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サキ「サキ短編集」 中村能三・編

サキ短編集 (新潮文庫)サキ短編集 (新潮文庫)
(1958/02)
サキ

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私が持っている本と装丁が違います。うちのは、作者サキの顔写真が新聞風に加工されて表紙になってます。

【あらすじ】
伯母から面白い話が聞けなくて退屈している子供達に、無関係な独身男性がアレな話を聞かせる「話上手」、汽車で女性と相席中、自分の服に二十日鼠が入り込んでいることに気付いた男が、女性の寝ている隙に服を脱いだら女性が目を覚ましてギャーッな話「二十日鼠」、かつて沼地に沈んだ三人と一匹が、今日窓から帰ってると信じている可哀想な伯母と話を合わせろ!「開いた窓」など、ブラックユーモアな短編21本。

【途中までネタバレなし感想】
再読です。
前に読んで面白いと思い覚えていた話は、やっぱりどれも面白かったです。
また、全く記憶になかったけど、今回読んで気に入った話もいくつかありました。

( ;∀;)イイハナシダナーって流れなのに結局BAD ENDとかよくあります。
最後の一・二行で話のオチることが多く、うまくできてます。
もう二回目以降は同じ気持ちで読めないです。

彼の代表作であるらしい「開いた窓」は、わずか6ページ(5ページと数行)という短い作品です。

子供が無邪気に残酷な話と嘘つきの話がいくつか、それと、伯母と狼が良く出てくるようです。

【以下、ネタバレあり感想】

いくつかの話について感想を書きます。

「二十日鼠」
主人公の彼が散々、女性の前で裸である理由を取り繕おうとしたり、いっそ正直に鼠が入っていたと告白したりしつつ、羞恥で混乱しまくってたのに、実はその女性は盲目であったというお話。
面白いですね。彼の色んな葛藤が全部空振りで無駄なんです。女性には、彼が裸でいることが分からなかったのです。見えないから。
主人公が、「この女、俺が切羽詰ってるのを楽しんでるな」とか感じたのも思い過ごしでした。

「平和的玩具」
この話も以前(7年くらい前?)読んで面白いと思った作品です。
平和的に政治の仕組みが学べる楽しい玩具を子供に与えたけれども、血なまぐさい歴史知識に基づいた戦争遊びに早変わりしてしまい、もう手遅れだったという話です。
これはひどいwwと思いつつ笑えます。お勉強も、優しい子どもを育てるのには逆効果に。

「話上手」
伯母の語る「ある女の子が良い子にしてたお陰でみんなから助けてもらえたよ」という話が退屈すぎるという子供に、独身男が「ある女の子が良い子にしていたお陰でメダルを3つもらえた上、王子様のお庭に招待されたけど、狼がやってきて隠れたよ。女の子は『良い子にしていなきゃよかった』と後悔するものの、首から提げたメダルがチリンチリン鳴って狼に見つかり食べられてしまった。後に残ったのは3つのメダルだけだったよ。」というなんの教訓もない話をして、子供達大喜びという作品です。
これまた、ブラックで面白いです。
良い子にしていた褒美であり証拠である所のメダルのせいで食べられてしまい、そのメダルだけが残る、という状況が皮肉です。
「PTAが子供に見せたくないTV番組や漫画の方が、子供に人気現象」と似てます。

「七番目の若鶏」
作り話の名人であるが故に、実際に起こった珍事を人に話しても信じてもらえないという話です。
これは、狼少年に近いですね。
「妻の死すら創作話のネタにするのか」と非難されます。

「開いた窓」
神経衰弱の治療にと姉の紹介で話をしにきた主人公。姪が「伯母は、ちょうど三年前行方不明になった家族と犬が、いつも通り開いた窓から帰ってくると思い込んでいる」というので、伯母の話にあわせていた主人公だが、本当に家族と犬が帰ってきて、幽霊だ!と驚き逃げ帰ってしまった。しかし、姪はつくり話の名人であった。」という話です。
つまり、今日出かけていった家族が普通に帰ってきただけのことであり、行方不明云々は姪のついた嘘だったのです。
騙されて、伯母を若干哀れんでいる主人公が面白いです。伯母は頭がかわいそうだと同情しています。
幽霊を見たということで、彼の神経衰弱は悪化したのでしょうか。それとも、ショックで改善したのでしょうか。
ただの日常もほら話でファンタジックなものになるんですね。

「宵闇」
公園で青年に「今夜は泊まる所もなく金がない」と言われる。
金のない原因については作り話だという疑いがあり、裏づけとしての石鹸を持っていないことを指摘する。が、石鹸の包みを発見したので、青年の言い分を信じ金を貸す。しかし、その石鹸は、別の紳士が落としたものだった。そんな話。
またしても嘘・作り話の類の話です。
一度は疑った人を信用したのにやっぱり嘘だった、というバッドエンドです。
人を信じる美しさを描くのかと思ったら、結局いじわるな展開をしました。

「十三人目」
なんじゃそりゃ!という劇脚本的な作品。
再婚後の子供が総計十三人なのは縁起が悪い、一人減らそうと試行錯誤したら、結局数え間違えで十二人だったからよかったね!という話。
別に良くない…!なんですかこのストーリー。

「家庭」
周りから結婚するように言われている三十四歳の男は、午後のお茶の時に女性に「お砂糖はいくつ?」と聞かれたり「濃すぎるようでしたらお湯を差しましょうか」と質問されるのが大嫌いだった。女性には、悠然とお茶を楽しんで欲しく、細かいことは小姓にでも任せておけばよい、という考えだった。
周囲の年配女性お奨めの交際女性に結婚を申し込みに行く途中、帽子屋の知り合い女性宅に寄った。彼女は、お茶の時間に質問攻めしてくることはなかった。主人公は、その場で帽子屋との結婚を決めた。新婚旅行を終えた後の新居で、妻は「(お茶に)もっとお湯をさしましょうか?」とか聞いてきやがった!そんなお話。
結婚前は、帽子屋として主人公に接していた女性ですが、結婚後は妻として接してきます。
で、結局主人公の嫌いなお茶の時間の質問をしてきたのです。
家族になってしまうと、所帯じみてしまうのでしょうか。
面白いオチでした。

「おせっかい」
三代続く喧嘩をしている二人の男が、同じ木の下敷きになってしまった。そんな中、仲直りし友情が芽生えた二人。部下が助けに来たらまずは相手を助けさせて、一緒に馬を並べて広場に入ろう。みんな驚くぞ。と話す。部下達らしき影が近づいてきたが、その正体は狼の群れだった。おしまい。
なんという救いのない話でしょうか。
二人が仲良くなった時点で悪い予感がしたんですよ。こりゃ狼オチか?と。
こんなことになる前に喧嘩をやめてたらよかったんですけどね。

「ある殺人者の告白」
死刑囚に最期の慰めをする教悔師。死刑囚は、今日に至る事の顛末を話す。訳あって救世軍の死んだ兵士と服を交換したら、それが自分の死体ということにされ、さらにそれを殺したのが自分ということになってしまった。
家族は、人相の変わった自分を本人だと認定してくれず、また、死体の方こそ殺された僕だと言う。さらに救世軍の知能の低い伯母が、僕を甥だと認めた。自分が自分であるということを証明するためのテストをいくつもしくじり、最終的には自分の専門分野と目されているバルカン半島の地理の問題に誤答してしまった。それで、やはり僕を殺した救世軍だと言われ死刑を宣告された。そんな告白の後彼は処刑された。教悔師は、帰って真っ先に地図でバルカン半島の地理を確認した。誰にだってこんなことが降りかからないとも限らないから。 という話です。

死刑囚が助かるとか誤解が解けるとかのハッピーエンドにはなりませんでした。教悔師も、死刑囚への同情とかより先にまず、保身、というかくわばらくわばらな感じだったのが面白かったです。
これは、作り話じゃなかったようですね。

「七つのクリイム壺」
親戚の男性は、皆ウィルフリッドという名前だった。その中の一人「掻っ払い」と呼ばれる男がうちに来るという。
かれは窃盗常習犯だった。銀婚式のお祝いにクリイム壺を7つ貰った夫妻。夫妻が「掻っ払い」の鞄を漁るとクリイム壺が出てきた。やっぱり盗んだな、などと思っていたが、実はそのウイルフリッドは「掻っ払い」ではなく、外交官の方のウイルフリッドだった。そして外交官の鞄にはいっていた壺は、彼自身が持ち込んだものだった。外交官は、誰かが自分の鞄からクリイム壺を盗んだと言い出した。夫妻は真っ蒼になった。妻は夫を退席させると、「実はうちの夫はちゃんとしまってあるものを盗む癖があるんです」と嘘をつく。戻ってきた夫は、話が丸く収まったようで満足している。しかし、その噂は広まり、夫ピイタアの行く先々で、人々は貴重品をしまっておかず持ち歩くのだった。ピイタアにはそれが謎だった。おしまい。

これも、作り話系ですね。危機回避の為のとっさの嘘ですが、後々影響が出てきました。本人の知らない所で。
毎度のことながら黒い話ですが、そこまで深刻じゃなくくすっと笑える程度で好きです。

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

  1. 2011/08/21(日) 13:46:29|
  2. 読書感想文(小説)

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