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ダグラス・アダムス「銀河ヒッチハイク・ガイド」感想

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)
(2005/09/03)
ダグラス・アダムス

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【あらすじ】
地元バイパス工事の為立ち退きを要求されていた、平凡な英国人アーサー・デントは、友人のフォード・プリーフェクトに、世界の終わりまで残り12分であることを告げられる。
フォードは、ベテルギウス出身の宇宙人で、ベストセラー「銀河ヒッチハイク・ガイド」の現地調査員だった。
地球は、銀河バイパス工事により消滅した。
デントとフォードは、ヒッチハイクをして、地球を消したヴォゴン土木建築船団の宇宙船に乗り込んだ。

【ネタバレなし感想】
シリーズものの上、作者死去により未完だそうですが、この一作だけで十分面白いです。

ジョークとユーモアだらけのブラック・コメディーで、いちいち笑えますし、哲学、宗教をおちょくりつつ、新しく笑える納得のそれらを提示しているようでもあります。
ナンセンスなはずなのに、深読みしてしまう魅力のある、数々の要素に楽しませてもらいました。

キャラクターが立っていて、特に好きなのは、宇宙大統領のゼイフォード・ビーブルブロックスです。
映画DVDの予告で、実写版をチラッと見たときは、イケメンでやたらめったらノリの良いキリスト(ともうひとつ人間じゃない顔があってキモい)だったので、そのヴィジュアルイメージのままで読みました。
元ヒッピーでプレイボーイで自己顕示欲の塊で協調性がなく、頭のネジが飛んでると言われるくらい狂っているのに、恐ろしく天才で、直感的に答えが分かりそこまでの道筋は自分でも良く分からんし、何かを見つけたいけど、それが叶ったらどうしたいかは決めてない、というようなキャラです。
こういう人は、現実で、身の回りにいたらものすごく迷惑だと思うのですが、芸能人やロックスターだったら、人気出るでしょうね。魅力あります。

大統領になる資質として、「計算づくでちゃらんぽらんをやる能力」を持つ事としています。また、大統領の仕事は、「権力を振るうのではなく、権力から目を逸らす事」であり、「お飾り」に決まっているから、「なんであんなやつが」という人がその座につくのだ、という、皮肉が書いてありました。
これは、現実の国のトップにも当てはまるジョークですが、ゼイフォードにだったら、まさに適役、かつ、彼に付いていってみたい感じはします。

ヒッチハイク・ガイドは、今でいう電子本の類です。音声も出ます。キンデル、i pad、ポケモン図鑑や、DS辞典のようなものかもしれません。
膨大な情報量があり、宇宙の酒や、星、技術、現象、生き物については記述が網羅されています。
フォードは、地球について調べていました。
その結果、以前は「無害」という情報しかなかった所、「ほとんど無害」という風に立派な改訂がなされたのでした。15年かけて。

バベル魚を耳に入れると、(複雑な過程を経て)どんな異言語でも理解できてしまいます。
ドラえもんの秘密道具でいう、「翻訳こんにゃく」のようなものですね。(機械の発信音すら、こんにゃく載せただけで日本語に聞こえるというすごい道具)
でも、「耳に魚を入れろ!!」と言われたら、「は?何言ってるの…?」ってなるでしょうね。

いくつか、人工知能やロボットの類が出てきますけれど、人間不信で被害妄想のうつ病ロボット(曰く「電子ふてくされ機」)や、やたら快活で物騒なことでもずっと明るいトーンで話かけてくるAIや、丁寧にアナウンスしつつそちらに向けて核ミサイルを発射済みだと告知する自動音声、自殺するコンピュータなど、人の持つ性格を極端に特化させたような機械らしからぬキャラクターばかりです。
マーヴィンの宇宙観を聞いてみたいですが、止めておいた方が身のためかもしれません。

突如生まれるマッコウ・クジラは、目に映った物に名前をつけている内に物語から退場してしまいます。
あんた何しに出てきたの。と思いつつ、人類もそんなものかもな、と考えさせられるキャラクターでした。

ふざけたお話ながら、伝説の星マグラシアを見つけよう!、生命宇宙その他諸々という究極の問いへの答えを探るぞ!という、ワクワクする行動動機はあります。

「君は、その仕事をしていて本当に楽しいの?」ということは、作中キャラクターが言いますが、「すごい賞を取ったから何なの?」「小さなルーチンワークに明け暮れてるけど、そんな人生で本当に良いの?」という問いについては、読者に突っ込ませる「ボケ」のような形で書いてありました。

どうも、この時期に書かれたSFというのは、機械が紙テープをカタカタと吐き出し、人類は「ホスト」によって壮大なスケールで何かをするように仕向けられ、ロボットは精神疾患になって歌い出すようです。
(歌うところは、別の小説のパロディだと思われる。この本から20年くらい前に書かれた。)

42! これ、カタログ番号だと思ったのですが、そんなことなかったです。

巨大集合コンピューターが行う計算の答えを、その端末は知り得るのでしょうか?

デザイナーさん、初登場時は、もっと神様に近い、すごい一族の末裔だと思ったのですが、最終的な印象は、会社を定年退職し、過去の栄光にしがみつく、意固地で哀れな老人でした。
それでも地球人から見たら、宇宙レベルでとんでもない人物なんですけど。

ねずみの実験、面白いですね。その発想はなかった。

アーサー・デントは、地球がなくなった事にショックを受け、その放心状態から感慨を呼び起こそうとします。その描写が笑えつつ、ちょっと共感できるから不思議です。
彼は、親兄弟や友人知人がもういないことを考えますが、なんともありません。しかし、2日前にスーパーの列で前に並んでいた赤の他人を思い出したら、胸がズキンと痛んだのです。あのスーパーも、そこにいた人ももういないのだ。と。
母国イギリスがないということは、実感できましたが、アメリカやニューヨークについては、ピンときません。
アーサーにとってのミューヨークは、元々夢物語みたいなものだったからです。
しかし、ボガードの映画が見られないと考えたら殴られたような衝撃に襲われ、さらに、マクドナルドのハンバーガーなんてものが、どこにもないのだ、と思ったら、気が遠くなったのでした。

他人や物との心の距離や優先順位は、人によって全然違うんでしょうね。家族については、近すぎて衝撃を受け止めきれなかったのかもしれません。
アメリカは遠いけど、アメリカのハンバーガーは身近だから、大ショック!というのが英国ジョークっぽくて好きです。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/01/06(金) 18:35:06|
  2. 読書感想文(小説)

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