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同人漫画サークル

合山究「中国の古典 清代清言集」感想

【概要】
中国最後の王朝清代のアフォリズムを原文と日本語訳(※)の併記で編集した本。
※現代語訳、かな交じり書き下し文の二種。

【感想】
古典というわりに、日本でいう江戸時代初期~明治末期に該当する、思いのほか新しい小品群でした。

当時は、膨大な数の無名な作家によるアフォリズムが発生しては、後に残らず消えましたが、わざわざ収集していた人がいたお陰で、その一部を今日でも読むことができるようです。

アフォリズムというのは、警句、名言、金言、格言、風刺の類である短文のことを指します。

人との付き合い方や哲学、心得、といったいかにも役に立ちそうな作品の中に混じった、以下の文がもっともインパクトありました。

誰かのあげている凧の糸が切れるのを見ている。なんと愉快なことではないか。

教訓は感じられないし、意味が分からないけど、勢いと、臨場感、鮮やかさがあります。
不亦快哉(また快ならずや。→なんと愉快なことではないか。)が末尾につくシリーズがたくさんあります。
何度も黙読すると具合が悪くなりそうなのでその部分だけ読み飛ばそうと試みましたが半分くらい失敗しました。
似たような形式の作品には、「なんと哀しいことではないか。」で締められるものもあります。

蟹を煮ると、蟹が釜の中で、がさがさと音をたてる。なんと哀しいことではないか。

たしかに哀しいですが、なんでわざわざ文章にしたのか着眼点がおかしいので気に入りました。

原文に含まれる単語の訳は、一作品ごとに解説されています。
字面だけみて直訳したらまるで意味を取り違えそうなものがありました。

機械―悪だくみ。悪賢い。ペテン師。策謀家。
工夫―時間、暇。
実際―最も充実した状態。充実感のあること。
痴―とりこになる。夢中になる。
青山―墓地。
要死、快哉―若い女性がよく口にする「まあ、いやあねエ」などに近い言葉である。直訳では、「死んだら、うれしいわ」の意であるがそんな意味ではない。

漢字一文字ずつについて意味やニュアンスを知っている分、その組み合わせで日本語とは微妙にズレた訳になっていると楽しいです。
「解語花」は、言葉のしゃべれる花、美人のこと。とありましたが、娼婦、芸妓、遊女をあらわしていることが多いみたいです。
「摩登」は、モダン(modern)の音訳です。カタカナがないので外来語に漢字を当てるんですね。
こちらとよく似た派生をしている言葉としては「料理」がありました。物事をかたづける、処理する、ということを表現しています。
食事を作ることではなく、「さて、こいつをどう料理してやろうかな」という使い方だと思えばしっくりきます。

これまでの説明だと何の本だか分からないでしょうから、以下、アフォリズムらしいものを引用します。

歌は舞の声であり、舞は歌の形である。

徳を身につけるのは、いつも困窮の中においてであり、身をほろぼすのは、しばしば志を遂げたことによる。

有形の落し穴は獣を捕えるだけであるが、無形の落し穴は人を害(そこな)うのに十分である。

英雄物語は一服の興奮剤であり、聖賢の箴言は貴重な処方箋である。

董偶は、弟子たちが勉強する時間のないのに大変悩んでいるのを見て、次のようにいった。「三つの余りを利用しなさい。冬は一年の余りです。雨の日は晴れた日の余りです。夜は昼の余りです。」と。

他、美人を題材にした作品が多かったです。ラッキースケベで腿や裸を偶然のぞいてしまったというものから、自然に例えた詩的なものまでさまざまです。

時代や国、文化背景が違っても、人々の考えることはそう変わらないということが分かりました。

テーマ:感想 - ジャンル:小説・文学

  1. 2015/11/01(日) 22:25:54|
  2. 読書感想文(小説)

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