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永井俊哉「ファリック・マザー幻想」 感想

ファリック・マザー幻想―学校では決して教えない永井俊哉の“性の哲学”ファリック・マザー幻想―学校では決して教えない永井俊哉の“性の哲学”
(2008/12)
永井 俊哉

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上の画像の下3/4くらいの灰色の部分は帯です。

【概要】
性についてのお題で書かれたWEBコラムを書籍化したもの。
性愛について、生物学、精神分析学、心理学、遺伝子学、民俗学、文化人類学、宗教学、などの角度から書かれている。

【感想】
トップバッターの記事が「腐女子はなぜやおいにはまるのか」でした。
主にフロイト的な観点から書かれていました。
男性がこういうものを書くと、「女性は当然、受け(女役)に自己投影しているだろう」と決め付けがちだと思うんですが、「攻め」の方にも女性的性格を見出しているのは鋭いかと。
死への恐怖がエロスを高めるってほんとかよ、胎内回帰願望がエロスに繋がってるってマジで?と疑惑感アリアリでしたが、その後を読んでいったら、ちょっとは理に適っているのかものな、と思えてきました。

一夫一婦制はキリスト教の影響が強いのですか。
この本には、一夫多妻制や不倫状態における、嫉妬や独占欲については書かれていませんでした。
前妻と後妻が仲良しな赤塚不二夫みたいな例って珍しそうです。

なぜオスとメスがいるのか、有性生殖が必要なのか、ということが書かれています。
「そりゃあ、無性生殖より優れてるからじゃん?」と思っていましたが、一概にそうも言い切れないようで。
コストパフォーマンス的には断然無性生殖の方が有利なようです。さらに従来の「有性生殖の方が環境に適応した進化ができるから」というのも実際には、無性生殖による突然変異の方が効果的だというのです。
その後出てきた新説というのが、「鏡の国のアリス」の登場人物の名前を冠しています。またアリスか!さまざまな分野に影響を及ぼしていますね。「鏡の~」は未読なのでそのうち。

神聖娼婦なんてのがいたんですね。
バビロニアの女は、一生に一度神殿に行って知らない男と交わらなければいけない。その時男は女の膝元に銀貨を投げ、それは神聖なものとされた。という。
巫女やそういった娼婦などが、神との媒介者であると同時に、性交渉があの世とこの世の架け橋、ですか。そういう発想はまるでなかったです。
生まれてきた時と逆をたどればあの世、だから胎内回帰というわけです。
交換メディアとしての娼婦。
昔は女と女、もしくは、女と女性器に似た貝殻を物物交換していたようで、貨幣の発祥もそれだったりするんでしょうか。

大勢の男女が交わる例のアレですが、昔は宗教的な行事だったようです。
今でも、それを売りにしてる新興宗教もありますしね。
王様ゲームと同じで天を運に任せているというのが、良いみたいです。
通常そういった形で子供が生まれると、誰の子か分からないので責任を持って育てることが困難になるんですけど、宗教的らんこーで生まれた子は神の子として、村全体で育てる風習ができたのだと言います。
著者は、「キリストは宗教的な大人数わっしょいで生まれた」説を提示しています。
なるほど、これなら神の子です。ただ、ガチのキリスト教徒やマリア信仰者に言ったらぶっ飛ばされそうです。

混浴と茶室は、この世のしがらみや身分、財産、仕事、家族の持ち込まれないあの世である、というのはこれまた初めて聞いた考えです。
茶室があの世体験バーチャル空間だったとは…。これまたガチで茶道やってる人からしたらどうなんでしょうか。茶道にも似たような教えがあったりするんでしょうか。

死の危機が迫ると妊娠率が上がるのですか。統計的に真実なのだとしたら、それは種の保存本能なんでしょうね。
夫婦間の合法的な交渉より、GOカン!や不倫など倫理や法律を破った時の方が妊娠率が高いと書かれていました。
死に近い非日常はエロティシズムを高める、だから、性はタブーにしてあり、それを破ることが非日常を作る作用を持つと。
この本で夫婦の性愛は4年で冷める説が出てるんですけど、どんなに好きだった人でも一緒に暮らすと日常になっちゃって刺激がなくなるからって事ですかね。

メスはオスをどういう基準で選んでいるか。これは一大関心事ですよね。
自然界では、オスがメスを選ぶよりも、メスがオスを選ぶ方が圧倒的に多いのですが、父権的宗教の人には不評な事実みたいです。

「オタクはなぜ萌えるのか」という項目で、オタクはいい年してアニメの美少女(もしくは幼女)に萌える男であり、未成熟な存在に萌えるオタク自体、未熟で幼児退行した存在だ、とか書いてました。
ほとんどロリコン扱いです。じゃあ熟女萌えやお姉さん萌えはどうなるんだよ、と思いましたが、それこそ、子供になって甘えたい願望な気がしてきました。
「おたく」という言葉の起源、中森明夫の昔の文章が、身も蓋もなさすぎて面白かったです。引用の引用になりますが
【そいでまぁきゃつらも男なんだから、思春期ともなればスケベ心の一つも出てくるだろう。けどあのスタイルでしょ、あの喋りでしょ、あのセーカクでしょ、女なんか出来るわけないんだよね。それに『おたく』ってさぁ、もう決定的に男性的能力が欠如してんのよね。】
萌えオタは、二次元の、そして大人ではなく少女を性欲の対象としてるという時点で、二重に生殖から遠ざけられています。しかし、完全に性欲を失っていないお陰で、来るべき時に再出発できるから、オタクのバーチャルな萌えは無駄ではない、そうです。それは生物的な意味でですかね。
最近は、イケメンリア充オタクもいますから、また定義が変わってきそうです。

変態が許容されるようになってきた、という話題もあります。どうやら、異常性愛そのものは治療の対象じゃないけれど、本人が苦痛を感じたら病院に来てねって扱いみたいです。
性的倒錯は、どれも直接生殖に結びつかない性欲みたいです。これもフロイト流に幼児期の発達段階と対応させて書かれてました。
成人の性的倒錯に、幼児性と発達障害を見出したと言うのです。
もしそれが本当なら、「この子を将来こういうタイプの変態にしたいわー」って調節することができたりするんでしょうか。そんなことする母親がいるとは思えませんが。

抑圧、去勢、ファルスって言葉が何度も出てきます。
ファルス=男性器だと思ってたんですけど、微妙に違うっぽいです。男の子が母に男性シンボルがないことにショックを受けるも、「いつか生えてくるに違いない」と思ってて、やがて自分がそれ自体になろうとして、でもやっぱりない幻想の存在、ならしいです。なんですと。
それって腐女子の言う「やっべー、萌えすぎて、心のtlinkoがおっきしちゃったよー」ってやつじゃあ…。違うか。
それと、男の子が去勢を恐れているってのも本当なんですかね。(男性は大人になっても恐れているっぽい?)
フロイトとかが実際に子供の調査したんでしょうか。あ、でもその時期の子供って喋れないかもだから、思考実験みたいな仮説なのでしょうか。

プラトニック・ラブっていう言葉を誤解していたようです。えろ性愛を伴わないラブだと思ってました。
自身が同性愛者のフィチーノ。彼は、美少年の裸を賛美してたプラトンの本を翻訳して出版したかったのだけど、「異教の同性愛文学を紹介した人」ってことにされると、キリスト教に抵触して火あぶりにされるかもだから、精神的な愛だけ強調した注釈書を書いたそうです。
フーコーという人も、古代ギリシアの愛についてアプローチしたそうですが、彼は同性愛者でエイズで死んだそうです。
哲学者、同性愛者多すぎですよ。なにゆえ。哲学者だから同性愛者になったのか、同性愛者だから哲学者になったのか。
以下、本文中より引用。
【美しい人を愛するのではなく、美しい人のなかにある美しさそのものを愛すること、美のイデアを愛すること、これが本来の意味でのプラトニック・ラブである。】
【プラトニック・ラブに満足する人には、プラトニック・ラブの価値が分からない。プラトニック・ラブに価値を見出さない人こそ、プラトニック・ラブの価値がある。プラトニック・ラブは、実現しないことで実現する愛なのだ。】
えええええー、じゃあどうしたらいいのか…。これもファルスと同じような存在なのでしょうか。

他にも色々書いてありましたが、2時間で読めました。
  1. 2010/04/01(木) 17:41:14|
  2. 読書感想文(小説)

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