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細田守監督アニメ映画「おおかみこどもの雨と雪」感想

おおかみこどもの雨と雪 オフィシャルブック 花のようにおおかみこどもの雨と雪 オフィシャルブック 花のように
(2012/07/23)
「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

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【あらすじ】
人間の母は、おおかみおとこの父と恋をした。
二人の間には雨と雪という子供が生まれた。
やがて一人となった母は、子育てに奮闘する。

【途中までネタバレなし感想】
事前情報なし、ポスターのキービジュアルしか知らない状態で見ました。

予想外の始まり方でした。物語の舞台や年齢設定など。

もうすこし母性本能への信仰とかマザコンっぽい話かと予想していましたが、禁忌に触れそうなレベルで別のアブノーマルさを感じました。

音楽も映像とのリンクも美しく、あらすじから行って静的で地味な絵になりそうなものを、アニメーション動画の魅力いっぱいに表現しておられました。

別におおかみと人間のハーフじゃなくても、ちょっと世間から浮き気味の家庭にはありそうな立ち位置の主人公一家。
まだ、お父さんと子供が人間じゃないだけましです。

作中の一般人。あれが本当にフツウならそっちが狂ってる、と思わせる言動がいくつかありました。

人情の暖かさもふんだんに描かれています。
母が路上にへたり込んだ時、無言で傘をかけてくれた顔も分からないモブキャラなどが良い味出してました。

お子様にはあまり見せたくない場面が複数あります。
ファミリー層向け一般映画と見せかけて、抑圧された性癖や怨念がふんだんに織り込まれてそうな作品でした。
女性らしさ、男性らしさ、というジェンダーにも関わる内容も含まれます。

全員、声が合ってました。
おとうさんは、とても格好良いです。

雨と雪は、対照的な性格の子供ですけれども、成長するにしたがって変化するのが面白かったです。
時間経過の演出も工夫されてました。

【以下、ネタバレあり感想】

赤ちゃん時代から乳首が省略されることなく描かれ、ピンク色であることが印象に残りました。
様々なキャラクターが、上からリバース(嘔吐)します。
↑この2点は、別にネタバレではないのですが、サイトトップに置いておくのが憚られたので格納しました。

都会の大学に通う女子が妊娠する話とは存じませんでした。
狼男も、車の免許を取って運送業で働いてるし。
意外でした。そのようなわけで、冒頭から伏せなきゃいけない気がして、ネタバレなしゾーンには書けませんでした。

おつきあいをはじめ、お父さんが狼男であると明かした後、セクシャルな場面に突入するんですけど、たしか花の部屋でしたね。しかも、カレは、人間形態じゃなくて、狼の姿と言う所がヤバいです。
人間の男女でも生生しくてやですけど。
父の遺影の前で狼と交わる娘。
何重にも倒錯的なシチュエーションですね。

妊娠発覚を喜ぶ二人。

狼男は、ふつうの家庭を持つという所にあこがれてました。
お帰りと言ってくれる人のいる家。
人間でも、結婚に縁のない者にはファンタジーですけどね。
狼という障壁があるだけ、理由になっていて羨ましいです。

おとぎ話風に描いてますけど、お父さんが人間だったとしても、未婚で、非嫡子、学生結婚って、世間の目が気になる事態です。
・・・狼男、免許が取れ就職できてるってことは戸籍があって、ちゃんと入籍したんですかね。なら嫡子ということになります。(大抵の証明書は、住民票などが必須)
先の事をちゃんと考えて妊娠するような交際をしていたのか分かりません。ご利用は計画的に。
花は、両親がいないようですが、親戚づきあいもない天涯孤独ということでよろしいですか。
家庭内で産み育てても、何かとバレそうですけども。

別に、狼の子供が生まれて医者が驚いても構わないと思うのですが。
困る事は沢山ありそうですけど。
例えば、研究施設に引き取られて研究対象にされる、マスコミが殺到する、識者に叩かれる、好奇の目にさらされる、各国に遺伝子争奪戦をされる、など。
狼と人間のハーフを世界で初めて正式公表した、という物語になるとテーマの本質から外れ、普遍性がゼロになりますしね。

とにかく我が子を不幸な目に遭わせず、なるべく、ふつうの、人間、もしくは、狼として育てたいんでしょうね。

子供を隠しときたいのは、親心や狼人間の秘密を守り、ささやかに暮らしたいのだ、という理由以前に、自分自身の恥からくる後ろ暗さがあった可能性は…花さんならないですかね。
異種間で交際した挙句、獣姦で孕み、出産した。というのは事実としてありますから。

人間と人外のハーフという設定は、古今東西数多ありますけども、この映画の場合、時代設定や舞台が現代日本なため、予防接種、虐待疑惑などの問題が発生してる分、危険です。おとぎばなしみたいに、愛し合う夫婦の元にどこからか子供が運ばれてきました、というファンタジックな雰囲気がないので、授かる過程も上記のとおり、即物的な想像がなされやすいです。

狼男のお父さんは、雨が生まれたあと、原因不明の死を遂げます。川に狼形態で落ちており、ゴミ袋に入れられ回収されました。
そこから花一人による子育てがはじまります。
(都会の川で狼の死体が発見された。そばには、泣き崩れる女がいた、というだけでも十分ニュースになりそう)

狼と人間の子供、両方の姿になれるんですね。自分の意志でもコントロールできますけど、感情の起伏によって制御できないことがあるようです。
ロリケモ・ケモショタ感は、そこそこ強いです。
健康的なパンチラと全裸。
子役演技うまかったですね。
ペット禁止物件で遠吠え、赤子の鳴き声に苦情、など様々な息苦しさがあり、もう都会にはいられない、と田舎に移動します。近隣住民や役所の人は、厳しすぎる悪役のようでありますが、花一家の騒音や、不自然な対応に迷惑をこうむり手を焼いている被害者でもあります。

狼男の財布か何かに山の写真が入ってたので、彼の地元かもしれない所です。

子供が二人生まれるくらいの期間一緒にいたのに出身地もその他諸々知らないままとは、一体どんな会話をして過ごしていたのでしょうか。
それと、二人は、将来設計や展望を語り合っていたのか不明です。多分、してない。
だから、花は一人で本と向き合い勉強するしかないのです。
自分でも反省してましたが、狼男の彼がどうやってここまで育てられ生き延びてこれたのか、もっと聞いとくべきだったのです。そしたら、子育ての指標になりますのに。
インターネットはあまり使ってませんでしたっけ。
花が大学生であったのは、13年以上前でしょうから、まだ20世紀だったのかもしれません。

花は、ボロイ家を一から改修し、畑を作っては失敗しながら暮らします。
こっちの田舎でも、予防接種がある思うんですけども、クリアできたのですか。
人前で狼化しないようになったからやり過ごせているんですかね。
やはり戸籍は作ってあり、転居届などを村役場に提出したということでよろしいでしょうか。
学校に通うにも、花が自然保護員の仕事を始めるのにも書類必要ですものね。

韮崎のおじいさんは、登場した瞬間、頑固じじいの仮面をかぶったツンデレだと分かりましたよ。

村では協力者も増えて良かったですね。都会同様、こちらでも一人かと思ってましたよ。
同年代のママ友も。…それができるなら、都会にいるままでも公園デビューできてたような気もします。
東京の人は案外冷たくないですよ。ド田舎と首都、両方住んでたことありますけど。

これ、はじめから、うちの子供はおおかみこどもです。みなさんの前で変身をお見せします。
とやったら、どうなってたんでしょうか。
通報されて施設、か、忌み子だと嫌われて追放ですかね。
そこまで、古い因習とかにとらわれてたり、迷信深い人達でもなさそうなんですけど。
かえって、誰も信じてくれない、手品だ、詐欺師だ、という扱いを受ける可能性も。

こどもが半人半狼だと、どうやって隠すか、っというのがスリリングかつコミカルな魅力につながっています。
狼=農作物を荒す敵=悪役、っていうのは前提としてありますし。

狼携帯で雪山を駆け巡る姉弟。それに遅れを取らずついてゆく花さんの足の速さは異常。
世界陸上に出られるのではないでしょうか。
ファンタジー部分として幾分デフォルメされているんでしょうけど。
ココや、雨漏りの当たりは、効果音と動き、音楽が一体となっていて綺麗でしたね。

弟の雨が、川に転落して溺れます。
助けてくれたのは、姉の雪でしょうけど、私、てっきり、都会の川でお父さんが死んだ原因は、これだ。
時空を超えて未来の息子を助けるために川に飛び込んだんだ。と勘違いしましたよ。
一瞬ですけど。
↓その時のイメージ絵
おおかみこどもブログ用


花にとっては、川はトラウマものですね。
夫が死に、息子も危なかったのですから。

どうやって手続きしたのか不明ですが、姉の雪も弟の雨も小学校に通い始めます。

それまでは、虫や小動物を殺してコレクションしていた雪ですが(そのおかげで、花の畑は、豊作だったのだと思う。)
他の女の子がアクセサリーなど綺麗でかわいいものを集めているということで、どんどん女の子らしくなっていきます。
花がワンピースを作ってくれましたし。

現実には、男の子っぽい遊びやゲーム、アニメ、おもちゃが好きであったり、宝石類の面白さ美しさが全く分からない女子はいます。そのまま大人になることすらよくあることのようです。
それでも、雪は、かなりおしとやかに演じられるようになっていきます。

やんちゃ娘で、かなり狼寄りだった雪が人間の少女になっていく一方、泣き虫で臆病の人間よりだった雨は、お姉ちゃんに守られるいじめられっこ弟、ぼっち、不登校を経て、野生狼への道を歩んでいきます。

学年が進むごとに、二人の人間⇔狼度合が逆転。

雪が人間ルートを選択する最大のきっかけは、転校生・草平との一件ですね。
初っ端から草平に「獣臭い」と言われてショックを受けた雪は、彼を避けるようになります。
草平がクラスの中心的ムードメーカーになっていくのに、彼を無視しつづける雪。
逃げる彼女を追い詰めた結果、草平は狼化した雪に爪で耳を攻撃され怪我を負ってしまいます。
イジメ的な障害事件の加害者になってしまう雪。
草平のお母さんは、花と雪への謝罪を要求。
草平は「狼がやった」と言います。あれは、自分を傷つけたのは狼であって、雪ではない、という体で話してましたが、実際には、雪が狼に変身したのを見たようです。ただし、誰にも言わず隠し通した。なんと漢気溢れる子供でしょうか。元から、勘と嗅覚いいんですかね。

事件直後のクラスメイトの反応には、不愉快なリアルさありました。「先生、草平くんはどうしたんですか」「誰がやったんですか」…「やっぱり雪だと思ったよー」。あの流れ。そういうのに乗れない輩は、人間だとしても教室から浮いちゃいがちですからね。
この場合、内心そう思っても追及しない方が誠実ですのに、殆ど確信している答えに向けて根掘り葉掘りの誘導質問。(気を使われ過ぎても当事者がいたたまれないからさじ加減が難しい)。
彼らが子供だから素直に口に出してしまう、とか、ついいじわるしちゃうの、とかいうレベルではない気がします。アレは、大人になっても続く閉鎖共同体、あるいは集団心理特有の空気なのではないでしょうか。

でも、もしかしたら、現実の小学校は、今やこの映画でいうおおかみこどもサイドの方が多数派になっていたり?久しく関わっていないので現状は存じません。

学校に行けなくなった雪の元に通い続けるのが、被害者本人の草平というのがいいですね。
彼は、身も心もイケメンで少し大人、かつ子供らしい所もある良い少年です。
花との会話上、狼は別にきらいではないそうですし、彼自身一匹狼みたいな生き方にあこがれているようです。
傷を負わせてしまった相手が、真っ先に許してくれいている感というのは、後々学校に復帰した時の為にも大事でしょうね。

雪は、獣臭い発言の時から、もう初恋に墜ちてるようでもあります。
嫌いだし、自分にとって危険人物であるけど、つねに意識してしまう、気になるあいつ。
隠し通したかった狼の面を、よりにもよって最も見せたくなかった相手をさらけ出してしまい、あまつさえ物理的に傷つけ血を流させた。―これは、なにかの契約めいた、呪術的恋愛のように感じます。
だって、好きな人(?)の耳に自分の爪痕ついてるんですよ。
指輪交換等よりよっぽど強固な証を刻み付けてしまってる感が、(具体例は挙げられませんけど)古い神話のようなヤンデレです。
表向きの服装や、周りに合わせた模倣の趣味とは違い、草平との淡く苦い恋が、雪を本当の意味で人間の女の子にしたように思えます。

一方の雨。彼は、山に住む「先生」の指示を受けて、めきめき野生の力を伸ばしていきます。
彼には、学校に通い勉強することよりも、ずっと大切で刺激的なことのようです。
あんなにお母さんべったりだった雨が立派になって。
声変わりもして、妙に色気ある男の子に。
髪型や服装は、亡き父親に似ています。特に、後ろ姿。
花は、自分の父親と、夫、息子を重ねて見てるように思えます。
やっぱり、ファザーコンプレックスっぽいと感じましたけど、ネット検索したら、特にそういう意見もなく意外でした。
姿は似ていようとも息子は夫ではなく、彼と自分の父はもういない。
ということで、物理的・役割的に父親の立場に近かったのが、口は悪いが花に惚れてるおじいさん、韮崎でしょうね。
第4にして実質的なお父さん。
花をしかりつけ、躾け、指導し、しかし、常に(異常なほど)見守り、ぶっきらぼうにも全力でサポートしてくれる。実際には、甘やかしまくりの。

私は覚えていないのですが、花の夫である所の狼男も桃缶好きだったようですから、同じく、油揚げより桃に決まってんだろ、の「先生」(狐)って、夫の師匠だったのかもしれません。
親子そろって同じ狐に師事しているという。
はっきり書かれていたか分かりません。

狼にならないと決めた姉と狼として生きる事を決めた弟が学校や勉強の事で大喧嘩します。
傷だらけの女の子が風呂に浸かって泣いている後ろ姿が、また、暴行を受けた少女のようで犯罪的画づらでありました。
ここで訳あって離席しまして、戻ってくるまでの展開は、後に同行者からの伝聞でしか知りません。

この間、ラストに続く重要な情報が含まれていたようです。
それは、今の山の主である先生が、けがをしてるか何か、もう長くない。だから、雨は、山に行かなきゃならない。先生の後継者になるのか、サポートに回るのか謎ですが、とにかく、その動機が描かれていたんですね。
そこ、すっとばして続き見てたものですから、何もこんな台風で豪雨の日に旅立ちを決行しなくても。と思ってたんです。
実際には、雨と先生には、もう、時間がなかったんですね。
雨は、はじめて本物の狼と対面した時、ちょっとイメージと違うというような失望や戸惑いがあったようです。
父親の記憶がないのですから、絵本などで想像を膨らませてたんでしょうね。
自分のルーツであるが実態を知らない、憧れと憐み(物語でいつも悪者だから)等が複雑に入り混じった気持ちの対象である狼男の父親。この辺がエディプスコンプレックスというやつでしょうか。

台風予報があっても休校にはならなかったのですね。
しかし、学校が途中で終わりとなり、保護者が迎えに来るまで皆小学校の体育館で待つことに。
花は、雨を追って山に入り、熊と一触即発のピンチになったり、滑落してアバラの数本でも折れてそうな瀕死状態になってました。
あの世とこの世の間、という描写としてメジャーな花畑。
映画冒頭のシーンとリンクしてますねきっと。
その向こうには夫の狼男が。
ここまで子供に尽くしても、まだ、なにもしてあげられてない、などと思っているのですね、花。母とはそういうものなんでしょうか。
小学生まで育てて急に他界されたら遺された子供どうなんの、と心配ですが、すっかり地域ぐるみで可愛がられてるから、なんとかなりそうでもあり。それと、こういう場面では、花畑の向こうで亡者が「まだきちゃだめだ!」と言うのが定石ですから、割と余裕を持って見てました。
花は、生きて帰ってきました。気を失った後、雨が小学校の駐車場まで連れて行ったので。

雪と草平は、夜の校舎で一夜を明かしました。雪は、自分がおおかみこどもであると明かします。草平もう知ってますけど。
カーテンと影の変化、草平のかっこよさと、雪の表情、声がよかったです。
階段下りる場面の鏡は、構図が美しいです。
しかし、新しい夫との間に子ができたから草平迎えに来ないとかどういう母ちゃんですか。
入院中で物理的に無理、だとしても、誰かしらに連絡が行くでしょうに。それこそ草平の新しいお父さんが来るとか。
草平曰く、オレは、もういらない子、ならしいですけど。
それと、花が来ない。何かあったのか。というのも、雪だけじゃなく、誰かしら気にしたげて。

雪はその後、進学したようです。草平とは関係が続いているんでしょうか。
花は、いつまでたっても童顔ですね。

雨、野生化してからも、時々、人間に戻って花に会いに来るのはアウトなんですかね。
狼に固定されちゃうわけでもないのですから。主に、狼として過ごし、盆と正月くらいは帰省する。それなら進学の為故郷を離れた学生と似たような感覚でいけるかも。

「雪」も「雨」も天気が「悪い」「崩れる」「荒れる」と悪い意味で使われやすい言葉です。
しかし美しく、愛好する者も多く、大地への恵みとして必要なものである、という両義的なものですから、この物語の子供たちにふさわしい名前ですね。
単純に、生まれた日の天気から命名されたようですけど。
花さんの時と、似たような法則の名づけです。

テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2012/08/23(木) 01:02:17|
  2. 映画感想

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