野良箱

同人漫画サークル

松本清張「分離の時間」

分離の時間 (新潮文庫 ま 1-30)分離の時間 (新潮文庫 ま 1-30)
(1974/06)
松本 清張

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【あらすじ】
タクシー運転手による乗車拒否に度々腹を立てている土井俊六は、タクシーのナンバーをゴロあわせで覚えることにしていた。
ある日、俊六の乗ったタクシーの運転手が、客の紳士に男色の誘いを受けて困ったという話を聞く。
そのエピソードはすぐに忘れたが、後日、ホテルの一室で政治家が殺されたと報道される。
政治的暗殺ではなく女性問題のスキャンダルに発展する可能性もあったが、その線は薄いようだった。
俊六は、殺された政治家の行動範囲と見た目が、以前聞いた男色紳士と似ているのではないか?と気づき、覚えていたゴロでタクシー運転手に問い合わせる。
表題作他一本収録。

【途中まで、ネタバレなし感想】
探偵でも警察でもない一般社会人が、ひょんなことから世間を騒がす事件に関わっていく話です。

タクシー運転手から男色未遂の話を聞いた主人公の俊六は、男女の話ならいいけど、男同士ってちょっとなぁ…嫌悪が伴うわぁ…みたいに思います。
ホモフォビア(同性愛嫌悪)の傾向がある俊六ですが、その後、同性愛に関する書物を読んだり、そういった人たちの心理を勉強したりします。事件に関わるからです。
俊六が友達の週刊誌記者(男)に会った時に、「山岸は、伸びた髪を掻き上げ、脂汗の滲んだ赤ら顔を向けた。笑うと、歯並びの悪い口元が可愛く見える。」っていう文章が出たのですが、え?これ俊六の主観? ホモフォビアの人は、実はホモの気があるからこそ嫌悪するっていうけど、俊六も本当はそういう人なの?と思いました。これは、三人称小説なので、それらの描写は、単なる外見説明なのかもしれませんが。

もう一本の小説は、社会派かと思いきや…。というやつでした。
交通事故で子供を失った父親が、その怒りの矛先を加害者運転手ではなく、スピードを売り物にする自動車会社にも向け、「80km/h以上出なくさせろ」「3年間車の製造を中止させろ」という持論を展開するというストーリーです。
昨今の自動車リコール問題にも通じるテーマです。
さすがにこの父親の意見は極端ですが、個人的にはスピードを出して走るのが苦手なので、全体的にスピードダウンしてほしいとは思います。周りが速いとゆっくり走れないので。

【以下、ネタバレあり感想】

元ボーイのネクタイ屋社長とパトロン的な石油会社社長と殺された政治家と政治家運転手がゲイという設定でしたっけ。
うち何人かは、元々異性愛者だったんだけど、なんらかのきっかけでホモに目覚めたということでした。そのきっかけが気になります。

女と遊べると誘う怪しげなタクシー運転手が名古屋(?)に行ったはずの塚本運転手だったのは、意外で面白かったです。
また、記者の山岸がそれを全て見抜き、自分が殺されようとしていることも分かった上であらかじめ警察に連絡していたのは、お見事でした。

最初に政治家が男色趣味で、ホモの相手に殺されたと強く示唆されていたことで、逆に真相は違うんだろうと思って読んでました。
実際、政治家が男色なのは本当みたいですが、カップリングが違っていたのですね。
政治家×ネクタイ社長かと思いきや本当は、石油×ネクタイ社長で、塚本運転手×ネクタイ社長でもあったようです。
と、ネクタイ社長高橋が受け(ネコ・女役)だと思っているわけですが、実は総攻め(タチ・男役)なのかもしれません。

もう一本「速力の告発」は、変わった筋の小説でした。
わざと車を故障させて渋滞を起こし、アイスを配ってビラまき活動をするという作戦ですが、あまり続くと車を故障させているのがメンバーだとばれそうなので、リアルに故障した車のところにもアイス売りに行けばいいのにと思いました。
そのアイスに毒を入れて、個人的恨みを晴らすべく殺人したキャラがいました。
かなり特殊な事態における殺人事件です。
  1. 2010/04/18(日) 23:04:02|
  2. 読書感想文(小説)

コメント

<span style="background-color:#FFFF00;">清張</span>さんの作品では時々ありますね、普通の小説だと思って最後まで読んだら実はミステリーだったという(笑)長めの長編『渦』とかもそんな感じだったですね。
  1. 2012/03/18(日) 00:41:15 |
  2. URL |
  3. 名前はまだない #-
  4. [ 編集]

清張作品には、そういうことがあるんですね。存じませんでした。他の作品も読んでみたいです。現代的かつ一風変わっていて面白かったです。
  1. 2012/03/19(月) 11:14:35 |
  2. URL |
  3. 舵木 #-
  4. [ 編集]

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