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監督・三谷幸喜「ザ・マジックアワー」(The Magic Hour)感想

ザ・マジックアワー スタンダード・エディション [DVD]ザ・マジックアワー スタンダード・エディション [DVD]
(2008/12/03)
佐藤浩市妻夫木聡

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【あらすじ】
ホテルの支配人・備後登(びんご のぼる)は、マフィア手塩商会ボスの愛人・高千穂マリ(たかちほ マリ)に手を出したので、マリと共に消されそうになる。しかし、幻の殺し屋・デラ富樫と知り合いだととっさの嘘を付いたことで、命拾いをする。
助かるためには、5日以内にデラ富樫を連れて来ることが条件だが、そのデラはどこにいる誰なのか全くわからない。
そこで、売れない映画俳優・村田大樹(むらた たいき)を騙し、撮影を装ってデラ富樫を演じさせる。

【途中まで、ネタバレなし感想】
テンポ良く、画面の色合いもよい感じでした。
作中作は、白黒映画です。

「マジックアワー」とは、映画・写真業界の用語で、日没後数十分間、わずかに残光が残った状態で、一日で一番美しい時間とされているそうです。
この作品の中でも、象徴的に登場します。

コメディでありつつ、いつデラが偽者だとバレるのか、村田はいつ、映画の撮影ではないと気づくのか、というハラハラ要素があります。

映画撮影だと思い込んだまま、ヤクザとマフィアのガチ戦闘に巻き込まれる村田のデラ富樫っぷりが板についてました。
ナイフを舐めてみせる行為は、村田お気に入りの演技なようです。
エキストラとしては、やけに暑苦しく大きい芝居なのですが、伝説の殺し屋ならこんな感じかもなという雰囲気です。

村田とヤクザサイドの、お互い勘違いしたまま、それでいて、やけに噛み合う会話がギリギリで面白かったです。
村田は、あくまでも役者論として言っているのに、ヤクザがマフィア業界の話と取ったり、その逆であったり。

古きよき映画へのリスペクトが感じられる作品でした。

【以下、ネタバレあり感想】
村田は、騙されたと気づいてからも、デラ富樫を演じてくれました。
最初は、売れてなくてかつ、デラっぽいという理由で村田をチョイスした備後ですが、途中からは、本気で村田に肩入れしていたようです。
思わぬところでラッシュを見ることとなった村田は、デラ富樫として華々しく散って役者を辞めることにしました。
てっきり、大画面で自分の演技を見た村田が、己の芝居の下手さに気づき絶望したのかと思いましたが、そうではなく、備後監督が、自分の一番良い演技を引き出してくれたということを知ったようなのです。
(数度に渡って、別の撮影隊からカメラを拝借していたので、その中に映像が残っていた。)

人生で一番輝けるはずの時間マジックアワーをものにした役者がスターだととすると、村田は、すでに何度かそのチャンスを逃していそうです。
しかし、憧れの老年役者が言うとおり、マジックアワーを逃した時は、次の日を待てば良いのですね。
その役者だって、再び輝きたいと俳優業に関わり続けているのです。
本当、彼に比べたら、村田はあまりに若いですよ。役者をあきらめるには。

後に名演技と言われるものも、実は、全く別の心理、状況から行われていたものだった、そんな事も俳優には良くあることなんでしょうね。
若い頃のガンアクションが今でも染みついているおじいちゃんが可愛くて格好良かったです。

ガチ銃撃戦で生き延び、かつ、誰も殺さないで済んだ村田は、相当な運の持ち主ですね。

弾着職人のなべさんは良い仕事をしてました。

ラストシーンは、本来、銃撃戦の果て、車が爆発して、デラ富樫が死ぬというものだったようです。
しかし、芝居だと気づかないボス天塩が予想外の動きをし、マリと寄りを戻してしまったので、それは中止になりました。
ハッピーエンドではありますが、締まらない雰囲気が漂う中、本物のデラ富樫が現れます。
ホテルにいた眼鏡をかけたおじさん清水医師が、その正体だったようです。
デラは偽者であるところの村田に怒り、銃で殺そうとしますが、村田は指を銃の形にして「バン」「バン」と撃つふりをします。
周りに待機していた名スタッフ達が、タイミングよく弾着を操作したり効果をつけたりすることで、あたかも銃も持たずに撃っているように見えます。さらに、車まで大爆発したものだから、本物のデラは逃げ出してしまいました。その不思議現象が映画撮影班の手によるものとは夢にも思わなかったのです。

支配人・備後やクラブ「赤い靴」の従業員・鹿間夏子(しかま なつこ) - 綾瀬はるかが、銃撃を受けた演技をして倒れるのですが、いかんせん演技については素人な為、死に方が上手くなくてかわいかったです。

ボス(西田敏行)の側近(寺島進)が気に入りました。
彼は、強面で、周りより背が低くて、ヤクザ者が様になっていて、そして、天然、でした。
本物のデラ冨樫と同じく、村田は銃がなくても指先一つで撃ててしまう超能力者だと勘違いしてしまったようなのです。

人生を映画に例えた時、脚本や役者も重要ですが、それを影で支えるスタッフも大事な存在なんだと思わされました。

後日、人に聞いた説ですが、デラのマネージャー(小日向)が、ホテル内で何度砂糖壺を掬っても砂糖が入っていないシーンは、「映画のセットみたいな街」ということと掛けた、「砂糖すら小道具みたい」という演出だったのではないか、との事です。少しメタフィクションっぽいですね。実際、セットと小道具なわけですし。
マネージャーは、狙撃されたり散々でしたけれど、あんなに売れない村田にずっと付いていてくれる、村田の一番のファンであるという点がグッときました。

テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

  1. 2010/05/12(水) 09:57:03|
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