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同人漫画サークル

高木彬光「死神の座」感想

死神の座 (角川文庫 緑 338-8)死神の座 (角川文庫 緑 338-8)
(1975/01)
高木 彬光

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【あらすじ】
名探偵と名高い神津恭介は、友人の芦部に誘われ軽井沢行きの列車に乗った。
隣の席には、芦部ではなく見知らぬ女性が座り、彼女は軽井沢での殺人を予言した。
それは、占星学に基づくものだった。
女は途中下車すると、立ち食い蕎麦屋で男に平手打ちをかました。それを見ていた神津には訳が分からなかったが、そのまま軽井沢へ向かった。
到着したホテルでは、顔のない死体が発見され、その後、遺体と同姓同名の男がやってきた。
これが連続殺人に発展する。

【途中まで、ネタバレなし感想】
神津恭介シリーズというのは沢山あるらしいですが、今の所これしか読んでないです。

占星術、謎の外国人、身元不明の死体、同じ名前の男、財閥の跡取り問題、暗号文、難解なドイツ語原書、不確かなアリバイ、ということで、とても推理小説らしいお話でした。

ミステリにオカルトが絡むものって面白いですね。大抵、科学的(化学的)な結論が出るんですけど。

学問としての占星術なんてものがあるんですね。
てっきり、スパイス的な意味でちょちょいと資料を参考にして、占星学要素をちりばめてると思ったんですけど、作者はガチで占いを信じていて、占いや易に関する著書もあるんですね。(wikipedeiaより)

この話の核になっていた学説は、「人間が生まれたときに、アセンダントという第一宮に、死神の座ともいわれる蠍座が来ていて、そこに凶星の火星や土星がはいって来ると、その人間は必ず、人に殺されるか、人を殺すことになる」というものです。
本編と絡まない部分で、それが証明されていました。そのことについては、特に科学的な理由はつけられておらず、何気に占いを肯定する形になっていました。

神津や刑事など、多くのキャラクターは、占いなど非科学的な迷信だ、と軽視するような立ち位置でした。少なくとも最初の方は。
占いというものが一般的にどう見られているかを、作者もずいぶんご存知なようです。身を持って非難に晒されたこともあるのでしょう。

顔を分からなくした死体と言えば、別人とのすり替えだろう!そして、まだ顔を合わせていない人についての情報は、もしかしたら、既に知っている人と同一人物の話かもしれない!などと予想しましたが、すごい勢いで外れました。
私の推理力では歯が立ちませんでした。
犯人も分かりませんでしたし。
連続殺人ということで容疑者が絞られていくにも関わらず間違いました。

【以下、ネタバレあり感想】

2人目に殺された人が、山で穴を掘っていて死んだということだったので、「宝探しか?」というのは、ピンときました。

月世が、さも宝が実在するようにして、5人の婚約者候補を競争させるけれど、本当はそんなものないし、結婚したい本命がいますから。というかぐや姫戦法だったようです。

弁護士の西野が本物の沼田で、綾子は架空の人物、本当は、列車で神津と同席した女こそが新藤財閥の娘・月世なんだろう、と考えましたが、大外れでした。
綾子が、新藤の娘という箇所は一致しているのですが、それは後から判明した偶然の事実ですし。

浅野五郎という男が犯人でした。宝探しの暗号を作ったのも五郎です。
最初の3人の殺人については直接の動機がなかったため、探偵も予想できませんでした。
殺しの本命は、月世でした。月世を自殺に追い込み、自殺に見せかけて殺す、そうすれば、自分の恋人であり、新藤の隠し子である綾子が唯一の財閥継承者となり、そして自分はその婿に、という筋書きだったようです。
そんなの推理できませんよ。難しい…。

沼田兄は、沼田弟が殺されてから動きだしたらしく、顔が似ていたこともあって話をやっかいにしていましたが、本来は連続殺人と別件だったんですね。
沼田弟は、まだ生きているんじゃないかと本気で思ってましたよ。

神津と綾子が電車で乗り合わせるよう画策したのも、殺人事件の犯人ではありませんでした。
新藤が、「娘と高名な神津助教授が仲良くなれたらそれもいいんじゃない?」と、見合いのつもりで仕組んだことなのです。
綾子が、神津に気のふれた女だと思われるのも厭わずに、占星学について講義したのも、ワザと嫌われて縁談を壊すためでした。父にはまだ知られていないけれど、本当は、浅野という恋人がいるので。

つまり、殺人事件と平行して、いくつかの無関係な思惑が絡み合っていたお話なんですね。
シチュエーションがいい具合に浮世離れしていて楽しめました。

テーマ:文学・小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/06/08(火) 00:09:33|
  2. 読書感想文(小説)

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