野良箱

同人漫画サークル

筒井康隆「男たちのかいた絵」感想

男たちのかいた絵 (新潮文庫)男たちのかいた絵 (新潮文庫)
(1978/10)
筒井 康隆

商品詳細を見る

【あらすじ・概要】
ヤクザ×異常性欲・人格異常な短編集。各タイトルは、ジャズの名曲になっているらしい。
「夜も昼も」…ドMが反転してドSっぽくなっているヤクザが拳銃片手に脅しまくる。
「恋とはなんでしょう」…付き合っている兄貴が大好きなゲイのヤクザが、組長命令で人質として事務所に差し出される。そこで他の男に傷物にされる。 
「星屑」…超マゾヒストのヤクザが、あえて拷問されておほほほほほほほほ。加虐側のヤクザが気絶するほど凄惨な状況に。
「嘘は罪」…嘘つきヤクザが兄貴分の殺人に乗っかる。という話だと思う。
「アイス・クリーム」…エディプス・コンプレックスのヤクザがアイスを買って欲しがる話。
「あなたと夜と音楽と」…八郎というヤクザは、「音楽学校にさえ行ってりゃあ」と後悔していた。
「二人でお茶を」…杉夫と松夫という二つの人格を持つヤクザの話。
「素敵なあなた」…ヤクザの愛する飼い犬に子供が生まれた。

【少しネタバレ感想】
再読です。以前は、あまりに残虐なシーンがあってまともに読めませんでした。
数年経って、そろそろグロ耐性も付いたかなと読み返しましたが、やはりきつかったです。
この本は、痛いのやグロテスクな暴力表現が苦手な人は絶対に読まないで下さい。
特に「星屑」はきついですよ。行き過ぎたギャグとして読めば良いんでしょうが。

眼鏡に関する描写が細かかったです。単にキャラ書き分けの特徴として出てくることもありますけど、フレームの形やレンズの状態がしっかり書かれていることもあります。

登場人物が変態ばかりで、性描写も多いので、嫌いな人にはお勧めできません。

以下、各短編についての一言感想です。

「夜も昼も」。MとSは紙一重なんですね。「こんな悪夢みたいな死にかたは、絶対に嫌だ」に対して「どんな死にかただって、悪夢さ」と返したのは、ハードボイルドっぽくてかっこよかったですが、状況が変質的すぎます。

「恋とはなんでしょう」。ゲイカップルが純情な感じがしました。

「星屑」。ぎゃー、グロいー。これはひどい。

「嘘は罪」。「自分は殺ってない」と言うことで、逆に「殺った」と思い込ませたいんですかね。

「アイス・クリーム」は、父親に説教と暴力だけを受けて育った息子の話です。
父親が唯一してくれた優しい事とそれ以外の事は、全く釣りあいが取れてないのですが、それでも主人公は、完全に父を憎むことはできないのです。
投影という要素も大いにありました。別の人に父を重ねる行為です。

「二人でお茶を」。この本に収録されていることも、筒井さんが書いたということもすっかり忘れておりましたが、二重人格の男の話があってラストがこうなった、というのだけ覚えていました。
この終わり方、好きです。
杉夫が暴力団員になったのは、どちらかと言うと第二人格であるほうの松夫の性格によるものなので、こういう結末になった責任も重大です。松夫はワルですが、男気は感じました。

「あなたと夜と音楽と」は、主人公の死ぬシーンが何度かあります。
場面が繰り返しつつ結果が変わっていくのは、事前のシミュレーションなのか、パラレルなのか、ループなのか。とにかく、「音楽学校に行ってればなぁ」というのが口癖なのは分かりました。生きても死んでも。

「素敵なあなた」。おおう、いくら犬を愛していると言っても肉体関係を持つとか…。
  1. 2010/05/06(木) 18:19:17|
  2. 読書感想文(小説)

FC2Ad