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高橋康也「ヴィクトリア朝のアリスたち ルイス・キャロル写真集」感想

ヴィクトリア朝のアリスたち―ルイス・キャロル写真集ヴィクトリア朝のアリスたち―ルイス・キャロル写真集(新書館)
(2003/11)
高橋 康也

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【概要】
「不思議の国のアリス」の原作者、ルイス・キャロルが撮影した写真を集め解説をつけた本。
メインは少女写真だが、大人のポートレイトやキャロル以外が撮影した写真もある。

不思議の国のアリス
実写映画2010感想
原作(邦訳)感想

【写真集の感想】
解説文によれば、「鏡の国の~」の中の会話で、「歳は7つで止めとけと言ったろう。歳は一人でとるが、ふたりで、うまい助けがあれば、七歳で止まっていられるかも」というのがあるそうです。
というわけで、解説者は、「キャロルは愛する少女を7歳のまま留めるために、写真を撮り、物語を作ったのではないか」と推測します。

写真は白黒で、構図も良いですし、プロっぽいです。
女の子の顔も髪型も服装もいちいちかわいいです。
いい具合に19世紀です。

この時代のイラストや漫画を描きたい、フィクションを作りたいという方には、良い資料になると思います。
また、服飾・デザインに興味ある方にもお勧めです。

背景や家具、小物も時代を感じさせます。

キャロルは、知人の娘や孫娘を撮影することが多かったようです。

ある程度設定と状況を操作し、物語性を持たせている写真もあります。
写真には、キャロルによりタイトルがつけられていることがあるようです。
「どうしてもうまくとけないの」は、虫眼鏡を持った少女の写真です。

ふわふわ金髪のビアトリス・ヘンリーがかわいいです。アリスの挿絵に似ています。
当時のキャロルは「ビアトリス」という詩を残しているとのこと。

クシー・キッチンという黒髪気味の女の子もかわいいです。
「中国娘」に扮した西洋人というのは良いですね。
東洋趣味が反映されています。

ケイティー・ブラインという金髪ウェーブセミロングの女の子は、顔も服もかわいいです。
エプロンドレスに近いワンピースを着ています。
頭身的に7歳くらいでしょうか。

アグネス・フロレンス・プライスは、お人形を持っています。
本人もお人形のようなルックスで、ボーダーソックスと編み上げショートブーツをはいています。

マドレーヌ・キャサリン・パーネルは、おでこを出してヘアバンドのようなリボンのようなものをしています。
三本ラインの入ったワンピースで、袖にレースがついた服を着ています。

アリス・コンスタンス・ウエストマコットちゃんは、すごく幼い顔立ちですが、表情は大人っぽいです。
三つ折っぽい白ソックスと、バンドつきの黒い靴が少女の王道といった感じでかわいいです。

アリス・ジェイン・ドンキンがモデルのものは、合成写真とのことです。
合成だとは分かりませんでした。
「駆け落ち」というタイトルで、二階の窓から縄梯子で下りようとしている、頭巾マントの少女という場面です。
ふわふわスカートが甘ロリータという感じです。

アリス・マードックは、センターパーツストレートヘアの少女です。
腕のプチプチ感や小ささからいって、4~5歳に見えます。

コウツの写真。1857年時点で金網ってあったんですね。
チェックのロングワンピース(半袖)の下に割りとゴツイ編み上げブーツをはいています。

メアリー・ミレー。画家ミレーの娘だそうです。かわいいです。
この本の表紙にもなっています。

エフィー・ミレーも画家ミレーの娘です。メアリーの姉妹なのでしょう。
ショートカットの少女です。服はふわふわワンピースで、タイツは網(縦横直角)状の模様があります。

ローリー嬢は、きついパーマのロングヘアーです。乙女騎士のコスプレで、他のモデルよりは大分大人に近いです。

ベッシー・スラッター。モルモットもベッシーもかわいいです。椅子が立派でデザインがおしゃれです。

アリス・リデル。この子が、不思議の国のアリスの主人公アリスのモデルです。
挿絵とは似てなくて、黒髪オカッパ少女です。とても整った顔の美少女です。
アリスの横顔滅茶苦茶かわいいです。服のフリフリも、ボブカットの髪もとても良いです。

リデル姉妹の写真もあります。中国娘なアリスとロリーナが激かわ。
リデル家の子供集合写真は、構図も服もよく、皆美形です。

成長して胸も大きくなり貫禄の出たロリーナ・リデルは貴婦人というかんじで優雅です。
18歳になったアリス・リデルは、悲しいような不満なようなむすっとしているような表情で写っています。
これはこれで美人です。

19世紀写真史においてのキャロルというコラムがあります。
キャロルは少女写真を撮る前は、解剖学科所蔵の骸骨を撮影したり、別の写真家による「ロンドン塔内の殺害場面」という合成写真を見て感心したりしていたそうです。
キャロルとカメラという組み合わせ、その出会いに、すでに死の臭いが漂っていますね。
冒頭の解説で、著者は、不思議~の帽子屋がキラキラ星のリズムを外して打ち首を宣告されるシーンについて、「拍子を外すは、英語で“murder the time” 、つまり“時間を殺す”」という所に注目しています。

キャロルは日記に、これまで撮った、これから撮る少女の名前リストをつけており、その数107人だそうです。
しかも、誕生日を併記しているあたり、かなり年齢にこだわりを感じさせます。

アリス・エミリー・ドンキンとアリス・ジェイン・ドンキンという二人の少女(かなり成人に近い)を撮影した写真には、「二人のアリス」という題がつけられています。
ジェインはキャロルの弟と結婚したそうです。後に義理の妹になったわけです。

ラトウィジ姉妹。キャロルの母方の叔母二人の写真です。ふりふりリボンとドレスで共に独身ということで、映画版に出てきた「おばさん」を連想しました。

牧師パーカーと娘メイ。アーサー・キューズと娘アグネス。
女の子の父親もきっちり写っている写真です。
どちらの父親も、髭もっさりで、本来どんな顎をしているのか分からないほどです。
その他の写真も、写りこんだ男性は、皆、髭をたくわえています。
そんな中、キャロルは髭がなくてツルツルの顔をしています。

25歳時のキャロルなど、なかなかのイケメンです。
マクドナルド家の少女達と写った写真でも美男子に見えます。
写真写りが良かったり、白黒で細部が白く飛んでいるせいかもしれませんが。
黙っていたら大人の女性にモテそうです。
ただ、髭を生やしてないので、男らしさという魅力が足りないのかもしれません。当時の女性達からすれば。
キャロルは、前髪とサイドを巻き毛にしており、服装もスマートなので、オシャレには気を使っていたようです。

妖精の料理人たちというタイトルの写真は、妖精がコックとして働いているという設定です。
二人の少女がエプロンドレス的な服装をしています。すこしメイドっぽいです。

またコラムが入ります。
不自然に足を投げ出した少女の写真は、エロティックにも見えるし、死体のようにも見えるということで、エロスとタナトスが重なったものだととしています。

キャロルは、本当は少女の裸体を美しいと思い、撮りたかったようです。そして、実際に撮ってました。
親の許可なしに子供の裸を撮るのはまずいとは思っていたようです。

不思議の~でシロウサギの家で体が大きくなってつかえたアリスが、子宮の狭さに抵抗する胎児に見える というようなことが書いてあるのですが、それはまったく考えてもみませんでした。言われてみれば、という感じです。これも、死と再生をイメージさせますね。

ヴィクトリア朝時代は、「脚」が性的にタブー視され、テーブルの脚まで布で覆われたというのは、ネタじゃなくて実話なんでしょうか。
成人女性の裸体は完全にアウトですが、少女ならギリセーフ、で、別にロリコンじゃない人も少女写真を撮ったりしたようです。
抑圧が新しい芸術を生む例だと思います。

乞食ルックのアリス・リデルも可愛いです。前髪パッツンオンザ眉毛です。
乞食娘が当時、写真界の人気モチーフだったそうです。なにゆえ…。

モード・コンスタント・マルベリーの肖像は、上半身裸で、7歳の割には左胸が大きく見えるという写真です。
キャロルは、別につるぺた至上主義ではなかったのでしょうか。これが、上記で、エロティックにも死体にも見えると言われていたものです。間をとって、人形っぽくもあります。

オスカー・レインダーという人の撮った少女写真が載っています。
絵画的な全裸少女です。

作者不詳の少女ポストカード写真三枚がえろかわすぎるんですけど。ちょっと百合っぽいし。
ポーズがいやらしいです。が、本人達よくわかってないのか笑顔です。

キャロルじゃない人が撮った大人のアリス・リデル写真があります。
顔は、クリムトの絵に登場するようなしっかりした輪郭で、わずかに子供の頃の面影があります。
美人ですが、個人的には、7歳の時の方が好みです。

この写真集には、アリス・リデルじゃないアリスも沢山いました。
この当時は、アリスっていう名前の女の子が多かったんですかね。
それとも、キャロルがこだわりを持って、アリスの名を持つ女の子を選んで撮影していたのでしょうか。

クローシェイにより撮影された、リアル乞食の少女写真も載ってます。
これは、やらせや作りではなく、本物だそうです。

少女売春婦の全裸写真は、グロテスクにすら感じられるんですけど、これは一体…。

結論…女の子は服を着ていた方が萌える!

テーマ:写真 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2010/04/24(土) 15:04:59|
  2. 雑記

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