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同人漫画サークル

ヒルトン「チップス先生 さようなら」菊池重三郎 訳

チップス先生さようなら (新潮文庫)チップス先生さようなら (新潮文庫)
(1956/07)
ヒルトン

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【あらすじ】
ブルックフィールド中学校で長年教師をしていたチップス先生は、退職後学校の側に住んでいた。
彼は、この数十年を回想する。
沢山の生徒達との思い出、妻との出会い、そして別れ、様々な記憶が去来する。
チップスは、古い気質の厳格な教師でありつつも、洒落を飛ばすユーモアを持ち合わせ、それは円熟の域に入っていた。

【ネタバレなし感想】
チップス先生が歳を取ってきてからの口癖「あーム」、これがあまりに多いので、脳内で読み飛ばそうとしましたが、うっかり黙読してしまいました。

物語には、当時のイギリス風俗や流行、英国パブリックスクールというものの普遍的な雰囲気が反映されています。
婦人解放の流れや、ストライキ、授業合理化の為いくつかの旧カリキュラムを削除変更しようとする校長の存在などが時代の変化として顕著な例だと思います。
その時既にあった文学や戯曲も引用しています。

時代遅れのチップス先生ですが、皆に愛されていました。
新しくて合理的なものは、尊敬され恐れられてはいましたが、愛されてはいなかったのです。

お茶の時間、紅茶に関する描写が細かかったです。さすが英国人。

チップス先生は、現代的で先進的な女というものが苦手でしたが、そんな女性を好きになります。それが、後の妻なのですが、彼女は、自ら車を運転し、山登りをするような人なのです。
本来嫌いなタイプのはずなのに、そのような異性を好きになってしまう現象というのは現実にもありそうです。

タイトルのセリフ「チップス先生 さようなら」は、かなり早い段階で一度登場しますが、それが最後ではありません。

物語の締めくくり。チップス先生の場合、あれ以上を求めるのは難しいくらい幸福だったと思います。
妻を早くに亡くし、子供も持たなかったわけですが、教師であったことが彼の人生を支えています。

なお、作中沢山出てくるチップス先生のイングリッシュジョークですが、音や綴りの駄洒落になっているものに関しては全く理解できませんでした。
また、(哄笑)と書かれているのを読んで、あ、今のギャグだったんだ…?と気づくことも多く、日本人とは笑いのツボが違うのかなと思いました。
中には、普通に面白い冗談もありましたけど。親子三代に渡って勉強を教えた生徒への、先生らしいユーモラスな台詞など。

チップス先生の生徒は全員男子です。
先生の心の中では、生徒達はいつまでも少年のままなのですね。
  1. 2010/05/01(土) 01:11:32|
  2. 読書感想文(小説)

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