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スタンリー・キューブリック監督映画「2001年宇宙の旅」感想

小説版感想は、別ページです。

2001年宇宙の旅 [DVD]2001年宇宙の旅 [DVD]
(2003/12/06)
キア・デュリア、ゲーリー・ロックウッド 他

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【あらすじ】
人類がまだ猿だった頃、謎の石版モノリスが出現した。
時は流れ、人類は、宇宙飛行をするようになった。
月で別のモノリスを掘り起こした数か月後、人工知能による制御装置HALを搭載した宇宙船は、木星を目指す。

【途中まで、ネタバレなし感想】
小説版は既読です。

映画には「ト書き」や「地の文」がないので、様々な部分を映像のみで表現しています。
ナレーションや字幕はあまり使わない派のようです。
説明や言葉、名称がなかったりする分、映画版だけ見ると理解しにくい所があるかもしれません。
しかし、変にリアリティがあります。「お話」というよりは「実録」に近い雰囲気です。

本だと、モノリスがどういうもので、どんな影響を回りに与えるか書かれているのですが、映画だと、謎度合が増してます。
本当に、なんだか分からない四角く黒い板なのです。
冒頭、モノリスについて、説明したり感想を述べるキャラクターは、いません。猿なので。
キーキーキャイキャイわめいて音としてはやかましいのですが、意味的には、とても静かでした。

全く古い映画に見えない、大変美しい色合いと、セット、メカ、衣装でした。
作中の技術は、すでに現実世界でも実用化されています。
音声認識や、テレビ電話など。
原作で電子新聞を閲覧している場面は、i padで想像してましたが、新聞の場面自体なかった気がします。
ニュースを見ている所はあって、かつ、画面内の人と会話できていたようなので、あれが、新聞代わりなのかもしれません。
モニタは薄かったです。

HALの声を初めて聴きました。某ママルポッドとか某タチコマのイメージがあるので、女性の声かもしれないと考えていました。
実際は、落ち着いていて低音の、紳士的な声でした。
ゆったりと、聞きやすいトーンで話します。

家具や機械、室内は、ほぼ赤と白の二色で統一されていました。
椅子の形など、現代的でお洒落です。

重力の制御っぷりなど、しくみは分かりませんが、一見ふつうの飛行機の中のようで、やっぱりここは宇宙なんだなと、ハっとさせられる、スタイリッシュかつコミカルな場面がいくつかありました。

HALの本体は、広い制御室全部なのでしょうが、その分身のような「顔」に当たる部分は、あちらこちらにあって、船内を監視し、乗組員や本部と通信しているようです。
顔らしき所は、多分、スイッチかなにかと、カメラ、スピーカー、マイク、でできているんだと思います。
カメラのありそうな赤い円形部分は、「目」と認識しました。一つ目です。
HALのモノアイがドアップになる場面が何度かあります。
異様に迫力あります。カメラ的には何の効果も移動もなく、ただ、バン、と止め絵で数秒です。
人間や動物みたいに、目で訴えかけることはしない、ただの無機質なランプです。
それなのに、何かを想い、じっと見つめているように思えるのです。

主人公ボーマンの性格や見た目は、非常にニュートラルです。特におかしい所があるとか、嫌な奴だとか、優しい人ねとか、そういった印象がなくて、ただ単に人間、男の人、という雰囲気でした。

あらすじを他人に説明したら、正気を疑われるような内容にもかかわらず、淡々と映像化されていました。
コンピューターグラフィックを使ったと思われる部分も、最新映画技術と大差ないようにお見受けしました。
見せ方が上手なんでしょうか。滑らかに動き過ぎないのが、かえってリアルなのかもしれません。

【以下、ネタバレあり感想】







赤と白の話ですが、これは、映画版を見る前に聞きっぱさんでいたのですよ。
赤は、「生き物」で、白は、「道具」を表している、と。
なるほど、ほとんど、当てはまってました。

猿の狩った獲物の肉、つまり「生き物」は、赤。狩りに使った「道具」の骨は、白。
骨が飛んで、白い宇宙船のカットに変わる。宇宙船は、人が、自分たちを宇宙に運ぶ為に作った「道具」。だから、白い。

同じ「道具」でも、たとえば、人間が座る椅子、コックピット内部、ボーマンの宇宙服の色は、赤、となっていましたので、「生き物」と密着した部分は、その一部として、赤に分類されるのかもしれません。

そして、HALの目は赤です。これまでの法則性から行って、HALは、それほど人間と一体化してないものに思えます。
でも、赤いので、【HALそのものが、「生き物」にカウントされている】と推測されます。制御室も、オレンジ掛かった赤だったような。

白い宇宙船(道具)の中は、HAL(生き物)の赤でできている。
これは、猿時代、獲物の赤い肉(生き物)の中に白い骨(道具)がある、という構図とは逆になっています。

科学と利便性が行き着くところまで行って、ひっくりかえっちゃったら、もう人間じゃなくなるしかないね、というメッセージなんでしょうか。

もしも、HALの目が白色蛍光灯だったら、存在感が半減でしょうね。

HALの最初の誤作動は、わざとなのか、偶然なのか。
小説版でも、どちらとははっきり書いていなかったと思います。
HALは、自分だけが木星行きの本当の目的を知らされており、それを、乗組員に対して隠し続けなければいけない事がストレスとなり、ロボットの神経症になったんじゃないか、というような事が本に書いてあったように記憶しています。違ったらごめんなさい。

となると、偶然の可能性の方が高いですかね。
機械にあるまじき計算ミスをするなんて、魂を得てしまった事による「綻び」の表れのようですもの。

初めてのミスでかなり動揺しているHALが、さらに、自分の通信を切るとか言われてパニックになったのでしょう。
PCなどは、しょっちゅうシャットダウンされ、オフラインやスリープにもなりますが、HALは、造られた時から、ずっと起きっぱなしだったんでしょうね。
寝たことがないなら、HALは、夢を見たこともないのでしょうか。
人間には、慣れっこの睡眠ですが、HALには恐ろしくて仕方なかったのでしょうね。そこの所、慣れさせておいたほうが良かったかもしれません。地球上で。
それで言えば、「凍結状態のまま殺された乗組員」など、恐怖の最たるものですけど。

主人公達が隠れて話してたのが、また、HALの不信感と怒りを買ったのでしょうか。
でも、その直前、パイロットたち、HALを呼んでましたよね、返事しろとか。
それを無視して知らないふりをしたのはHALの方ではないでしょうか。

読唇術で解析している所のHALが、眼力強すぎて。
HALの「目」アップは、実に不気味です。

黄色い宇宙服のパイロットが突然もがきだすんですが、あれはHALが酸素供給止めたんでしょうか。
さらに、死んだパイロットを放流。
主人公ボーマンが、死体を回収する場面、妙に美しかったです。色合いと、きれいに浮いている様が丁度良いスピードで撮られていて。

戻ってきた時に、「爆発に注意」の文章通り、ふっとばされてました。どうやって撮影しているのか全く分かりませんが、予告にも使われていた、宇宙的場面です。

小説での冷凍クルーの殺し方は、ハッチのロックを解除して真空にする、だったと思います。
映画は、少し違ったように見えました。
生命維持装置の停止でしょうか。
寝ているクルーが死んでいく描写は、心電図のようなもので現されてました。
音も光も色も溢れているのに、落ち着きすらするローテンションさと、冷酷さを感じました。

あれは、自分をシャットダウンするな、という警告と、よくもそんな事を私に黙って実行しようとしたな、という怒りの表れなんでしょうか。
日常場面からHALの様子はおかしい雰囲気になっていたので、かなり精神的に参っていて、人間でいう「刑事責任能力がない」という状態だったのかもしれません。
狂っていくロボットを描写する場合、「爆発する」「ビーム出す」「怒鳴る」「暴れる」というのが手っ取り早いと思うのですが、HALの場合は、終始、穏やかな喋りであり続けましたし、単体で動き回ることもありませんでした。
固定されているので。それが逆にクレイジー感を醸し出してました。

あの顔っぽい部分をHAL、と認識しがちですが、実際には、宇宙船全てを制御している、乗組員より外側の存在なのですね。
つまり、主人公たちは、狂ったものの内部におり、逃げ場がないのです。
船を乗り捨てて宇宙に避難しようとしたって、脱出ポッドもまたHALの制御下にあるんでしょうから。
普段便利グッズとして使っているものに、気付けば内包され、囲まれている、という状況は怖いですね。
胎児が母親に「かあさんね、今から自殺します!」と、宣言されるような、どうしようもなさです。

「モノリス」という名称は一度でも出てきましたでしょうか?
DVDを字幕再生しつつ別の作業もしていたので、見損ねた部分があるかもしれませんが、小説ほどはっきり、アレを、モノリスとは読んでなかったように思います。
さらに、木星の当たりに飛んでいた大きなモノリス。あれの働きで、ボーマンは、スターゲートに飛び込み、肉体を持たない精神だけの生命体スターチャイルドになったようなのです。
(大きい物はTMA・2[ティコ磁気異常2号] という名前らしい)

小説版を読んで、大きいモノリス=スターゲートだと思ってましたけど、実際には別物で、モノリスは、ゲートを稼動させるためのコンピューターに過ぎないのでしょうか?

主人公は、モノリスやゲートを認識する間もなく、あの、わやくちゃな空間に飛び込んでしまったようです。
ゲートに入るあたりだけ何度か見直したのですが、今まさに突入する、という場面がないのです。
気付けば、主人公の主観カメラによる、極彩色の幾何学グラフィックが始まっていました。
思いのほかヌルッとしていて驚きです。人間に知覚できない感が本物っぽいですね。
モノリスの外が内になってしまったんでしょうか。

↓ちなみに、小説版を読んで想像していたスターゲートはこんな感じです。映画見たら全然違ったので、イメージが上書きされる前に描き留めました。
想像上のスターゲート


映画と小説は、どちらが先だとか、原作だ、とかいう事ではなく、協力して同時進行的に作られていたようです。
最後に行くにしたがって、細かい所で食い違いが出てきます。
まず、目指す惑星が違いますし。小説は、土星で、映画は、木星だと思われます。

スターチャイルドになる直前のベッドのある部屋も、両者でビジョンが異なっていそうです。
宇宙を飛んで飛んで、…ホテルの一室に着地する、って所が衝撃的ですよね。
小説だと、もう少し普っ通ーの、地球の、アメリカかどこかのビジネスホテルかマンション、の、清潔でシンプルな一室。今までの事が全部夢だったんじゃないか?というくらいの日常感、というイメージでした。
映画だと、少し特別なお部屋でしたね。それと、窓がないです。

映画版だと、すでにスターチャイルドになっているから、あの部屋に行けた、という風に見えました。
宇宙的極彩色の場面(ヱヴァ序のラミエルみたいなのがいる)は、ベッドで横になった後に見ている風景だと考えてたため、そうか、あの、地球上っぽい部屋の中に降り立つシーンはカットになったんだなと。
そしたら、該当場面はありましたので、順番が入れ替わったような感覚に囚われました。

各モノリスは、役割が違うそうです。
猿の所にあったモノリスは、類人猿の進化を促し、月のモノリスは人類が月に到達できる技術力を有したと判断して大きいモノリスに信号を送り、大きいモノリスは、スターゲートを開いて、人間をスターチャイルドに進化させる、という働きをするようです。
これ、映画だけ見ていても分かりにくそうですよね。
最初のモノリスは、類人猿進化のさせ方が、ものすごく地味です、小説版。それ、本当にモノリスの影響があったの…?というレベルで長い年月がかかるのです。
月モノリスは、地面に埋まってるだけじゃ働かないんですよね。太陽光に晒されて初めて強力な電波を飛ばすのです。

木星派遣隊を組んだ人達が、なぜ、乗組員に目的を伝えなかったのか。宇宙人や知的生命体の存在可能性、というものは、重大な秘密だからでしょうか。まさか、乗組員をスターチャイルドにされるとは思っていなかったでしょうけど。

HALは、モノリスの働きについて、どこまで計算できていたんでしょうか。
自分なりに、モノリスやそれを使う者たちについて調べたり、推測したり、あるいは、直接交信することなんてできたんでしょうか?
そういう所に神経をすり減らしてノイローゼが加速→最初のミス、とか、人間を「彼ら」に接触させてはいけないと判断→クルーを殺す、とか、自分が宇宙船乗っ取って「彼ら」と接触してやる、だから人間などいらん、とか、モノリスや「彼ら」に感化され操られてる、とか、最初に命令を与えられた航行目的を一番ストレスなく実行できるから、とか…。HALの行動原理や発狂の原因を色々考えてはみるものの、答えは出ません。どこかに作者インタビューなどで、公式見解があるのかもしれませんが、それを知るまでは、好きに受け取らせていただきます。

HALには、あまり、「悪者」「悪意を持った存在」というイメージがありませんでした。
「賢くておだやかで脆い」程度で。でも、実際やってる事は、人間に刃向かって殺害、というギャップ。

HALの制御室は広いですが、ボーマンが何か基盤か回路でも詰まってそうなカセットを引っこ抜いていたあたりが、HALのコアなのでしょうか。HALの自我や意識と呼ばれるものはそこにあって。
さきほどから、HALには魂が生まれていた、という前提で書いてしまっていますけど、どうなんでしょう。
現在は、ボーカロイド等ありますし、歌うのは人間だけではありませんけども、それでも、デイジーデイジーには人間味がありました。
現在のロボット展示なんかでも、歌わせるのと踊るらせるのは、やりますものね。
精巧に作られた人型ロボットが黙って座っているよりも、ただの立方体寄せ集めオブジェが歌って踊った方が、よっぽど人間に近いと感じられそうです。

誰かに作られ生まれ、教わり、覚え、再現する、という行為は、機械と生き物に、元々共通している要素なんですね。
では、両者の線引きをどこでするか、というのがSFが扱うのテーマの一つだと思うのですが、ここら辺掘ってると、宗教の領域に両足突っ込んでしまうんですよね。

そもそもボーマン達は、別に「HALを永遠凍結しとこう」「破棄しよう」とは言ってなかったような。
なにかこう、「調子悪いから様子見しよう。メンテナンスの為、一旦切って、それから再起動してみようや」程度のノリでしたけど。

ボーマンがスタチャになっている間、HALの抜け殻はどこで何をしているんでしょうか。そのまま宇宙を漂っているんですかね。誰かが基盤戻してスイッチ入れたら目を覚ましますでしょうか。
地球に同じコンピューターの双子版があるようなのですが、連動させて、起こすことはできないでしょうか。
遠隔操作できなくもないのでは。

他の人類は、まだボーマンの進化に気付いていないのでしょうか?その頃地球はどうなってます?
全員生きたまま木星に行けてたら、あの冷凍クルーも、黄色い船外作業服の彼も、みんなそろって星子供になったんですかね。だとしたら、何。それは、モノリスの創造主たちに、都合の良いことなのでしょうか。
続編未読につき、不明です。

星子供と化したボーマンの見た地球は、本当に今現在の地球ですか。遠い過去の、猿の時代だったりしないでしょうか。
小説だと、ループもののイメージあったんですけど、映画だとそうでもなかったです。(スタチャとなったボーマンが、太古の地球で、モノリスから猿に信号送ってるイメージ)

途中の「インターミッション」。あの空白(空黒?)の時間は、何なのでしょうか。それと、エンドロール後、真っ暗な画面の中、延々クラシック曲が流れ、何もなく終わるっていう、あれは一体。
夢の無い眠り、でも表しているのでしょうか。
夢を見たら生きている動物。見なかったら、それ以外。という区分けで。

テーマ曲は、何度も耳にしたことのある、有名なものでした。
モノリスのテーマみたいなエェェェエエェェというアレ、宇宙空間で西洋古典、など、音楽の使い方が面白かったです。

テーマ:DVDで見た映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/12/27(火) 10:48:25|
  2. 映画感想

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