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クエンティン・タランティーノ監督映画「パルプ・フィクション」感想

パルプ・フィクション [DVD]パルプ・フィクション [DVD]
(2009/12/16)
ジョン・トラボルタ、サミュエル・L・ジャクソン 他

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【あらすじ】
カップルがファミレスで強盗の相談をしている。
マフィアの二人は、取引の品であるスーツケースを取り戻すべく、殺しに向かう。
ギャングのボスは、プロボクサーに八百長試合を頼む。
マフィアの一人が、ボスの妻の世話を頼まれる。

【途中まで、ネタバレなし感想】
時系列シャッフルの連作短編集です。
短編と言っても、登場人物や場面、人間関係は、連続していますので、順番さえ並び変えれば、一つのまとまった長編にも成り得ます。ただ、「一方その頃」という裏側や、事態の同時進行を描くのはややこしいので、短編形式で正解だったと思います。
「あの後、そうなってたのか」と後から分かるのは、驚きがあって楽しめます。

非常に下品、かつ、法に抵触しまくりで、ヴァイオレンスなお話ですが、楽しく見られました。

登場する男性達は、色んな意味で強いのですが、皆、妻の尻に敷かれ気味です。本気を出せば、旦那の方が圧倒的パワーを誇るのですが、妻への恐怖、愛情等により、そうもいきません。

ほぼ全ての登場人物が、性格ぶっとんだ異常者なのですが、合間合間のどうでも良い雑談や日常会話が、やけに庶民的なのが面白いです。
決め決めの箇所よりかえって、深い名台詞に聞こえてくるくらいです。

視点は切り替わるものの、大まかな軸は、ギャングのボス・マーセルスと、その部下・ヴィンセントとジュールスの物語となっています。

麻薬や性や暴力や殺人などを扱ってますので、小さなお子さんにはお薦めできません。

映画の予告編やポスター、DVDジャケットなどに見られる「かっこいい男」「イイ女」画像は、本編で見ると、実は、かっこわるくてダサくて弱い男女が、自分の中のかっこいい像(既存のメディアで覚えた姿)を必死で模倣しているだけだったりすることがあります。それと、パロディー好きの監督なら、有名シーンのオマージュを入れるので、そこだけ切り取って見ると様になっているという。
「パルプフィクション」もそんな部分ありました。本当にクールで、破滅的で、付け焼刃ではないワル達なのに、視聴前の怖くてスタイリッシュなイメージとは異なっていたのです。
でも、その決まってなさ、みっともなさを通り過ぎた後、型にはまらない愛らしさや、ガチの狂気、迫力、リアルさが出てくるものです。
その部分は、ポスターや予告には使えないでしょうね。ネタバレだったり、画にならなかったりで。(過去の映画では、予告にラスト付近の重要な場面や、キャラクターの本性むき出し箇所が使われていることもあり、ネタバレじゃん!!!ってなりました。上手い事、編集されていると、場面の真意が見えなくて良い効果が出るんですけど。)
例えテンプレ化していても、お定まりのアクションやポーズ、見得切りは、見ていてテンション上がります。

殺し屋の片方、ジュールスは、相手を殺す前に聖書の一節を暗唱します。
それっぽい!何がどれっぽいのか分かりませんが。
ジュールスに、ある奇跡が起こります。
それが、本当に超常現象だったのか、ただの偶然なのかは分かりませんが、彼がそう感じて、生きる道を変えるきっかけになったら、それは、奇跡と呼んでもいいのでしょう。

この映画の主要人物には、自ら進んで「私を虐げて下さい」と願うようなマゾヒストは、いないようです。
そんな中で、命を狙ったり狙われたり、脅したり、脅されたりするので、必然的に、サディストっぽい人が被虐体験をする事になります。
「精神的、立場的、力量的に圧倒的に有利な者を、貶め、辱しめ、屈服させたい」というのが、監督の趣味なのでしょうか。
しかも、いざ、誰かを堕としたら、今度は堕とされる側になったりするのです。
なんというリバーシブル精神に富んだ脚本。
食物連鎖の図式がピラミッドではなく、円環という具合で、頂点というものがないみたいです。
弱い者を一方的に嬲り殺す描写もありますが、最凶王者のままでいさせてくれないのが、この映画。皆、何かと恥をかかされたり、人には言えない秘密を抱えてしまう羽目になります。それこそが、監督の美意識、萌えポイントなのかもしれません。
約一名、出てきた時からずっと、指図する側におり、終始崩れないキャラもいます。

全体を通した明確なテーマというのは、ながら見だったこともあり読み取れませんでしたが、ジュールスの唱える聖書の一説と、物語がリンクしていたのかもしれません。

【以下、ネタバレあり感想】

マフィアのボスの妻、ミアのレストランに於けるセリフ「トイレに行って戻ってきた時に料理が来ていると嬉しいわよね」が、印象に残りました。
普通…!
ボスの妻なら、もっと高級なお店もたくさん知ってそうですし、料理を待つ間の歓談なども優雅に嗜みそうなものなのに。

「赤」と「白」の対になったイメージが頻出していましたね。
どういう効果を狙ったものかは存じませんが、統一感はあります。

・ケチャップとマヨネーズ
・ウィンナー(ソーセージ?)とチーズ
・白いシャツと返り血
・口から吹いた泡と鼻血 ←ミア、麻薬過剰摂取(オーバードース)時

ほかにも何かあった様な気がしますが、赤と白は、性と暴力と死を思わせなくもないです。

ヴィンセントがトイレに入ったら、なんらかのフラグ発動。
登場人物が音楽にノリノリになったら、なんらかのフラグ発動。

八百長を持ちかけられたボクサー・ブッチは、せっかく逃げおおせたのに、わざわざ父親から譲り受けた金の腕時計を取りに戻り、そこで潜伏していた殺し屋マフィア・ヴィンセントを殺害し、ご機嫌で車を走らせていた所、今一番会ってはいけないマフィアのボスとバッタリ再会、故意に車で撥ね、その先で、ボスと一緒に監禁されるという超展開をします。
この流れは予想しようがなかったです。

ボス(マーセルス・ウォレス)とブッチの監禁スタイルですが、ダブルスキンヘッドギャグボールとか誰得!と思いました。どうやら、警察官(コスプレ?本職?)のゼット君得だったようです。ゼット君は、店主と組んで獲物を物色しています。
一緒に来た革ジャン覆面マスク首輪の彼は、何のためにいるんでしょうか。今回はブッチの見張り役でしたけど、基本、ゼットのペットなんですかね。ちょっと放置され気味の。
ゼット君がハイレベルの紳士過ぎて、今の私には、まだ理解できません。

ドSゲイのゼット君がスタイリッシュ去勢されて、床に這いずり回る様は大変かわいらしかったです。最初、きれいなお顔を吹っ飛ばされたと思ったのでしたが、もっと下でしたか。
その後、ボスと手下から手厳しい逆襲を受ける予定のかわいそうなゼット君ですが、ここから先は映像化しなくて良いです。
凄惨すぎて、さすがに萌えられなさそうなので。

金時計が数年間に渡り、二人の男の尻の中に隠されていたというエピソードは、ブッチの見た悪夢ではなく、リアル記憶なのでしょうか。
てっきりブッチ少年が、「そんな時計いらないよ!触りたくないよ!」というリアクションを取るかと思っていたのですが、そうでもなく、大人になった今でもとても大事にしてたんですね。
それを、奥さんは、持ってくるの忘れてしまいました。
ブッチの激昂は怖いですね。でも、奥さんの手前、優しい夫に戻って見せました。その後、車中で一人ブチ切れているのが、いい人なんだか悪い人なんだか分からなくて笑えました。
奥さんのお陰で、ブッチはボスの弱み(ゼット君に貞操を奪われてしまった)を握ることとなり、また、休戦状態に入ることができました。
無事、逃げおおせたのは、奥さんのミスと金時計のお陰だったのですね。イイハナシダナー(?)。

麻薬売人のランス君は、ニルヴァーナのカートっぽいルックスでかわいらしかったです。
まるで、お菓子でも包装するように、麻薬を小分けにしていました。
ミアの死に掛けっぷりを見て、やっぱりクスリ、ダメ、ゼッタイ。だなと再認識いたしましたよ。
「俺を巻き込むな!!!!死に掛けの女なんて連れてこられても困る!!!!!」ごもっとも。ランス君、なにも間違ったこと言ってないです。でも、薬を売った張本人ですから、責任の一端はあるんでしょうね。
駐車場によくある注意書き、「お客様同士のトラブル、事故、盗難の責任は一切負いません」みたいなノリで麻薬包装紙にでも明記してあれば、話は別なんですが。
過剰摂取ってあんなことになるんですか。
心臓に注射という処置が合ってるのか謎ですが、夜中に押しかけられたランス君、覚えたての医療知識でよくがんばりましたね。危なっかしいったらなかったです。
ランスがオーバードース時の対処法を知らなかったのは、「うちの客にそんな(OD起こすような)素人いなかったから(そもそも対処の必要な機会がなかった)」だと思います。
ミアって薬物慣れしてないんですかね?常習してたっぽいですけど。ヴィンセントの持っていた薬が想定していたものと違ったとかで量や摂取方法を間違えたんでしょうか。
私、うつろな目で鼻血流すミアを見て、「あ、死んだ、ボスの嫁死んだ、どうするのヴィンセント。ボスに殺されるぞ。」と心配しました。
ミアは、この夜のことをボスに内緒にしておきたいようです。
ボスも、ミアには、ゼット君の件、言えませんよね。
秘密を抱えた者同士、夫婦仲良くしていて欲しいです。

ミアが昔女優として演じた役の駄洒落セリフを恥ずかしそうに言うのがかわいらしかったです。その時、ミアは、ボスのオンナではなく、一人の女の子でした。
ダンスを踊ったり、薬をやっている時より、ずっと素で、魅力的でした。
ミアとヴィンセント、今後もうまく行くかも、という予感がしましたが、ヴィンセントは、ブッチ宅のバスルームかトイレから出てきたところを射殺されたので、それはないんですね。
ヴィンセントとジュールスは、組織に歯向かった者や裏切り者、ボスの気に食わない人を殺すのがお仕事のようです。
今回のブッチは、ボスとの約束を破ったわけですから、それでヴィンセントが送り込まれていたのでしょう。

負けるはずの試合で、勝ったブッチ。逃げるように去ったのは相手選手を殺したからではありません。
タクシーに乗ってから、初めて相手の死を知ったのですから。殺意もなければ、殺した実感もないのです。
あんなに美人で、「人を殺す事」に興味のある女性タクシードライバーなんて本当にいるんですか。
脇役なのに変にキャラが立っていました。

ヴィンセントとジュールスが、冒頭、二人の若い男を撃ち殺して、黒いスーツケースを取り戻した時、隠れていた第三の男(以下、三男)がいたのですね。生きたまま捕獲したのに、うっかり撃ち殺してしまうとはなんと言う過失。車中で頭を飛ばしてしまったのです。
うろ覚えですが、三男の撃った銃が、至近距離なのに、殺し屋二人に当たらなかったんでしたっけ?
…立場が逆だったかもですが、とにかく、ジュールスはそれを神による奇跡だと感じたわけです。
三男、生かされたと思ったらやっぱりすぐ死んじゃって、なんの為に出てきたんだよ!感がありましたが、かなりの重要人物ですよね、ジュールスにとって。

せっかくの奇跡の後ですが、今やらなければならないのは、血まみれの車をどうにかして死体を隠すことです。
そこで、友達のジミー宅を訪ねます。
ジミー役、監督本人が演じられているんですね。全然、気づきませんでした。
コーヒーを作っていて、恐妻家で、人を食ったようなキャラクターです。
掃除屋、ザ・ウルフ。彼は、唯一と言っていいくらい、人や立場によって言葉遣いや態度を変えない人だったように見えました。
ジミーは、殺し屋マフィア二人に言われて、イラつき難癖付けいていたのと同じセリフを、ザ・ウルフにも言われた時、普通に対応していました。一応、常識はあるんですね、ジミー。
掃除屋の指示は、冷静で的確した。
殺人現場片付け専門の業者さんなんでしょうね。
殺し屋二人に付着した血を洗い流そうと、裸にし、楽しそうに水をかけていた場面にも、何か、監督の趣味が垣間見えました。この二人、脱ぐと非常に良い体をしているんですね。(女性とゲイ視聴者に向けたサービスシーンのつもりだったのかも)
ザ・ウルフの彼女っぽいお嬢さんは、他の女性キャストに比べて見た目がちょっと…ゲフンゲフン…でしたが、きっとウルフは、女性を外見じゃなくて中身で見ているジェントルマンなんですよ。

あの、冒頭のカップル強盗なんだったんだろう、という謎が、映画ラストで明らかになります。
彼らが強盗をした店に、ヴィンセントとジュールスもいたんですね。
またしても、ヴィンセントがトイレにいる時に、事態が急変しました。
ジュールスは、先ほど「奇跡」を目の当たりにした事で、ヤクザ家業を辞めることに決めていました。
ですから、カップル強盗を傷つけることなく、殺す事なく、牧師のように諭し、事態を収めました。
と言っても、強盗達を、(トイレから戻った)ヴィンセントと供に荒っぽく脅したりはしていました。
散々店長や客を脅かし、いきがっていたカップル強盗が、とてもか弱く情けないものに見えました。
ジュールスの迫力と肝の据わり方に比べて、彼らは、あまりに小物です。
こんなところにも、立場のリバーシブル、逆転現象、が見られますね。

ヴィンセントがブッチに殺害された時点で、ジュールスはマフィアを辞めており、ブッチ狩りには参加していなかったのでしょうか。もし、ジュールスも一緒なら、ヴィンセントは助かったでしょうか。
それとも、二人まとめてブッチに殺されていたのでしょうか。
ジュールスは、神の啓示を受けた(と思い込んでいる)お陰で、命拾いしたのかもしれません。

黒のスーツケースの中身は、正体が分からず仕舞いでした。黄金の光を発していた所を見ると、金の延べ棒とかですかね。
まぁ、何であろうと構わないんですけど。
冒険活劇の主人公が目指す宝、組織間で奪い合う「システム」「兵器」、スパイ映画で取引される「ブツ」、「情報」、「記憶媒体」、等、その「物」を巡って物語が動き、登場人物の行動動機になるものを「マクガフィン」と呼ぶそうです。
例えば「機密文書」がマクガフィンである場合、そこに何が書かれているのかは作劇上さして重要ではない、という立場をとる監督もいらっしゃいます。
もちろん、その中身こそがお話の核、という場合も多いですけど。

複数主人公視点で、各人の物語が交差するという手法は、サウンドノベルゲームなどで見かけますが、映画でも有効なんですね。

テーマ:映画 - ジャンル:映画

  1. 2011/07/22(金) 16:11:28|
  2. 映画感想

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