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同人漫画サークル

フリーゲーム 小麦畑「デンシャ」クリア

同人ゲームサークル「小麦畑」さんの「デンシャ」クリアしました。

概要とサンプル画像、ダウンロードは作者様のサイトからどうぞ。

【あらすじ】
電車で田舎のおばあちゃん宅に向かっていた少年は、気づくと祖母宅にいた。
窓の外ではモノ売りの声。金のない少年は、代わりに無料のモノを貰ってえもいわれぬすごいことになる。

【途中までネタバレなし感想】
ホラー要素はないということで開始したところ、ド頭から驚かされ「ホラーないって言ったじゃないですかー!」となりました。
作者さんの好きな劇団オマージュということで実際のセリフも引用されていますが、それ以外はオリジナルのようです。

大フォントの遣い方と音、映像、システムのデザイン性が良く非常にインパクトあるもので、短時間でさまざまな感情を動かされる良いゲームでした。

まずはダウンロードしてオープニングまで閲覧することを推奨します。
混乱しつつも惹き込まれることうけあいです。
右も左も分からないままゲームを進めるとすぐに「なにこれ!?」の連続が来ますので、2車両分くらいそれを味わえばエンディングまで見たくなるんじゃないでしょうか。

マップ自体はさほど多くありませんが、その連結方法が独特です。

昭和、レトロ、戦前、戦中、戦後、電車、人生、掛詞、ラジオ、歌謡曲、ノイズ、ノスタルジー、お面、夏へ興味ある方におすすめします。
今の所、外国語翻訳の予定がないのも頷ける内容です。
韻踏みならまだ再現可能でしょうが、同音異義語が多く、文字で表現されるため、他の言語に置き換えるのが非常に難しいです。ひらがな漢字カタカナ英数字混じってますし。
(すでに言葉遊びや造語の多い外国文学や童話など、日本も含めて翻訳家ががんばって表現してますけど、ネイティブの人ほど音と意味、形全てでそれを実感できないんだろうな、というあれの、さらに複雑版。)

攻略上のパズル要素と、しだいに明らかになるストーリー性、ちょくちょく入る予想外の演出で飽きさせません。

ニコニコ動画にプレイ実況が複数あり、どれも面白いのですが、少しでも興味を持ったら一旦動画を止め、ご自分でプレイなさった方が良いかと思います。クリアしてから実況の続きを。

初見の衝撃は二度とありません。が、二回目の衝撃っていうのは別にあります。
意味が分からず驚いた一回目。意味が分かるからこそ驚いた二回目。

エンディング前でずっと変な詰まり方をしていて、何度もネットで攻略を見ようとしたのですが、自力で行けて本当に良かったです。
作者様の想定したプレイ時間を大幅に超えてしまいましたが、どんなに鈍くても必ずクリアできるようにできています。
エンドロールに一工夫あって、言葉ではなくもっとダイレクトにメッセージが伝わってきました。

【以下、ネタバレあり感想】






電車に乗ってるはずが、祖母宅の和室に寝ていて目覚め、窓の外から声がしたと思ったら電車の中だった。っていうのが、すごく夢の中感あったのですが、それもそのはず、夢、ではあったようです。

しかし、祖母の精神や人生とはリンクしている上、少しだけ干渉でき、また最後は祖母に会えたんだと思います。

号車数は祖母の年齢だったんですね。
西暦とあわせると、1935年生まれで、3歳のとき南国にて赤い花が好きになり、4歳でマラリア発症・母死去、1941年6歳でちびくろサンボを読み、真珠湾攻撃、第二次世界大戦、1945年10歳の時敗戦、ということになりそうです。
彼女が12歳だった1947年は、ちょうど新制中学が始まった年みたいですし、しっかりしてます。
「世界の終わりが」「どこかで大きな爆発が」みたいなセリフのあった51号車は、1986年のチェルノブイリ事故とハレー彗星らしいです。

救護室や病院という印象のあった10号車ですが、開けてみたら敗戦でした。鍵が二重に掛かっていましたし、重い出来事だったのでしょう。
子供誕生と孫誕生の部屋に花を飾ることで手に入るプレートの番号の車両は、実在のデパート火災がモデルのようです。
検索してはいけない、後悔する、と聞いたのでまだ確認していませんが。
祖母は、ここで夫(レストラン給仕時代の常連、バターたっぷりオムレツが好きという建前で来ていた)を亡くしたんでしょう。
各車両で条件を満たさないと行き来できず扉が熱いっていうのは、デパート火災が人生最大のトラウマだったからですかね。

どんなに世界の終わりが来たようでも、続いていく、自分がいなくても、という感覚を持っているのは、敗戦、デパート火災、自身の出産、孫の誕生を経たからなんでしょうね。恐怖心はあまり感じられず、達観しているというか、寂しさと諦めと穏やかさと少しの希望を感じました。脇役に徹した無名の一個人ですが、波乱万丈のメインヒロインでしたおばあちゃん。

戦争じゃない時代も生活や心は戦争みたいなもんですね。嬉しい楽しいは時々。
激動の時代に翻弄された人生ですが、それとは無関係な所で落ち込んでいる、引っかかっている事がありとても人間らしかったです。
夫が不在の中、花瓶に好きな花もなく出産した事。息子嫁(実の娘説もある)の気に入らない事をしたんじゃないかと後悔している事。ネックレスの真珠がひとつ足りない事。
これらについては、プレイヤーが少年を操作することで少しだけ解決します。
病室に花を飾り、ネックレスを完璧にして息子嫁の結婚式でつけてもらうのです。(実際には真珠が足りないこともあり渡せなかったらしい。)

71号車の合言葉は、「サヨナラ」でした。
祖母は、生きていたけど亡くなり、そして体はまだあったけど火葬される所だったようです。
実際には病室で昏睡状態になり息を引き取っただけで、火葬は、少年とその父が到着してからかもしれませんが。
どうりで、18をひっくり返して81にしても移動できなかったわけです。

死や葬式はとても悲しく怖いものなのに、西洋風の華やかな会場で踊って祝われ出発進行、と前向きに押し切られると、こういう旅立ちなら不安でないな、と晴れやかな気持ちですらありました。

間髪いれずに始まるエンディングのクレジットロールは、自動ではなく手動でした。
表現できない感覚で、良い意味の鳥肌が。
主人公少年を中心に時計が回り、彼自らの電車を、プレイヤーが操作して歩くのです。
0号車は、祖母の電車と共通しています。母の電車にもあるでしょう。少年の誕生した、黄色い花の飾られた病室です。
祖母の電車と違う点、それは、過去の車両に戻れない、ということです。
前にしか進めない、それしか出来ない、というイメージは、オープニング、そして、モノノケのセリフにもありました。
それを、ゲームならではの方法で表していました。
また、ただじっとしているだけでは、号車もクレジットも進んでいかない、って言うところが意味深です。

2回目をやり直して驚くのは、冒頭から、合言葉「サヨラナ」がかなり強調されていたことです。全然気づきませんでした。
オープニングの最中、窓の外を流れる数字が逆に進んでいます。これは遡っていることを表してるんでしょうね。
6号車としてラジオが鳴り始めてからは、他の車両と同じ背景の流れ方になります。

ばーちゃん、お疲れ様でした。サヨナラ。

テーマ:レビュー・感想 - ジャンル:ゲーム

  1. 2014/12/05(金) 05:12:36|
  2. ゲーム

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