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浅野忠信主演映画「[Focus]フォーカス」感想

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(2000/10/06)
浅野忠信

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【あらすじ】
TV番組ディレクターは岩井は、盗撮マニア金村(浅野忠信)の取材をする。
一行は、偶然、拳銃受け渡しについてのやり取りを傍受してしまう。

【途中まで、ネタバレなし感想】
全編、取材班の持っているTVカメラの映像で進みます。映画を撮っているカメラマンと、作中のカメラマンは、同一人物です。本人は、一度もカメラには映らなかったと思います。
これは、P.O.V.(ポイント・オブ・ビュー)と呼ばれる主観撮影の手法だそうです。
また、ジャンルとしては、「モキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)」に分類されそうです。

数年前、この映画を深夜テレビで途中から見てしまったので、しばらくノンフィクション番組かと思っていました。
取材場面以外に、不自然なディレクションや、やらせをしようとしている所、取材対象とディレクターが一触即発になっている場面などが入っているので、「なぜこの部分もTVで流すんだろう」と、違和感はありましたけど、それもそのはず、映画だったのです。

画的には「とち狂った水曜どうでしょう」です。

主人公の盗聴マニア金村が、とても気持ち悪くてオタくさくて良いです。
長髪、眼鏡、と言ったいかにもなオタルックであるのはともかく、喋り方やテンションの変動、仕草が異様にリアルで、浅野さんだと気づきませんでした。
半笑いで喋る、独特の姿勢、頭ペコペコしてる、おとなしいけどキレたら何するか分からない感じ、好きな事には饒舌で上から目線、丁寧語と雑な物言いの入り混じる言葉遣い。
特に、「イラッ」と来てる時の、あともう少しで暴発しそうな雰囲気が上手いです。
金村の自宅やその周辺を撮らないと約束していたのに、ディレクター岩井は無視して少しずつその辺りに踏み込んできます。

以下、おおまかな会話内容。
金村「プライベートは撮らないっていったじゃないスか。俺、ヤですよ。こんなだったら最初からやりませんって。」

食い下がる岩井Dに対して、
金村「やぁ~~~~~~~………しつこいっすよ。」

ちょっと文字で表せない感じの半ギレ感が見事でした。

金村は、一般人の電話や様々な無線を傍受しています。
近所の女性の生活音盗聴にも成功しています。
この事について、悪びれる様子はありません。

金村「あ、盗聴器仕掛けたのは俺じゃないですよw」

おそらく、その女性の父親が、娘の部屋に盗聴器を仕掛けたのだろう、ということでした。

ここで、テレビマンの悪癖が出ます。その女性に直撃取材しようと言い出すのです。

金村は、意外と常識的でして
「その女の人は知らないわけでしょ?だったら、ショック受けちゃうじゃないですか。テレビを見てる人は面白いかもしれないけど…」
という女性擁護の立場を取るのです。
自分も盗聴しているくせに。

Dの憎らしさがまたリアルでですね。

セリフも成り行きもキャラクターもとにかく全編いい具合に胸糞わるいし後味も最悪だしで、そういう所が好きな映画です。

特に、女性が見ると不快感すごいはずです。
取材陣に一人女性がいるんですけれども、色々あって、彼女の裸体が出てきます。
その経緯もひどいです。

金村が泣く場面って何度かあるんですけれども、一度も顔が映らないのです。声だけ。
単純に、泣いている、というだけではなく、怒りと悲しみと絶望と悔しさと恨みと困惑の入り混じった叫びだったりして、すさまじい迫力があります。
そんな時、一貫して言葉遣いは荒いのですが、トーンの強弱がありまして、情けない感じの強まる時もあれば、怖さや狂気が全面に出る所も。

金村は、物語前半と後半での豹変ぶりがものすごいのですが、映画撮影スタッフも、焦ったそうです。
「浅野くんがもう大変なことになっちゃって、うわあああああああって叫んでるし。だから、『これは危ない』ってストップかけたんだよね。そしたら、浅野くんケロっとして『はい止めまーす』ってw」(オーディオコメンタリーよりうろ覚え抜粋。)
監督も騙すくらいの、ガチ発狂っぽい演技で、これは見ものですよ。

マスメディア、TV局の横暴が、誰かの人生を狂わせていく様子が描かれています。
視聴率取りたさに、人の心を踏みにじっていくとこうなる、という例です。

金村「なんで俺ばっかりこんなことに(泣)」

形勢逆転、下克上、リバーシブルと呼べそうな要素があるのですが、いくらなんでもここまでくると萌えにくいよ!というレベルです。
それと、ざまぁみろ自業自得だ、という展開には、なりそうでならないのが意地悪くて素敵だと思います。

個人的には、暫定ベスト・オブ・浅野忠信です。

【以下、ネタバレあり感想】






銃を発見する所を、素人の金村に何度も演技させるのとか本当にTVディレクターってやつは…!
とか思って見てたら、チーマーらしき男たちに囲まれなんかのはずみで銃殺してしまうんですよね。

金村は、銃の受け渡し場所に行くことも、銃を手に入れる事も反対していたのに、TVディレクター岩井が押し切ってわざわざ撮影、入手してきましたからね。女性スタッフ容子も乗り気ではありませんでした。

金村は、人殺しなんてするつもり微塵もなかったのに、岩井Dと関わったが為に取り返しのつかない事をしてしまいました。
金村は、もともと盗聴マニアという加害者的な部分を持っていましたが、この映画中は、ディレクターにあれこれ指示を出され、どんどん気持ち悪く描かれ、犯罪的な言葉を引き出され、自宅周辺まで来られ、とずっと被害者的な立場に置かれます。
そして、発砲殺人事件以降は、また逆転。
Dや女性スタッフに対して暴言を浴びせ、脅し行為をするようになるのです。
それでいて、同時に被害者性も振り切ってしまいます。

ごみ虫を殺しただけでよー、なんでこんなことに(泣)、全部おまえらのせいだからな(泣)、おめぇ嘘ばっかついてっから信用できねぇんだよ(泣) あああああああ(泣)

叫びながら猛スピードで車を走らせる後ろ姿がとても印象的です。

金村は、口止めとして、Dに女性スタッフをレイプさせ、それを撮影するよう命じます。
すごく怖くて迫力あります。その場にいるわけじゃないのに、ちょっと逃げたくなるような圧迫感。
行為中、カメラが上半身しか撮っていないのは、カメラマンの、同僚に対するせめてもの温情じゃないかって、コメンタリーで言ってたような。一方、どうせ濡れ場入れるんならもっと下をガッツリ撮れよ逃げてんじゃねぇ、という声もあったとか?

このあたり、金村は、それまで岩井Dに出されていた指示をそっくりそのままDに返していたようです。
「だから、ちゃんと、カメラの方見ろって」みたいな。
これ、言われる側がどれだけムカムカするか、っていう事を知らしめる意味でも、逆襲にふさわしかったかと思います。

「この映画で一番怖いのは、カメラマンだよ。」という意見は私も見かけたことがありましたが、制作陣にも伝わっているらしいです。
盗聴マニアも拳銃も殺人も強姦も死体も、淡々と撮り続けてますからね。

ラスト、あれは、夕日ではなく、朝日らしいです。車で一晩中走って夜が明けた所なんでしょうね。
カメラが撮り切れなかった所で、金村が死亡します。
助手席で、こめかみに発砲。
これ、ずっと、金村の自殺だと思い込んでいたんですよ。
だから、死に場所の海に向かう前のトンネルの中、金村の表情のアップを見つつ、「今何考えてるんだろう」って想像してました。
無線に入ってくる、どうでもよい街の人々のプライベートな会話。
今の金村には、全てが、遠く、白けた物に聞こえるんだろうか、それとも、当たり前に流れる日常を羨み、愛おしく思っているだろうか、とか。

で、改めてラストを見ると、誰かが不自然にカメラを押しやったような、何かもみ合っているような様子があるんですよ。
金村自殺説の他、運転席の女性スタッフ中山容子が犯人説と、カメラマンの佐野さんが撃った説などもあるようです。

岩井Dは、容疑者としては白かなぁと思います。
本気でうろたえ、しどろもどろになり、かつ、「あぁ~~…!」と、悔しそうにしていたので。

容子さんは、隣で人が死んでいるとは思えないほど、普通の事を、ローテンションでつぶやいていたはずです。
彼女なら、「金村のせいでレイプ被害に遭わされていて、まじこいつキモイムカつく」という理由で殺してもおかしくないですね。

拳銃入手時など、あんなに饒舌にレポートしていた岩井Dなのに、「…金村は…金村青年は…ッ」と全然言葉が出てこなかったのです。そのうち、カメラのバッテリー残量が切れたか何かで映画がぷっつり終わります。
本当は、この後も脚本があったそうですけれど、ここでバツッと終わるのが良いのです。
脚本を読んでないこともあり、これ以外の終わり方が考えられません。

金村が自殺だったら、「まぁ、もう人生立て直せないと、絶望したんだよね…。」と思えますけれど、誰が撃ったのか、ということは、制作陣もぼかしています。(コメンタリー)
自殺だとしても、「行き過ぎたマスコミの傲慢が、金村を死に追いやった感」は、バリバリありますね。
さらに拡大解釈すると、「TVに、より強い刺激を求め、その過程で踏みつぶされてゆく人々の苦悩を見て見ぬふりして、面白おかしく傍観している『一般視聴者』が、金村を死に追いやったよね」ということにもなりそうです。

金村が自分でカメラを押しやり、レンズを逸らしながら自殺したのだとしたら、「一番人目を引くオイシイ瞬間は、お前らには撮らせてやんねーからな!!」という意思表示のように思えます。

最後まで、岩井Dが生き残ってしまう感じが、また、この映画らしいですよね。
結局、死んでゆくのはマスコミの被害者なんですよ。
これで、Dが死んでたら、これまで重ねてきた罪の報いを受けただけ、に見えるんですけど、そうはなりませんでした。
ただ、岩井Dもあの様子だと、かなりダメージ受けてたみたいですね、金村の死に。
あの後、死体はどうするのか、警察に訊かれたらどう答えるのか、面倒事が山積みですね。

去年、改めてDVDを買いました。いやー、キモイ。ストレスたまる。好き。

テーマ:この映画がすごい!! - ジャンル:映画

  1. 2012/02/08(水) 15:11:27|
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