初は、線が少し細いし、何より若すぎる。もっとほうれい線ができるくらいには歳を取らないと貫禄は出ないよ。と感じましたが、警備兵との戦いでは、立派で速度と重量感のある紳士に見えました。様になっています。
ここが、映画予告の時点でハリーだと思いこんでいた箇所です。
エグジーだとは分かっていても、ハリーの面影があります。

「キングスマン」新人選抜の最終候補に残るまで、さまざまな訓練をしたにしても、驚異的な身体能力と戦闘センスです。
エグジーは、物語序盤で、すでにその片鱗を覗かせていました。
車をその場で回転させた後、バック走行で高速移動していました。空間把握能力や状況判断、動体視力などが総合的に優れているのでしょう。
また、怒れる義父(?母の彼氏でボス)や仕返しに来たゴロツキから逃げる際、建物の塀や壁を渡りジャンプしながら敵をまきました。

エグジーは、犬のJB(ジェームズ・ボンドではなくジャック・バウアー)を撃てなかったため、「キングスマン」不合格となり、結果、新ランスロットは女性候補生ロキシーに決まりました。
この組織については、皆男性という規定があっても服装の性質上差別的とは取られにくいとは思いたいのですが、昨今の映画では人種や男女比に気をつけないといけない事情があるみたいですし、「キングスマン」なのにウーマンが審査通過という盲点になっているので良いのではないでしょうか。
高所恐怖症の気があるのに、単独で衛星近くまで飛ばされるなんてランスロットの任務はつらいです。

一人一匹子犬を選ばされた時点で、これはいつかこの犬を殺すか食べるかするテストがくるな、そうでなくても犬は死ぬだろう、と身構えてましたが、予想は外れました。

マーリンのスパルタ教育は恐ろしく、命に危険のあるものばかりのようですが、実は死者を出す気がないというドッキリ仕様になってました。候補生本人にとって限りなく真実に近い状況であれば、いつか問題へ直面した時どうするか、本性が先取りで把握できるのです。

エグジーは、一貫して仲間思いで動物に優しい子です。人を勇気付けたり、安心させたり、結束させる力を持っています。
こういったところが、騎士より王にふさわしそうです。

人類は、地球に対するウィルスだから数を減らさなくてはならない。この動機は、ラスボスが世界を滅ぼそうとする理由ランキングで上位に入っていそうです。
なんでそれに乗せられたのかアーサー。

選ばれし世界のVIPが次々と頭をふっとばされるシーンには笑いました。
不謹慎なブラックユーモアを越えたグロなんでしょうが、汚い花火が音楽に合わせて上がるのは愉快です。褒め言葉として、バカじゃないの?この監督、と言わせていただきたいです。
「威風堂々」もこんなつかわれ方するなんて困惑しているでしょう。

暴力的になる信号は、首に埋め込まれたチップで無効化されているので、とても穏やかに、頭を爆発させてます。
一つのチップに、二つの機能を入れた結果がこのざまです。
エグジーは、水没実験時にマジックミラーを割った時といい、機転が利きます。

マーリンは大きな銃が似合います。立場は、非戦闘員や裏方みたいなのに、バリバリ武闘派って良いですね。

エグジーと義足のガゼルは、ダンスホールで踊っているような戦い方をしていました。
足の刃物が武器であるガゼルを靴先の刃物で倒し、ガゼルの義足で上司(愛人でもある?)ヴァレンタインを殺し、ハリーがヴァレンタインから受けた言葉をそのまま伝えたという展開は、きっちり意趣返しになってます。

世界中で凶暴化した人々が乱闘を繰り広げる光景にワクワクしました。
昔コロッセオで人や獣が殺しあうのを楽しんだ観客ってこんな気持ちだったのでしょうか。
残虐性を引き出し解放させる信号が、映画の枠を飛び出し、観客に届いたような心持ちでした。

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  1. 2015/11/03(火) 04:32:53|
  2. 映画感想

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