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酒井順子「制服概論」

制服概論 (文春文庫)制服概論 (文春文庫)
(2009/01/09)
酒井 順子

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制服好きの著者が、制服の魅力について語った本です。
酒井さんが、自分で思う「制服愛好者になった理由」は、大まかには「まえがき」で述べられています。
1.制服を着て過ごしたことがないから
2.二つ以上同じものが存在する時に萌えを感じる性質だから
3.拘束と束縛に身を委ねる快楽があるから

「まえがき」以降は、様々な制服(学生服、職業服、運動服、儀式礼服)についてその特徴の説明、印象と、著者のときめくポイント、あるいは逆にあまり好きではない着こなし例、などが書かれています。

通して読むと、著者的には、「強制的に着せられている」「着る必然性がある」「自由を奪われている」「肉体や煩悩その他を封印している」などの窮屈感、ストイックに耐える凛々しい様、「学校を卒業したらもう着てはいけない」「期間限定」の刹那感、が萌えポイントが高いようです。

この本では、制服そのものだけではなく、身につける人の肉体や精神面にも言及していました。
文脈から切り離して要約すると著者の主張とずれるかもしれませんが――レースクイーンの「人」でありながら「物」でもある部分、短ランにデブは禁物、作業服には専門技術と体力が含まれている、軍服の下には鍛えられた肉体、など。

軍人の「上から与えられた任務を遂行するのみです」発言に「自分の意思を持つことが大切」と教育されてきた著者は、少し驚きつつも、「従いたい欲求」があるため、羨ましくもあったそうです。
これと、群舞に関する記述、
「エゴと自意識と責任とを捨て、完全に自分が一コマとして埋もれる快感、集団に任せきる快感、つまりは「一部になる気持ちよさ」をそこでは感じることができるのです」
と、最後の方のまとめ
「制服が好き、という嗜好はおそらく『何かに属しているのが好き』『群れるのが好き』という意識の現われなのだと思います」
をあわせると、人類補完計画的なイメージなんですけど。忘我。

別に全ての制服好きがこういう理由と感覚で制服好きなわけじゃないんだろうなとは思います。

著者の酒井さんは、本物の、所属母体から支給され規則で決められて制服にはときめくようですが、コスプレや応援団、軍服マニアなどが自主的に着ている制服には萌えないようです。

そこに付与された意味や属性、イメージがない、ただ制服を着ただけの人には興味なし、ということでしょうか。たしかに、粋じゃない感はありますね。

制服好きだと宣言しづらい現状について、「下手に「制服が好き」という発言をすると、頭が悪くて個性的ではない体制に流されるままのことなかれ主義者で進歩のない人だと思われるのではないか、という心配もあることと思います。」と書かれています。

私服化=先進とは限らないですよね。
昭和に制服を廃止し、私服化した高校が、最近になって、新たに制服を導入したというニュースもありましたし、時代によって制服の位置づけも変化しているのでしょう。

で、巻末解説が、嶽本野ばらさんなんですけど、この本にこの人選で合ってたんですかね?w
激昂されてるんですけどw彼の様に、身につける洋服がアイデンティティと深く結びついている人には強制拘束される魅力も制服のよさもてんで理解できないようです。一応最後、褒めてはいますが、かなり逆説的にです。
その中の一文―「偏向した美意識」―これは、持っていた方が物書きとしては武器になるかと思います。

嶽本さんの指摘では「この人が制服を好きなのは、制服を着る者の人格をまるで認めていないからこそなのだと。」「著者にとっては容器が大事なのであり、その中身への興味はない。」とあります。

画家、中村宏さんの絵だと、セーラー服少女が多いようですが、中には、少女の形を成していないものもあります。それでもセーラー服を着ているのでちゃんと少女なのだと分かります。
服装のフェチになるっていうことは、そういうものなのかもしれませんね。

タイトルが「制服概論」なのに、制服を着ている個々の人格について論じては焦点ずれますから、この本はこれで良いのだと思います。

解説を読んでいると、嶽本さん本人が、制服愛好者からの被萌えレベルが高い存在に思えてきました。
彼は、中学、高校と学ランで、苦痛のあまり学ランを憎悪し、けれども、学ランに手を加え立ち向かおうとすることは学ランに拘っていることになるので、結局、普通の学ランを普通に着こなすことで、制服に対してシカトをきめていたのです。
学ランをすごく嫌々着せられた上、拒絶のメッセージとして基本通り着こなす少年。

この本で述べられている「制服好き」は、大抵、制服を見るのも、着るのも好きな人の事です。
世の中には見る専門の人も多いでしょうね。

テーマ:読書感想 - ジャンル:本・雑誌

  1. 2010/12/14(火) 18:45:03|
  2. 読書感想文(小説)

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