野良箱

同人漫画サークル

佐野洋「推理小説実習」感想

推理小説実習 (新潮文庫)推理小説実習 (新潮文庫)
(1983/01)
佐野 洋

商品詳細を見る

1978年に「小説新潮」誌上で連載された企画です。

まず、推理小説をいくつかのパターンに分け、それについて過去の実例を挙げて説明します。
他のミステリ小説家や評論家によるパターン定義も紹介されています。

その後、実際にその型に当てはまる新作ミステリを書き下ろす、というスタイルです。

この本では、「犯人当て」「倒叙」「アリバイ崩し」「心理サスペンス」「事件小説」「楽しい犯罪」という6種類の推理小説が説明され、書かれています。

「犯人当て」は、文字通り、誰が犯人なのか当てる事がメインの小説です。
小説部分は、全員共謀説を臭わせつつ別の展開をしたりして面白かったです。

「倒叙」は、犯罪を起こす所を描いてから、それが暴かれるまでを作品にしたもののようです。
犯人の心理に主眼が置かれています。
「倒叙」の代表的な作品「殺意」は、全十三章のうち、実際殺人が行われるのは第七章だと言うのです。
冒頭で殺人シーン、そこから探偵役の追及、というイメージを抱いていたのですが、ずいぶんと遅いですね。
本書の小説部分でも、犯人の殺人に至る過程を丁寧に描いているため、事件が起こるのは遅めです。

「アリバイ崩し」、これは、犯人は早々に一人に絞られるのだけれど、どうしてもアリバイが崩せない。そこをどう崩すのかが見所のジャンルです。
作者の佐野さんは、この「アリバイ崩し」に偏見を持っているとのことです。
何も嘘のアリバイを言わずとも黙秘すれば逃げ切れるものを、推理小説の登場人物は、自分から偽アリバイを主張するから看破されるのだ、と言います。
そのようなわけで、小説部分も一風変わった終わり方になってます。

「心理サスペンス」の定義はなんだか難しいです。
ここは、佐野さんが拡大解釈して「人物の心理的葛藤を通して事件なり犯罪なりが書かれた推理小説」としています。
小説実例は、「犯人当て」に通じるものがありました。

「事件小説」とは、一般的には実在の事故・事件をモデルにしたり、アレンジしたりしたものとされているようですが、では、どの規模の事件を扱っていれば「事件小説」と呼べるのか、どの程度史実に沿っていれば「事件小説」と呼べるのか、そういった線引きが曖昧であることから、作者の佐野さんは、「探偵や犯人ではなく、事件そのものが主役である小説」と定義しています。
これは、かなり独自の考え方でしょう。
普通なら、「三億円事件」や「JFケネディ暗殺事件」を描いていれば「事件小説」と言えそうです。
作者さんは、自身の定義から、PTAが乗るはずのバスが、別のバスに摩り替わっていたという「事件」をメインに小説化していました。読みやすくて面白かったです。

「楽しい犯罪」というのは、「ピカレスク」「悪漢小説」の呼び代えです。
魅力的な犯罪者が主人公の話で、彼や彼女は、どこまでも悪者というわけでもなく、むしろある人達にとっては正義ですらあるという存在です。

テーマ:ミステリ - ジャンル:小説・文学

  1. 2010/03/01(月) 00:47:03|
  2. 読書感想文(小説)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://norabako8.blog93.fc2.com/tb.php/1101-f2ffbf73
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad