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太田光「マボロシの鳥」

マボロシの鳥マボロシの鳥
(2010/10/29)
太田 光

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【概要】
童話風からSFトンデモ、戦争ものまで、さまざまな創作物語の入った小説短編集。

【簡易感想(ネタバレなし)】
本が手元にないので、うろ覚えです。

太田さんには、あまりオタクというイメージがなく、多分いわゆるアニオタ・萌えオタとは違うはずなのですが(一部ゲームにはまってたっぽい?)、モチーフや精神性は、男性オタク近いものを感じました。

美少女と猟奇を絡ませるあたり、ラノベや同人音楽的な好みだと思います。
プラトニック殺伐年の差恋愛の類は、別にオタやロリコンの趣味というわけではなく、神話や古典にもあるでしょうけど。

年老いた芸人(才能が逃げてしまって舞台に上がれない)、みたいなキャラは、ルックス的にビートたけしさんあたりをイメージしましたけど、内面的には太田さんの本心だとか、希望、願いかと思います。
想い想われる、必要とし必要とされる、という相互関係(時として、相手は生き物ですらなかったりする)は、仏教的な思想なんですかね。
花に必要とされている、と感じるから、その花を美しいと思う、という。
「タイタンの妖女」に出てくる、水星のエピソードを連想しました。太田さんの愛読書らいしですし。
水星で、ボアズという男が、ハーモニウムという不思議な生き物と交流する場面、ハーモニウムには意思も感情もなく、ただ、音の振動に反応してるだけかもしれないのに、ボアズは、ハーモニウムに音楽を聞かせる事が生きがいとなり、ハーモニウム可愛さに一人、水星に残った、という話だったと思います。
太田さんの「花きれい」は、それに似ています。

各話ごとに文体が全然違います。
オスカー・ワイルドやドフトエフスキーなどの外国文学を日本語訳した時のような文章で、かつ、ですます調というものは、残酷御伽噺風でした。
フランクな欧米文学っぽいお話もあり、キャラクターも日本人名ではなかったはずです。
ミュージシャン作家や筒井康隆、夢野久作(特に、キチガイ外道記?あたりのノリ)、伊藤計劃、キノの旅の作者、宮沢賢治、舞城王太郎など、日本人作家の雰囲気もありました。
メタ自虐は、三島由紀夫のやり方に通じるものがあります。(以前読んだ本で「やぁねぇ、三島ってあの右翼でしょー?そんな人の本読んじゃ駄目よ?」という旨、作中キャラに言わせてたと思う。)

それと、旧仮名遣いのものは、昭和初期~大正以前風でした。
大まかに覚えているあらすじとを羅列します。
なにかのヤヴァイ思想と著者の政治観を演説し散らかす
いきなり爆弾で吹っ飛ぶ反戦と攻撃衝動と家族愛と罪と罰
魔女狩りと母娘愛
才能を逃がした芸人とそのファン
ツインタワーテロ擬人化風
イバラ姫モチーフの血まみれ美少女と老いた男
銀河鉄道の夜と星の王子様を繋ぐ仮定

全体的には、どのお話もテーマは統一されていたように思います。
「この世界は、他のどこかの世界とつながっていて、孤独ではない。誰かに笑ってもらい、必要とされることは、今すぐ死んでしまいたいくらいに幸せなことだけど、こんなことがまたあるなら、この世界にまだ、生きていたい。」
それから外れるのもなくはないけど、大体そんな感じでした。

ラスコーリニコフやジョバンニなど、既存作品のキャラクターがガンガン出てきます。
タイトルは忘れましたが、どれかの話は、星の王子さま=カムパネルラ説で進んでました。
マッシュアップや二次創作でオリジナルをやるというのは、ゲームや映画の世界だと結構あるようです。

9.11テロのネタがあり、パラレル世界の貿易センタービルを擬人化したものかな、と思いましたが、9.11というものは過去に起こった事として描写されていたので、この現実世界の近未来なんですかね。
その倒壊ビルっぽい立場のキャラクターを、双子の知恵遅れ少女(聾唖者?)にし、しかも、お兄ちゃん的キャラになつく設定にしているところが、やっぱりロリオタ好みの発想をする人だな、と思いました。

どれが、素の文体なのでしょうか。基準になるのは、表題作ですかね。比較的ナチュラルに見えます。
好きなものがいっぱいあるから、全部やってみた、まだひとつに絞ってない、という実験・模索段階なのか、ストーリーによって一番合う文体を使い分けることにしていることにしているのかは、謎です。
どちらにせよ、伝えたい内容と雰囲気に即していたから良いと思います。
実験なら、「○○風の短編やってみよう」という発想から始まってお話を作っているのかもしれませんね。

もし、表題作を前知識なしで読んだら、数百年前に書かれた名作だと信じてしまうかもしれません。普遍性がありますし、世界観のモデルが確立されているようなので。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/12/31(土) 14:46:00|
  2. 読書感想文(小説)

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