野良箱

同人漫画サークル

映画「借りぐらしのアリエッティ」感想

借りぐらしのアリエッティ サウンドトラック借りぐらしのアリエッティ サウンドトラック
(2010/07/14)
セシル・コルベル

商品詳細を見る

【あらすじ】
心臓病の手術を控えた少年・翔は、祖母の家で療養することになる。
その初日、庭で小さな女の子アリエッティを見かけた。アリエッティは、植物の葉を採取しに来ていたのだ。
小人は、人間の家の床下などに住み、少しずつ人間の家のものを借りて暮らしている。人間に見つかったら、引っ越さなければならない。

【途中まで、ネタバレなし感想】
これは、家族やお子さん連れで見るのにお勧めの映画ですね。事前の期待よりも大分面白かったです。

物語は一つの屋敷の敷地内で展開しますし、ストーリーの起伏としても、それほどの大事件、例えば、魔女が空飛ぶとか、豚が空飛ぶとか、少女が空飛んで王蟲にぶっとばされるとか、天空に城があるとか、そういうことはありません。
しかし、動きのダイナミズム、空間の巨大感など、そういったアニメならではの魅力は十分発揮されてましたよ。

淡々としていて静かで、でも時々、ハラハラ要素や、頭脳プレイもあって、ということで、小さい物語ながら楽しめました。
小人に限らず、人間でも動物でも、今いる場所、認知できる空間が全てなのだから、その外を描いてもしょうがないといいますか、映画作品としての焦点がぼやけるので、今作の舞台範囲の狭さ、期間の短さで、十分だったかと思います。

彩色や絵柄、背景などが、スタンダードジブリな感じで見やすかったです。もののけの前くらいな感じでしょうか。
千尋、ハウルのあたりの毒々しいまでの装飾・色彩や、ポニョに見られたパステル調の歪んだ背景とかそういうものはありませんでした。が、それが良かったです。

「パっと見てストーリーの意味が分かる」度合いだと、最近のジブリ作品の中ではトップではないでしょうか。
意味不明なりの変なパワーと神話性と独自のフェティシズムと狂気が感じられるのが、宮崎監督作品の強みだと思いますけど。
アリエッティは、監督が違いますからね。

主題歌は、歌詞が外国語でキラキラした透明感があってガーリッシュな曲なので、オシャレな外国映画みたいでよかったです。

アリエッティがとても可愛かったです。髪を下ろしてても上げてても似合うし、動きがよいです。
初登場のカットから目を惹き付ける魅力がありました。美少女!

芸能人が声当ててるんですが、違和感なしでした。
翔君の少し影がある病弱な美少年感とか、アリエッティのこの年頃の少女にありそうな元気さと少しの憂い、落ち込み、などが良く表現されてました。
お父さんの頼れる渋さや、そんなに美人でもないのになんだか生足や声がエロかわいいお母さんというのも良かったです。

小人から見た住宅や人間の巨大感がすごいです。
その他のカットでは、普通に見た感じなのに、小人から見た感はどうやって出してるんですかね。

小人が、小人の家にいる時は、家具が通常のスケールに見えます。
ただし、水の表現が粒大きくて粘着質なため、この食器やティーポットはとても小さいのだなぁということが一目で分かります。
切手を壁掛けにして、絵画のように飾ってあるのがかわいいです。

家の裏側や下がこうなってるかもと想像すると楽しく、これを見た子供などは小人ごっこをしそうです。
壁内部の通路として使っている釘は、お父さんが昔打ったのですかね。踏み外したらこわいです。
「狩り」ならぬ「借り」行為は、知恵と体力を絞った、登山やロッククライミング、トレジャーハンターのようでワクワクです。
棚かテーブルを登るために、お父さんが足に両面テープみたいなものをつけるのですが、そのテープを切る様が大変かっこよかったです。左足を軸にしてテープを巻き取り、切っていきます。なにやらとてもプロっぽい仕草。

これから先、角砂糖や洗濯バサミやマチ針を見る度にアリエッティを思い出しそうです。

虫がちょくちょく出てきますが、目がくりくりした漫画っぽいデザインになっており、多少ビビりますが虫嫌いでも直視できますよ。

画面に締めるオバサン率が高いです。ババアのドアップ!イエー!!!

翔君は、ベッドで横になっているカットが多いです。病気なので。

【以下、ネタバレあり感想】

翔君は、生きる意志が希薄ですね。
手術は失敗する気がしているわけですが、それをさほど恐れていません。
これ、あんまりリアルにこわがり過ぎても、見てる人、特に子供が不安がるので、これでいいかもしれませんね。
厭世無気力の気がある少年というのもある種の魅力がある気がします。
どうせみんな滅んでいくんだ、生きててもいいことなんてそんな無いんだ、的な。

そんな男の子が、アリエッティの母を捜すため、旅立つアリエッティを見送る為、病気の体をおして走るというのは、意志の強さが伺えます。
正直、一回は大発作起こして倒れるだろうと思い込んで見てました。
それがアリエッティにさらなる影響を与えそうだと。

アリエッティとの会話パート、翔君、ズバズバ言いますね。
どこまでもおとなしくて優しい子ってわけでもないみたいです。

どんどん数が減っていく種族の一員本人に向かって、「君達は滅び行く種族なんだよ。」って辛辣です。
見てて、ひでえwwwww毒舌wwwwバッサリwwwwと思いました。
でも、本当のことなんでしょうし、それを言ってよかった面もあるのかもしれませんね。
翔がアリエッティを目撃したことが引越しに繋がったわけですが、アリエッティ一家は、あの家にずっと留まっていたらお家断絶してたんでしょうね。
「自分達は滅び行く種族なのかもしれない」という自覚を持ったことも、引越しの動機として大きい役割を果たしてそうです。アリエッティの中では、というか、物語上の意味として。

ラストの翔君の、「僕も生きる勇気が湧いたよ」「君は僕の心臓の一部だ」は、名言感もありますが、口では言わなくてもそれが分かるようなエピソードを入れてくれるとなお良かったかもしれません。
ああ、でもそれだと、言葉そのもののパンチが弱くなるので、やっぱり印象に残る分言って良かったのかも。

例えば、文字通り、アリエッティの洗濯バサミが、電池になってて、心臓ペースメーカーの部品になったりすると超分かりやすいですが、それだとSFファンタジー過ぎますからね。
(髪留め洗濯バサミ=充電器 という連想は、ゲーム、ワンダープロジェクトJ2の影響だと思われます。そのゲームはクリアしていないしストーリーも覚えてませんが、髪留めの設定は大好きでした。)

翔君は、洗濯バサミを持って手術に挑むんでしょうね。手術室までは持っていけないでしょうが。
心臓と言うより、生きる意志の一部、その原動力にアリエッティとのひと夏の交流が影響している、という事でしょうね。
アリエッティのように、棲家を変えてまで生き延びようとするか弱い種族の健気な力強さを見たので、よし、僕も、という。

最初、アリエッティがマチ針を拾った時点で、これは…動物との戦闘くるぞ…目だけはやめて!猫、逃げてー。と心配になりましたそんなことはありませんでした。
はじめての冒険で得た獲物で、母親の窮地を救う、という使い方が良かったです。
母の閉じ込められた瓶の蓋になっているサランラップをマチ針で破ったのです。

猫、もっふもふのおデブキャットでしたね。触りたいです。
翔君のお腹の上でゴロゴロいってました。

アリエッティと翔君の出会いの場面、面白かったです。ティッシュを引き抜こうとして見られるわけですが、アリエッティはそのシーンを含め、何かの物越しに影だけ見えるという演出が多かったです。なぜかエロティックに見えました。
そうしてニアミスが続いた分、はじめてアリエッティと翔君が直に触れ合った時の無音が鳥肌寸前でした。
カラスの暴れる音でうるさかったところ、翔君の手がアリエッティを捕まえたのです。

ドールハウスが出てきたので、これは、最後、アリエッティ一家は、そのドールハウスに引っ越してめでたしめでたしでした、ってなるんだろうな、と思いましたが、この想像は浅はかでしたね。
あの屋敷の中の、さらに小さな家の中にいる限り、アリエッティ一家は孤立しており、絶滅するのですから。
子孫を残すことだけが生きるということではありませんが、生物の基本ではありますからね。

翔君まさかの暴挙!!とびっくりしたのは、アリエッティの家を強制リフォームした時ですね。
てっきり、ネズミ捕り業者が早くもやってきて、棲家の解体撤去工事をはじめたものかと。
翔君!もっとやさしく!そして、小人さんとお話をして、意思を確認してから、台所を取り替えて!!!!と感じましたが、そうすると、あまり記憶に残らないし、この巨大な手は誰のものだ!?というプチミステリーも味わえないのでまぁいいかと。

翔君、なかなか謎に包まれた行動原理をしています。
そりゃ、本来小人の為に作られた素敵な台所を小人にあげたいのは分かりますが、彼らがそれまで営んできた生活の結果できあがっているあの空間を突発的にぶっ壊すという行為に驚きました。
これ、現実で例えると、慎ましやかではあるけれど家族と共に暮らしてきた思い出の詰まった家!それを、勝手に豪邸に建て替えてあげました!というのに近いでしょうね。

一旦小人が使った台所を、ドールハウスに戻した、けれど、小さなポットの中には良いにおいのハーブが、というのは良い展開でしたね。
小人は小人なりにそこに生きていたんだね感もあり、かつ、物語としては、祖母が小人の実在を確信するに至る作りになっているので。

お手伝い(女中、メイド的な)ハルおばさん大活躍。画面に占めるハルさん割合の高さよ。
ハルさんが、アリエッティ一家を「泥棒の小人」って言ってましたが、これ真実ですよね。
借りてるんなら返さなきゃなりませんからね。持って行きっぱなし、借りパクですよ。
これで、小人が害虫、ねずみ駆除をするとか、それらを食料にしているとかならば、宿主の人間と間借りしている小人のギブアンドテイクな関係ということになるんでしょうけど。
もし、自分の家に借りぐらしの小人が住み着いていたとして、角砂糖一個、ビスケット数枚、ティッシュ一枚取られたくらい気づきませんし、それを知っても別に腹は立ちませんね。
小人にとっては大収穫ですが、人間にとってはほんの少しの損害ですから。

この映画を見た後なら、身の回りでなくし物をしたり、思いのほか早く食べ物や飲み物が減ったりした時などに、「さては小人が持っていったな…」と思うぐらいの心の余裕ができそうです。

ハルさんは、最後、精神異常者扱いされてましたね。私は小人を見たの!!!!!と言い張る頭のおかしなおばさんみたいなかわいそうな目で見られていました。
ハルさんは、小人を捕獲はしたいけれど、殺すつもりはなかったみたいです。ネズミ業者にもそう言ってましたし、アリエッティママを瓶に閉じ込めた時も、ラップに空気穴空けてましたし。

肩にアリエッティを乗せた翔君が歩いている姿は、まるで巨大ロボットのように大きく見えました。音や、動画、カット割り、撮り方などに、その秘密があるんでしょうね。

アリエッティの靴は仕込み針になっていました。カーテンや布を登るための道具なんですね。
鞄にも、手で持つ用の針が入ってましたし。こういう細かいギミックが楽しいです。

アリエッティと翔君で言葉が通じ、「わすれもの」という字も読めたことから、小人とその家主は、言語体系が同一だと分かります。
らくがき 絵茶 絵チャット絵 二次創作 版権 同人

突然登場したスピラー。最初、名前なのか、小人=スピラーという種族名なのか分かりませんでした。
どうやら個人の名前ならしく、イラストSNSのPixivなど見ると、スピラーくんは人気なようです。
彼、決してイケメンではないんですけど、愛嬌のある顔立ちをしています。
褐色肌の顔には白いラインが。インディアンと黒人とアジア人の間みたいなルックスです。
サバサバして少しぶっきらぼうな男らしい性格と、弓矢を携えているワイルドさ、情報通な所などがカッコイイです。でも、背が低くてかわいくもあるのです。
今後、スピラーとアリエッティがくっつきそうな予感ですね。
スピラーは初対面時でアリエッティに一目惚れしている可能性があります。表情や態度には殆ど出しませんでしたけど。ヤカンの上で、木の実みたいなものをアリエッティにあげてましたし。
アリエッティが翔君との思い出なんて語った日には、ムッとしそうです。自分でも気づかないようなジェラシーで。
アリエッティ一家とスピラーは、人種が違いますね。同じ小人でも。

初対面で一目惚れと言えば、アリエッティもティッシュ取る時に翔君の顔見て、この男の子かっこいい、と思ったように見えました。
顔が赤くなっているようだったので。
本当は、どうしよう!人間に見つかっちゃった!!!!大きい!こわい!殺される!お父さんごめん!私失敗しちゃった!という感情からのあの表情なんでしょうけど。

アリエッティ一家とスピラーがヤカンの舟に乗って旅立つ所で物語は終わります。
行き先がどんな所なのか、新居ではどんな暮らしが待っているのか、それは、観客の想像に委ねられます。
また、翔君が手術に望む場面など、外の世界は徹底的に描かれません。
冒頭、療養に来る前に少し街が映ってたと思いますけど。
時間と空間を区切って、そこだけを切り取り、前後をぶった切る手法は、好きです。

翔君の手術ですが、ナレーションで「僕は、あの夏の数日間を、祖母の家で過ごした」みたいに過去形で語ってたくらいですから、成功したんでしょうね。

テーマ:映画館で観た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/07/22(木) 05:16:16|
  2. 映画感想

FC2Ad