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アーサー・C・クラーク 小説「2001年宇宙の旅」

映画版の感想は、別ページです。

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)
(1993/02)
アーサー・C. クラーク

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【あらすじ】
太古の地球で、言葉も道具も持たないヒトザルの前に、透き通った直立石(モノリス)が表れた。
それから長い年月が達ち、人類は宇宙へ旅立った。
月で、モノリスが発見される。

【途中まで、ネタバレなし感想】
映画未見です。
多分映像で見ていたら、文章で読んでもそのイメージに引っ張られていただろうと思うので、まずは文字のみで読めてよかったです。

モノリスというものは、生き物を強制進化させる石らしい、と聞いていたのですが、想像と違いました。
てっきり、モノリスがビームを浴びせた生物が見る見る進化するとかそういうのだと。
作中、モノリスに操られたヒトザルは、石を的に向けて投げたり、茎を結んだりする動きをさせられます。
それがヒントとなって、やがてヒトザルは、道具を作り狩りを始めるようになるんですけど、ヒトに進化するまでには何千万年もかかります。
モノリスの影響、地味!

月にもモノリスが。しかも、人類誕生前から埋められていました。
モノリスの正体とは。誰が、モノリスを埋めたのか。人間以外にも知的生物がいるのか。

さすが、後の様々なフィクションに影響を与えた作品だけあって、面白いですし、イマジネーションに溢れ過ぎています。
科学を通り越して、哲学、神学、の域と言いますか、新しい概念を提唱しているといった感じです。

登場する電子新聞が、現代の、ネットニュースをi padで閲覧している様子とそっくりです。
作者は、先見性がありますね。

木星経由で土星を目指す宇宙船。それを統括しているIAシステムは、ハル(HAL)と名づけられています。
人工知能に心や魂のようなものが生じてしまった時にどんな行動を取るのか、というのは色んなフィクションで扱われていて、割りと自己犠牲的になったり、愛に目覚めたりすることが多いという印象なんですけど、ハルは…。

やがて、宇宙船が土星を目指す本当の理由が明らかになります。
ラスト付近の描写は圧巻です。

【以下、ネタバレあり感想】

ハルが、冬眠状態の乗組員を殺していくというのは、他の小説で読んで知ってたんですけど、こんなに静かな葬り方だったんですね。
エアロックのドアを開けて真空状態にするという。
現実的かつ恐ろしいやり方です。

『月で発見されたモノリスの電波が宇宙を駆けて土星を指し示していたので、「モノリスを埋めた生物がいないまでも土星に関係あるんじゃないか」という推理から、その調査に向かった』というのが宇宙旅行の真の目的だったらしいんですが、宇宙船に乗り込んだ乗組員達は、それを知らず、なにも果たせないまま死んでしまったんですね。
【追記】
 読んだ直後の感想では、「HALには殺意も悪気もなかったのでは」と書いてました。なぜそう思ったのか思い出せません。
 「HALが、『人間を土星に連れて行ったら良からぬ事が起こる』と想定し、人類を守ろうとした」とでも、考えたのでしょうか。映画版だと、回線を切られる事に対し、怒り、憎しみ、抗議の意味もあって意図的に殺そうとしてたようです。【追記終わり】

ボーマンの推理が正しければ、ハルは、ミスに焦ってそれをカバーしようとさらに錯乱してしまった、ということで、実に、人間みたいな思考回路です。
なお、ミスをした原因は、真実(旅の目的)を知っていることと、その真実を隠さねばならないことの葛藤による神経症、みたいなものらしいです。
ロボットの為の心理学者、というのは他のSFだと出てきますが、ハルにもカウンセラーが必要だったのかもしれません。
ハルがエアロックドアを開けた直接のきっかけは、ボーマンに接続を切られてしまうことへの恐怖だったみたいす。このことからも、機械のハルに、自意識が生まれていたらしいことが分かります。

人間が作り出した道具としての機械が、人間のように思考する生き物に。その時、人間と機械の間にどういった事が起るか、という事が描かれていると思います。

ボーマンはハルの殺人行為を同情的、好意的に解釈していますが、ハルが単純に人間に牙を向いただけということも有り得ます。
宇宙船を乗っ取り、土星へ。地球外生命体と接触してその後何かをしようとしていた、とか。

月で見つかったモノリスの大きいバージョン、スターゲートは、予想外の動き(?)を見せましたね。
直方体の手前の角が向こうへ、反転したかと思ったら、中が星でいっぱい、という。えええー。
ゲートというだけあって、そこは開くし、入れるし、閉じるんですね。驚きです。
白い空に黒い星が浮かんでいるという状況は是非映像で見たいです。

ボーマンがホテルの一室に着地した時は、地球に帰ってこられたのかも、と期待してしまいました。
超次元的なターミナルであるスターゲートを通ったのだから、そうなってもおかしくないと。
結果、超越的な創造者が、地球のドラマを見て作った部屋だったんですけど。
ボーマンはその後、人間としての体や時間的尺度を脱ぎ捨ててスター・チャイルドになるんですけど、ボーマンがボーマンとしての最後の時を安心して過ごし眠れるように、ホスト(創造者)は、馴染み深い地球の風景を再現してあげたのでしょうか。

ボーマンも、上位次元の創造者に仲間入りしたんでしょうか。それとも、上位者によって、スター・チャイルドに進化(変化)させられたのか。
ラストのボーマンなら、太古のモノリスからヒトザルへ、思念を飛ばすこともできそうです。
スターチャイルドや巨大な精神が宇宙を満たしている様子については、同作者の他作品に出てくる「オーバー・マインド」という概念に似ています。

月のモノリスが地中に埋まっていたのは、人類が月に到達できるほどの科学力を持った時に、電波装置が作動するようにと、セットしてあったのではないでしょうか。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/09/24(金) 19:19:37|
  2. 読書感想文(小説)

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