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西尾維新「少女不十分」うろおぼえ感想

buro不十

少女不十分 (講談社ノベルス)少女不十分 (講談社ノベルス)
(2011/09/07)
西尾 維新

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【あらすじ】
人気小説家で作品を量産する30歳の男が、10年前の大学生時代を振り返る。
若き日の作家は、少女の交通事故死を目撃する。
共に登下校していた少女Uは、プレイ中の携帯ゲーム機を一旦セーブし、鞄にしまってから、友の死体に駆け寄った。
それを目撃した作家は、後日、少女Uと再会することになる。

【途中まで、ネタバレなし感想】
本が手元にないため、うろ覚え感想となります。

西尾作品はほんの少ししか読んだことないので、ファンでも信者でもありません。
それがかえって良かったのかもしれません。
この話は、とても好きです。

名前のある登場人物は、主人公の作家と少女Uだけです。
大学生当時の目線ではなく、常に10年後から過去形で語るという手法で正解のお話かと思います。

Uちゃんは相当おかしな子ですが、作家(20)もどうかしてます。一般大学生っぽく描写してますけど。

「変人になりたい凡人」について、「いや先生、変人を装おうとする、という時点で変人なのですよ」というような文章がありました。
世の中、「変人志望の凡人」がマジョリティになるという事態には、まだ至っていないのでしょうか。

冒頭の文章は、作者・西尾維新による、前書きかと思ってましたが、すでに本編でした。
単なる実話エッセイじゃないのか?、という書き出しです。
しかし、この物語のようなエピソードが実際にあったらニュースになっていたでしょうから、現実と重ね合わせた私小説風のフィクションということでよさそうです。
三十路作家のプロフィールと作品のカラーは、西尾さんそのものですし、物語を書く動機も、著者のストレートな本音のように見えます。

こんなに嬉しくない混浴も珍しいです。

特殊な状況下ではありますが、教育、友情、規則、衣食住、創作、保護、希望、幸福というような事について真面目に書かれているように思います。

不謹慎で怖くて可哀そうでもあるという、やっかいな方向の萌えです。

U独特の価値観と優先順位に惹きつけられ、一気読みしました。
オタク臭さや、ファンタジー感は、皆無だったように思えます。
それと、メディアミックスやグッズ化、キャラクター商売に不向きで、小説の為の小説、という風に見えました。そこも好きです。

【以下、ネタバレあり感想】








自転車前輪に突っ込まれた棒の正体がリコーダーであると判明した瞬間、ゾッとしましたが、同時に、素敵、とも感じました。
小学生のリコーダーは、武器。

小学生女児が大学生男子を誘拐するというのは、良いシチュエーションですが、Uちゃんの小刀というのには、本気でビビりました。萌えなしです。痛そうなので。
著者は、ちょっと少女に虐げられたいという気のある人なのかしら、という疑惑を抱きつつ読み進めました。
残飯のような学校給食を一緒に食べる場面などにも、M気質を感じました。
「飼育」という言葉が似合います。
私には、その性質がないはずですが、「Uちゃんと一緒にご飯食べたい」とは思いました。

加害者と被害者が疑似家族になっていく感じが良かったです。
「いってきます」は、会社や学校等の一時的外出時にも使用されますが、一軒家で「いってきます」は、家族でしょう。
義理の親子なのか、兄妹なのか、夫婦なのかは、判別しがたい雰囲気です。ルームメイトや同棲や戦友とは違うようです。

「保護者」「被保護者」という関係性は、時々逆転しているか、あるいは、同時に起こっているように見えます。

Uの誘拐は、所詮子供のやること。粗だらけなのです。
作家(20)には、何度も逃げたり、通報したりするチャンスがありました。
でもしなかったのは、この子供の仕業に付き合ってやろうという意志も働いていたようです。
「ストックホルム症候群」とは、銀行強盗や誘拐の人質立てこもり、監禁など、犯人と被害者が長時間非日常を共有した時に起こる心理作用らしいのですが、この作家(20)は、監禁される前から監禁される事に協力的です。

誘拐されることをサポートする被害者、しかも年上男子、という事でかなり奇妙な事になってます。
その辺りは、作家(30)が度々客観的説明と突っ込みを入れていたので、著者は、分かった上で書いてるんだと安心できました。

Uのあいさつへのこだわりは、U自身による「法則の発見」や「決め事」ではなく、父親の「不自由帳」により定められた事だったのですね。
そうなると、作家(20)が誘拐ごっこを終わらせようとした気持ちも少し分かります。
Uの奇妙な言動や誘拐が、自発的かつ生来の幼稚な偏屈さに由来するならともかく、両親の教育と虐待により、人工改造された人格だったとなれば、それは大人の、親のやらかしたこととなるので、作家(20)が付き合ってあげる筋合いはないのです。
(普通は、子供が進んで行う犯罪にも付き合わない。)

Uは、少し大人びた得体の知れない女の子に見えていた分、「いただきます」をしなかった作家(20)に対して、怒りながら泣いて取り乱した所が、子供らしくてかわいかったです。
監禁されてる方からしたら、誘拐犯の豹変は、いつ危害を加えられるか分かったもんじゃなくて恐ろしいものかもしれませんが、読んでる方としては、ダダこねてかわいい、とほんわかしました。
しかし、それもまた、「不自由帳」による縛りだと思うと、萌えてられなくなります。

Uは、「モンスター」という自覚を与えられてたんでしたっけ?
「正体」を知られてはいけないという親の教えがあったようです。
Uの為ではなく、両親が保身に走った結果の決まりごとに見えます。
親が自分達でこんなにしてしまった子なのに、手に負えなくなったんですかね。
我々の教育の失敗が他人にバレたらどうしよう、そうだ、Uに口止めしよう、と「不自由帳」に書き込んだ感があります。

両親の首絞め合い心中自殺、は、物理的に可能なのかどうか謎ですが、互いに雁字搦めになってにっちもさっちもいかなくなって自滅した、という表現として理解することにしました。

Uは、学校や外では「正体」を隠して演じ切っていたんですよね。何の変哲もない少女を。
しかし、交通事故の日、ゲームをセーブしてから友の死を悲しんだという不自然な行動を、主人公に目撃されてしまったのです。
あの時、作家(20)が見たものは、Uの「正体」でした。

作家(20)は、Uに、世の中うまくいかない人も駄目な人も普通じゃない人もいっぱいいるけど、そのままの形で生きていける、いつか幸せになれるかもしれない、という創作話を沢山してあげました。これが後の作家人生にも繋がっているということです。
各寝物語のあらすじは、それぞれ、既存の西尾作品に該当するそうです。

最初、作家(30)の担当編集者が寿退社するのでこの本を書くと言っています。一度しか読んでない私の記憶では、その編集者の代わりに来たのが大人になったU、ということなのですが、別の読者に「Uが主人公の担当編集者になって数年してから寿退社したんだよ、こんな悲惨な人生を歩んだ人間にも、平穏な幸せが待っていたってことだよ」と、説明されました。
でも、例えば25歳の主人公作家に担当編集がつくとして、それがUだったら、当時14歳になってしまい、長年担当を務めるという描写と合致しないので、やはり読み返します。

ネット検索したら、Uは、若い新担当の女性である、ということで、寿退社した担当とは別人のようでした。

この記事の最上部イラストは、自作ファンアートです。30cm定規は、オプションで勝手に付け足しました。
主人公のヴィジュアルは、西尾先生そのままでよさそうですが、まだお顔を存じ上げないので、今後、偶然知る機会があるまで調べないでおきます。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/12/14(水) 03:24:15|
  2. 読書感想文(小説)

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