野良箱

同人漫画サークル

映画「十二人の怒れる男(原題:12 Angry Men)」

十二人の怒れる男 [DVD]十二人の怒れる男 [DVD]
(2009/11/20)
ヘンリー・フォンダマーティン・バルサム

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【あらすじ】
少年による父親殺害という事件の裁判に表決を出すため、12人の陪審員が一室に集まり討論する。
状況証拠や目撃証言によれば、少年が犯人であることは確定的であり、有罪は免れないかに見えた。
しかし、陪審員8番の男だけは、無罪の可能性を指摘、証拠についての疑問点を挙げて行く。

【途中まで、ネタバレなし感想】
タイトルしか知らないでDVDを借りました。
なので、白黒映画であることも、密室劇であることも存じませんでした。

この物語は、ほぼ全編同一の部屋の中で進行します。
全体の9割5分以上は、同じ場面です。

推理小説的な部分があり、視聴者に対して大変フェアな作りになっています。
というのも、後々議題に挙がるような証拠は、余す所なく提示され、その後何度も繰り返されるのです。
何の気なしに聞き流していると、少年が有罪としか考えられません。

家の間取りパネルや凶器という物的証拠も登場し、視覚的に分かりやすいです。

1時間半くらいずっと議論している映画ですが、目から鱗なセリフや、おっと驚くような場面があって楽しめました。

陪審員が討論を始める前や始めた直後、皆、だらけていてやる気がなくテキトーなのが笑えました。
途中で、自分の広告業の営業を始めたり、○×ゲームしたり、一刻も早く野球を見たくてうずうずしていたり。

【以下、ネタバレあり感想】

証拠の飛び出し飾りナイフをいきなりテーブルに突き立てたので驚きました。
貴重な証拠をそんな扱いしていいのか!?
と思っていると、二本目のナイフが突き立てられさらにびっくりです。

当初、凶器のナイフはとても珍しいもので、これを持っている少年が犯人で間違いない、ということでしたが、これはナイフ屋の主人がプレミア感を煽って売っていただけみたいですね。
別の店で安いものが簡単に手に入ってたのですから。

通過する電車ごしに女が殺人を目撃したという証言と、同じアパートに住む老人が物音と叫びを聞いたという証言、一見筋が通っているようですが、矛盾していたんですね。
全く気づきませんでした。
電車が通過していて窓が開いていたら、うるさくてとても人の声や倒れる音など聞こえないのです。これは盲点でした。

さらに、老人が階段を駆け下りて出て行く少年を見たという証言にも疑問が生じます。
片足を引きずった老人には、そんなに速く走れるはずがなかったのです。

電車ごしに少年が刺す所を見た女性、彼女は普段は眼鏡をかけているのですが、事件当時はベッドの上にいたから眼鏡をかけておらずよく見えなかったという疑惑。
これ、気づいた陪審員がすごいですね。眼鏡をかけている人は、鼻の横に独特の溝があり、眼鏡を外している時には無意識にさすってしまう事があるのです。そして、女性は、なるべく人前で眼鏡をかけたがらない。

陪審員達(主に8番)は、少年が見た映画のタイトルを忘れたことも、パニックだったらそうなるだろうと予想し、また、ナイフの指紋をふき取ったのにナイフを忘れて、ノコノコ3時間後に戻ってくるか?という点についても指摘します。

父親より背の低い少年が上から刺すか?上から刺す場合の持ち方だが、ストリートキッズなどナイフを使う者でそうやって持つ子はいないぞ。という話が出てました。
ストリート出身の陪審員がいるんですよね。それと移民の人も。
こういう所に、アメリカの社会情勢が反映され、また、それぞれの人生を活かした推理に繋がっていたようです。

胸の刺し方の実演検証の時など、「この陪審員の間で殺人が起きてしまうのではないのか」とハラハラしました。
時々スリリングな要素を挟んでくるのも、観客を飽きさせない為の技術なのでしょうか。

少年が父親に「殺すぞ!」と言っていたが、そんなのよく言うし、いつだって実際に殺すつもりないじゃん?という議論が白熱した時に、有罪を主張していた人がキレて「殺すぞ!」みたいに言いましたよね。
身を持って、殺人動機やその衝動の強さへの疑問が生じたことを理解したわけです。

陪審員12人は、少年について不都合な劣勢をいくつも逆転させて、無罪の結論を出します。

が、実は、少年が本当に犯人なのかもしれないんですよね。
人の命がかかっているのだから、真剣に考え、確実じゃないなら、疑わしきは罰せず、ということでしょうか。

この映画では、8番の話術や熱意、他11人の心変わりしていく様子を描いていてそこが面白かったわけですが、必ずしも事件の真相は突き止めていません。少年が冤罪なら、真犯人がいるわけですが、そこには一切触れません。
この映画の出した結論が、全く的外れな空想である可能性も十分にあります。

8番がいなかったら、最初の投票であっさり全員「有罪」に投票して、少年は死刑になっていたのかもしれませんね。

早合点しないこと、周りの意見に左右されないで自分の考えをしっかりと持つこと、人を説得するにはそれなりの理路整然とした説明が必要であること、固定観念に捕われないこと、柔軟な姿勢を持つこと、など様々なことを教えてくれるようなお話でした。

トイレのシーンで、タオルが引っ張っても出てこなくて、手前に移動したシーンや、暑い日であるということ、途中で雨が降り出したこと、付きたてたナイフ越しに人物が映し出されること、これらには作話上、演出上なんらかの意図がありそうなんですが、DVD返してしまったので確認できません。

暑いので、登場人物はイライラしやすくなりますし、服や帽子を少しずつ脱いで行きます。
天気が急変することを含め、有罪を信じていた陪審員達の精神状態が変わっていくのを表しているのでしょうか。
単に、密室だと時間経過が分かりにくいから、そうやってるだけかもしれませんが。

ナイフ越しに映る人物は、どんな共通性がありましたっけ。ひょっとして、今まさに説得されている渦中にある人物で、その次に無罪派に転換する人だったりしませんか?覚えてないので、あくまでも予想ですが。

殺人事件は全く解決していませんが、今回のお話はそこがメインじゃありませんから問題ないですね。

テーマ:DVDで見た映画 - ジャンル:映画

  1. 2010/07/10(土) 03:04:51|
  2. 映画感想

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